「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」現象の暴走
ある人物を嫌いになると、その人に関係するものまで憎たらしく見える。
日本には昔からそんなことがあって、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉も生まれた。
最近、福岡でそんなことが起きた。
福岡のある議員が県民を激しく怒らせる言動をした結果、ネット上で、親族が経営する旅館を名指し、「あそこに泊まるな」とボイコット運動が発生したのだ。
議員に対して、自分の行動に責任をとらせるのは当然。しかし、血がつながっているという理由で、直接関係ない人を巻き込んではいけない。
日本で起きる「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」現象はおそらくこの程度だが、隣国の人たちの怒りはすさまじく、「袈裟」レベルでは済まなかった。
韓国で過熱する「魔女(親日)狩り」
韓国史における暗闇と絶望の期間、それが日本による統治(1910年〜45年)だ。
現代の韓国社会では、その時代に日本の支配に協力的だった人たちは「親日」と呼ばれ、「売国奴」として憎悪の対象となっている。
今、女優のハヨンさんが激しい「親日バッシング」を受けている。
理由は、彼女の曽祖父である安商浩(アン・サンホ)が親日団体に所属していたことが明らかになったためだ。
「親日」の子孫で、子どものころから恵まれた環境にいたと分かると、国民の反日感情や不公平感を刺激せざるをえない。
ハヨンさんはもはや「公共の敵」と言っていいほど断罪され、CMは非公開になり、女優生命が絶たれようとしている。

しかし同時に、「魔女(親日)狩り」があまりにも激しくなっているため、「これはヤバいぞ」と警鐘を鳴らす人もいる。
たとえば、中央日報がこんなコラムを掲載した(2026.08.19)。
親日への断罪、行き過ぎではないか=韓国
中央日報は、親日派の子孫が何の追及も受けず、「豊かに暮らしている現実は、韓国人の怒りを大いにかき立てる」と、現在の親日バッシングに一定の理解を示す。
(たぶんこう書かないと、読者は記事を読んでくれない。)
安商浩(アン・サンホ)は親日団体である「大正親睦会」に所属していたため、現在では「親日行為者」と認定されている。
しかし、この見方に疑問を投げかける人もいる。
というのも、ある研究者の見方では、この団体は、現在でいえば韓米友好協会やライオンズクラブに似た団体だからだ。
この団体のメンバーだったからといって、安商浩を「民族の裏切り者」として非難するのは行き過ぎている、と考える人もいる。
それに、ハヨンさんのルーツ(本貫)をたどると「順興安氏」に行きつくという。
韓国で英雄視されている独立運動家の「安重根(アン・ジュングン)」も「順興安氏」の出身だから、血筋を拡大して考えるとハヨンさんと同じ一族となる。
日本の俳優への「飛び火」
日本人から見れば、「ではないか」ではなく、今の韓国社会で巻き起こっている親日への断罪は、「明らかに行き過ぎ」と感じる人がほとんどだろう。
しかし、これはあくまでも韓国内の問題だ…と、そう思っていたら、この騒動が日本人にも飛び火した。
中央日報がそれを伝えている(2026.08.19)。
「よりによって光復節直後に」…韓国バンドのMVに「日帝強占期の日本首相のひ孫」出演で物議
韓国のあるバンドが公開したミュージックビデオの中に、日本の俳優・安藤サクラさんが出演したことが分かり、韓国では一部から批判の声が上がっているという。
1945年8月15日、日本が連合国に降伏し、自動的に日本の朝鮮統治も終了した。
そのため、現在の韓国では「光復節(解放記念日)」として祝日となり、記念式典がおこなわれる。
個人的にはまったく知らなかったが、安藤サクラさんの曽祖父はあの犬養毅だった。
1932年(昭和7年)、東京でクーデター事件が起きた際、首相だった犬養毅は日本軍の青年将校らに暗殺された。
「話せばわかる」と言ったが、殺気立っていた軍人には通用しなかった。
安藤サクラさんは、この「五・一五事件」の犠牲者のひ孫にあたる。
犬養毅は、日本が朝鮮を統治をしていた時代の首相でもある。
そのことから、韓国のあるネットユーザーは、「最近物議を醸した女優が親日派の子孫だとすれば、安藤サクラは戦争犯罪者の子孫だ」と主張し、このMVを非難した。
ネット上の反応を見ると、「賛否両論+アルファ」に分かれていた。
「韓国歌手のMVでこんな奴の子孫を見なければならないのか?」と怒る人もいれば、「ちょっとは寛容さを持ちなさい。曽祖父の罪まで背負わされるとか、ひどすぎるよ」と親日断罪の動きを批判する人もいた。
ほかにも、「どうせなら壬辰倭乱(16世紀の朝鮮出兵)までさかのぼって、親日派を根絶やしにして燃やしちゃいましょう」と皮肉る人もいた。
歴史歪曲によるレッテル貼りの理不尽さ
しかし、犬養毅を「戦争犯罪人」とする主張は完全な間違いだ。
そもそも、彼は太平洋戦争がはじまる約10年前に殺害されていて、戦争犯罪を犯した事実はないし、戦犯として裁かれたこともない。
軍人に暗殺された彼は、軍国主義の犠牲者だったともいえる。
歴史をねじ曲げて、血縁関係を理由に「戦犯のひ孫」というレッテルを貼るのは理不尽この上ない。
今の韓国で起きている「親日断罪」は、明らかに行き過ぎている。
現在の常識や感覚で過去を裁いたらキリがない。
韓国では、坊主憎けりゃ、一体どこまで憎くなるのか。袈裟をつくった職人の孫まで嫌いになるのか、憎悪の範囲がどこまで広がるかが分からない。
そうは言っても、韓国のことは韓国にまかせるしかない。
大手メディアも「火消し」に入ったから、そろそろこの断罪騒動も収束に向かうと思われる。
これ以上、日本人が巻き込まれないことを願う。

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