日韓のあいだで最大の外交問題となっていた慰安婦問題は、2015年に両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」で合意して終わった、はずだった。
しかし、韓国の市民団体や海外の韓国系の人たちはそれを認めず、慰安婦像(韓国では“平和の少女像”)を外国に立てて日本との摩擦が発生し、現地の人たちがそれで“火傷”を負うことがある。
ヨーロッパでは、2017年にドイツのヴィーゼント市で初めて像が立てられた。その前年、ドイツのフライブルク市が韓国側の働きかけを受け、像を設置する予定だったが、日本の話を聞いてそれをキャンセルした。
この騒動の後、フライブルク市長は像を韓国からの「贈り物」と考えていたが、じつは日本に外交的圧力をかけることが目的だったと分かり、「悪用された」と語った(慰安婦像)。
なぜ韓国の市民団体は海外で慰安婦像を立ようとするのか?
韓国メディアの報道によると、その理由は日本軍の「蛮行」を知らせるためであり、日本に恥をかかせるためだという。
ドイツで3体目! 韓国団体が海外で“少女像”を建てたがる理由
フライブルク市はギリギリセーフだったが、ベルリン市ミッテ区はそうはいかず、韓国の市民団体と現地の韓国系住民が主導し、2020年に慰安婦像が設置された。像に加えて、台座には「日本軍は少女や女性を強制連行して性奴隷にした」と事実に反する文が刻まれていたため、日本は外相や首相がドイツ側に抗議した。
ミッテ区はあの像が持つ意味や影響を知って「不適切だ」と判断し、設置許可を取り消し、韓国系団体に像の撤去を命じた。
団体側は納得できず、裁判に訴えてミッテ区と争ったが、最終的には敗訴。区の撤去命令を無視したため、先日(2025年10月17日)、区が像を強制撤去した。団体側は約53万円の罰金の支払いを命じられたが、それも無視している。
一度認めたことを「なかった」ことにするのはとても難しい。像の設置は1年だけという約束だったが、なんだかんだで延長され、「永久設置」される動きまで出ていた。
ちなみに、慰安婦問題に対する見方は、韓国内で完全に一致しているわけではない。ある韓国の市民団体はドイツに行き、こう訴えた。
「慰安婦問題の噓をまき散らすことは何の利益も生み出さず、対立と憎悪をあおるだけだということを韓国の研究者としてドイツの人たちに訴え、撤去を強く求めていきたい」
こういう日本政府に近い立場は韓国では例外的だ。
“反日”に反対する韓国の市民団体、慰安婦像の撤去求めドイツへ
知人のドイツ人は日本が好きで、静岡の大学に留学して日本語を学び、今は母国に戻って生活している。日本の情報は日常的にチェックしているという親日ドイツ人に、この騒動について意見を聞いてみた。
すると、彼はベルリンに慰安婦像があったことも、それをめぐって日本・韓国・ドイツで騒ぎが起きていたことも知らなかった。
結論から言うと、一般のドイツ人の99・9%以上はこの像の存在を知らないし、像が設置されても日本に対する印象は変わらない。像のビフォー・アフターで、ドイツ社会に与えた影響はゼロに等しいから、日本人が心配するほどのことはない。
彼は、日韓のあいだで慰安婦問題があることは、前々から表面的には知っていた。日本軍が戦時中、朝鮮人女性を慰安婦にしたという話は聞いただけで、具体的な内容については分からない。
「日本軍は少女や女性を強制連行して性奴隷にした」という説明について、日本政府は根拠がなく歴史的事実に反すると削除を求めたが、彼は否定も肯定もしないで「中立」な立場だと言う。ただ、反論を聞かなかったら、自分は慰安婦問題に無知だから、碑文の内容をそのまま信じていたし、きっとほかのドイツ人もそうだと言う。
ドイツでは一般的に、戦前・戦中については「日本=悪・加害者、韓国=被害者」という先入観があるから、そのイメージに合ったものは受け入れられやすいらしい。
彼ははじめ、ドイツで慰安婦像が立てられた理由が分からなかったが、団体の主張を聞いて納得した。これは、戦争で心に傷を負った女性の悲しみを象徴する、芸術的な造形物であるという説明を聞けば、ドイツ社会では「表現の自由」や「負の歴史と向き合うこと」が尊重されているから、像の設置はドイツが大切にされる価値観に合っているという。
(ミッテ区もそんな説明を聞いて像を認めたが、後から詳しい話を聞いて撤去を命じたのだろう。フライブルク市長のように「悪用された」と思ったかもしれない。)
しかし、慰安婦問題はドイツとは直接関係ないから、像は期間限定にしたほうがいい。団体が像を設置したことは良いが、期限を無視したのはいけない。
ドイツのルールよりも、自分たちの主張を優先する態度は絶対に受け入れられないから、像を撤去するのは当然だというのが彼の意見だ。
その見方はほかの問題にも当てはまる。
いまドイツではイスラム教徒がパレスチナを支持し、イスラエルを非難するデモを各地でおこなっている。彼はデモの内容にはあまり共感できないが、「表現の自由」の観点から、それをする権利は守られなければならないと考えている。しかし、イスラエルへの憎悪をあおるヘイト発言は嫌悪している。
慰安婦問題もパレスチナ問題も彼にとっては同じで、ドイツ人が長い歴史で確立した自由や権利を利用しながら、それを破るような振る舞いをする人間は認められない。

コメント
コメント一覧 (2件)
Factは次の通りです。
1.太平洋戦争当時、日本軍が従軍慰安婦制度を設けた。
2.朝鮮人、あるいは日本の民間人が慰安婦を募って慰安所に入所させた。
3.慰安婦たちは決まったお金を受け取り、性サービスを提供した。
4.慰安婦の構成は日本人が最も多く、続いて朝鮮人、台湾人など多数の国の女性がいた。
5.慰安婦の年齢は17歳(満16歳)以上だった。
したがって、日本軍が「強制的に」あるいは「拉致して」少女たちを連れて「性奴隷」にしたということは完全に嘘です。日本はそのような制度を作って運営したという「道徳的責任」はあるでしょうが、「犯罪」を犯してはいません。
>「道徳的責任」はあるでしょうが、「犯罪」を犯してはいません。
そのとおりです。日本は国際法に違反することはしていませんが、統治下でおこなわれたので道徳的な責任を認め首相が謝罪をしました。しかし、韓国でその見方は少数でしょうね。