【歴史対立】日韓のハーフが韓国の学校で経験したコト

 

日本の実業家で有名なインフルエンサーの女性が先月、日本統治時代に独立運動家を収容していたソウルの「西大門刑務所歴史館」を訪れ、動画で「日本人を嫌いになりそう」「日本人は残酷だな」と発言した。
韓国では「よくぞ日帝の蛮行を明らかにしてくれた!」と拍手された一方、日本ではぶっ叩かれた。日韓は歴史認識の違いからよく対立するから、これが普通の反応で、近代史に触れて、どちらからも拍手されるなんてミラクルはまず起こらない。

本人はその後、歴史に無知だったことを反省して謝罪し、騒動の原因となった動画を削除する。が、それだけでは済まなかったらしく、きょうネットニュースで、この女性が東京で経営している店を閉めることにしたという記事を見た。
しかし、得たものもある。
韓国最大の全国紙・朝鮮日報に「韓国・西大門刑務所で日本の蛮行を批判した日本人女優、自国で非難殺到…結局動画が非公開に」(2024/11/02)と記事にされて、韓国ではかなりのファンや支持者を獲得しただろうから、あの発言が成功か失敗だったかはまだ分からない。

 

日本人や韓国人の大人なら、どちらかを捨てる覚悟さえあれば、日韓の歴史について立場をハッキリさせることができる。
しかし、日本人と韓国人のハーフの人だと、そう単純にはいかない。
以前、ネットでそんなハーフの人が体験談を書き込んでいるのを見つけ、いつか記事で書こうと思ってメモにとっておいたので、今回はそれを紹介しようと思う。
個人的にこうした人の視点はなかったから、印象的だった。

 

西大門刑務所歴史館で見た柳寛順(ユ・グァンスン)

 

まずは、現在20代の女性Aさんのケース。
彼女は日本で生まれた後、小学生のころに父親の仕事の関係で韓国へ引っ越し、地元の学校に通っていた。韓国人の友だちとは仲良く過ごしていたし、学校生活も楽しく過ごすことができた。ただし、歴史の授業を除けば。
教科書を開くと、近代史では日本軍の兵士が朝鮮人に銃を向けていて、処刑の場面と思われる写真があったから、顔から血の気が引いた。
クラス全体が「先祖を苦しめた日本は許さない」という雰囲気に包まれたため、彼女は周囲の目が気になって顔を上げることができなくなった。
恐怖と申し訳ない気持ちから、ずっと下を向いたまま、「早く終わってください。早く終わってください」と願いながら授業を受けていたという。

韓国で最も有名な独立運動家の一人に「柳寛順」(ユ・グァンスン)がいる。
彼女は1919年の「三・一独立運動」に参加したことで西大門刑務所に入れられ、日本の支配に最後まで抵抗し、そこで残酷な拷問を受けて殺害された。
現在の韓国では一般的にそう信じられていて、柳寛順は「韓国のジャンヌ・ダルク」として国民的なヒロインとされている。
しかし、「経歴内容や刑務所の待遇、当時の学友が見た実際の遺体状態が韓国で知られていた内容と大きく異なり、柳に関する主流報道に誇張が多い」という研究結果もあることは理解しておかなくてはいけない(柳寛順)。
ある日、Aさんの小学校が歴史学習として、西大門刑務所に行くことになった。
彼女は胃が痛くなるほどつらい思いになって、当日は休もうかと思ったが、そんなことをしたら友だちに嫌われると思って、がんばって参加することにした。
当時は苦しいことの連続で、なかでも柳寛順の説明がいちばんつらかった。
ただ、繰り返しになるけど、全体的にみれば学校生活は楽しく過ごすことができたという。

 

次は、韓国で生まれ育った女性Bさんの体験。
彼女は母が日本人で父が韓国人のハーフで、韓国の小学校と中学校に通っていた。学校ではまわりの友だちがよく日本の悪口を言っていたから、彼女も本心ではなかったが、「日本が嫌い。韓国が好き」と言っていた。
韓国人でも、日本の良いところを言ったり褒めたりすると、「アンタ、日本のこと好きなんだ」と冷たい目で見られるから、半分日本人の彼女にとってそれは絶対的なタブー。
クラスでいじめられたり孤立したりしないように、彼女は学校ではむしろ積極的に日本の悪口を言っていた。韓国人が日本を嫌う気持ちは理解できるから、それはそれほどつらいことではなかった。
しかし、あるとき母親に「友だちに嫌われたくないから、学校では日本の悪口を言っている」と話した時、とても悲しそうな目になったのを見て「しまった」と思い、それを思い出すと今でも心が痛いという。

 

以上の話はいずれも今から10年以上前のことで、現在の韓国の学校の雰囲気は知らない。
今年の3月1日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がソウルにある柳寛順記念館で演説を行い、日本を「価値を共有し、共同の利益を追求し協力するパートナー」と表現し、日韓関係については「痛ましい過去を乗り越えて『新しい世界』に向かって共に進んでいる」と述べた。
それを心から願っているのは、きっと日韓ハーフの人たちだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。