対馬の仏像盗難事件、返還を拒否する韓国側のあり得ない対応

悪い悪いとウワサの日韓関係だけど、戦後最悪のいまよりちょっとマシだった平成28年（2016年）、外務省が公開した資料「最近の日韓関係」（＊リンク切れ）によると、関係悪化の原因（日韓間の主要な懸案事項）はこれだった。

・竹島をめぐる問題
・慰安婦問題
・朝鮮半島出身の「旧民間人徴用工」をめぐる裁判
・日本産水産物等の輸入規制
・日本海呼称問題
・仏像盗難事件

慰安婦問題・「旧民間人徴用工」をめぐる裁判・日本海呼称問題の３つは、このときから確実に悪化しているけど、今回取り上げたいのは仏像盗難事件だ。

2012年に長崎県対馬市の観音寺から、韓国人窃盗団によって重要文化財の仏像が盗まれた。
仏像の価値をお金にするのもなんだけど、これは数億円に値する。

でも韓国で窃盗団が捕まって仏像は無事回収され、あとは聖書にある「カエサルの物はカエサルに」という言葉のとおり、本来の所有者である観音寺に戻されるべきなのに、とつぜん韓国のお寺（浮石寺）が「その仏像はウチの寺のモノだっ」と言い出す。

盗まれた物が戻ってこないということ自体デタラメなのに、裁判での浮石寺の主張もめちゃくちゃだった。

裁判で浮石寺は500年 – 600年前に倭寇が強奪した仏像だと主張する根拠を求められたが、｢根拠を示す鑑定書は仏像を失ったときに、思い出すのが悲しいので捨てた｣と主張し、根拠は提示できなかった。

対馬仏像盗難事件

根拠を示すことができなかったのに、韓国の裁判所はこの仏像を浮石寺のモノと認めたため、仏像の返還は現実的に不可能となった。
それでいまも日韓の外交問題となっている。

1972年に発効したユネスコ条約によると、盗まれた文化財が他の加盟国に持ち出されたら、持ち込まれた国（この場合は韓国）が返還するようになっている。
でもこの国際常識が通じない。
国際法より、「根拠を示す文書は悲しいから捨てた！」を優先する裁判所があるらしい。

この間、韓国側がしたことは日本の寺や国民の神経を逆なですることばかり。
2013年に浮石寺の僧と韓国の国会議員、市民団体ら6人が観音寺に訪問したけど、観音寺側は誰とも会わなかった。（そりゃそうだ）
これに対し僧侶らは出迎えもないと怒り、「この問題の解決には日韓ともに偏ったナショナリズムにとらわれないことが重要だ｣と記者会見で言う。
いやいやそこは国際法が大事でしょ。

このとき韓国側は浮石寺に関係するマスコット人形（850円）を持ってきたけど、「まずはうちの仏像を背負って一刻も早く持ってきて欲しい」と観音寺はシャットアウト。
そしてこの韓国側の説明に日本中が激怒した。

「韓国は日本に仏教や仏像を伝えました。それなのに日本人は寺を燃やし仏像を奪っていきました。過去の歴史を日本は認める姿勢はあるのかということです。返還して欲しければ略奪ではなく友好的に贈られたことを日本側が証明すべきだ」

物を盗み出して、「これが本当にお前の物か、お前が証明しろ。それができなかったらこれはオレの物だ」なんてリクツが通ったらこの世は世紀末だ。

本尊を盗まれたお寺はそれを取り返そうとしているけど、正直、外務省や日本政府がどこまで本気なのか見えてこない。

中央日報の記事（2018.01.26）

対馬観音寺、外務省に「韓国に保管された仏像の返還要請をしてほしい」

それでも、それでも日本政府なら何とかしてくれる。と信じたいけれど、事態は１ミリも動かないし仏像も異国の地に安置されたまま。
百歩譲って、そのまま置いてくれたらよかったのに、いま浮石寺は仏像の表面を金で装飾しようと考えていることが発覚し、長崎新聞が記事（2020/10/8）で報じた。

対馬仏像盗難問題　韓国寺院が金彩施す意向　被害側「ありのままで返して」

観音寺の前住職は、「長年にわたり地域住民が拝んできた本尊を、ありのままの姿で返してほしい」と主張し、県教委学芸文化課も「現状変更は県の文化財保護条例で制限しており、改金仏事は文化財の価値を毀損（きそん）しかねない。速やかに対馬に戻してほしい」と要求する。

外務省は「盗難被害に遭った日本の文化財が現状のまま早期返還されるよう、引き続き韓国政府に求めていきたい」と言うけど、それは数年前から同じこと。
かといって日本は現状どうすることもできないし、実質的には見守るだけの泣き寝入りだ。
これで韓国側が返還を拒否したまま、観音寺の前住職に万が一のことがあったら日韓関係は暗黒になる。