今の日韓関係は「同床異夢」 ゴールは同じでも道(考え方)が違う

同じ床で隣りあって眠っているのに、まったく別の夢を見ている——。

はるか昔の中国人は、そんな2人の状態を「同床異夢」と表現した。共通する思いや目的があって同じ立場にいるけれど、別の意見をもっていることを現代でもこう呼ぶ。
似たような言葉に「呉越同舟」がある。敵対していた呉と越の人々がたまたま同じ船に乗り合わせ、にらみ合っていたとしても、嵐が来て船がひっくり返りそうになれば協力してピンチを乗り越えるだろう、という意味だ。
「同床異夢」は同じ仲間で、「呉越同舟」は敵どうしだから前提が違う。

韓国の全国紙・中央日報に、「今の日本と韓国は同床異夢にあるんだな」ということを実感させられる記事が掲載されていた(10/15)。

鄭夢準氏「日本はコップの半分満たす努力しなければ」…岸田前首相「日韓対話重要」

先日、東京で日韓関係の未来について考えるイベントが開かれた。
それに出席した韓国の外交専門家(たぶん)はスピーチで、自分は日本語を習ったことがあり、日本は縁が深い国だと言ったうえで次のような話をする。

韓日を「近くて遠い隣国」ではなく、近くて近い隣国にならなければならない。そのためには、過去の歴史問題を解決しないといけない。
戦時中、日本は20万人を慰安婦にし、200万人を強制徴用し、20万人が強制徴兵されたという。
このうち強制徴用問題について、まだコップは半分しか満たされていないという事実をわれわれは認めなければならない。韓日関係を本当の意味で発展させるのなら、日本が誠意をもって残りの半分を満たそうとする努力が必要だ。
それだけでなく、日本が歴史を正しく認識し、被害者の傷を癒すことも重要だ。日本が被害者に対し、心からの謝罪と実質的な補償案を速やかに用意することを願っている。

「日本は20万人を慰安婦に〜」の箇所は、具体的な根拠は示されなかったから、本当かどうかは分からない。「〜しなければならない。そのためには〜」は典型的な韓国構文だ。
「コップに水は半分しかない」というのは間接的に日本を非難している。元徴用工問題で韓国側が解決案を考え、そのための費用も出したのに日本は何もしていない(実際は違うけれど)。早く日本もお金を出してコップを満たす(問題を解決する)べきだ、と彼は主張している。

一方、岸田前首相も日韓関係の重要性を強調したが、内容はまったく違った。

2023年、自分が首相だったとき、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が来日した。銀座のレストランに招くと、尹氏をオムライスを食べて「忘れることのできない味」と言った。こうした夕食会を通じて日韓の信頼関係を築いた。
日韓でトップが変わっても、両国で首脳のシャトル外交が続き、両国関係は良好な状態でいることをとても喜ばしく思う。
日韓協力は必然で、良い関係を保つためには対話がとても重要だ。意見が異なることがあっても、これからも両国間の対話が継続されることを望む。

「日本はコップの半分満たす努力しなければいけない」という韓国側の意見に対し、岸田氏は「オムライス外交」を持ち出した。斜め上の話をし、韓国側の要求に応えなかった。
日本の立場からしたら、韓国側が国家間の合意と国際法を破ったことで、元徴用工問題が発生したのだから、韓国側が責任をもって解決しないといけない、ということになる。
自分でコップをひっくり返してこぼした水は、自分で元の状態に戻す必要がある。つまり、日本はこの件について金を出すことはできない。「意見が異なることがあっても」というのは、この事情を指しているはず。

 

日本も韓国も両国関係がとても重要であることは分かっているし、良好な関係が続くことも願っている。だから、「呉越同舟」ではない。
しかし、そのための方法はまったく違って、韓国側は譲歩を求めるが、日本はそれを拒否している。つまり、「同床異夢」だ。
同じ目的を持って同じ会場にいるのに、別の話をしている——。
「コップ半分」と「オムライス外交」というワードに、まったく噛み合わない今の日韓関係が表れている。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 当時の時代状況であまり無理のないことだとしても、日本が朝鮮人を差別し、徴兵で戦場で死なせたことに対して謝罪することは必要ですし、日韓両国の善隣友好関係のためにも望ましいと思います。しかし、すでに日本は何度もそのことについて謝罪をしており、金銭的にも補償をしていますので、今も引き続き韓国側が日本の謝罪を求めるのは行き過ぎです。
    現在すべきことは、韓国が日本の謝罪を求めるのではなく、韓日近代史を正しく学び直すことです。
    上記の本文の中で韓国が主張した「戦時中、日本は20万人を慰安婦にし、200万人を強制徴用し、20万人が強制徴兵されたという。」は嘘です。「慰安婦20万人」は完全な偽りであり、「強制徴用」や「強制徴兵」も部分的に誤りです。当時、多くの若い朝鮮人が日本軍に志願するためには、莫大な競争率を突破しなければならず、朝鮮人まで徴兵制を拡大実施したのは戦況が急激に不利になった1944年の春からでした。それ以前は朝鮮人が日本軍になりたくてもなることができませんでした。
    韓国は歴史、特に韓日近代史は新たに学ばなければなりません。 そうしてこそ日本を正しく理解するようになり、両国の間に誤解は消えるでしょう。

  • >「戦時中、日本は20万人を慰安婦にし、200万人を強制徴用し、20万人が強制徴兵されたという。

    韓国を代表する人は国民感情や常識にもとづいた発言をしないと、帰国してから袋だたきにされます。本当はどう考えていたか分かりませんが、こう言うしかなかったと思います。日本も相手の立場を考えてそれを否定も肯定もしないで、別の話をするしかありません。

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