慰安婦問題や徴用工問題がよく取り上げられていて、あんまり目立たないけれど、2012年に韓国人窃盗団が対馬のお寺から重要文化財の仏像を盗み出してから、いまだに返還されていないことも無視できない問題だ。
これは国家レベルの外交問題になっていて、ことしの外交白書(2021年度版)にはこう書いてある。
「盗難被害に遭い、現在も韓国にある文化財19については、早期に日本に返還されるよう、外交ルートを通じて韓国政府に対して要請を行っており、引き続き、速やかな返還を韓国政府に求めていく。」
「カエサルの物はカエサルに」というように、本来なら文化財不法輸出入等禁止条約に基づいて仏像は盗まれた寺に戻されるはず。
でも韓国の浮石寺(プソクサ)が、それは倭寇に略奪されたわが寺の仏像だと主張すると、韓国メディアもこれに同調したことで返還する必要はないというオソロシイ世論が形成されていった。
韓国で行われた裁判での浮石寺の主張を見ると、これで自分たちの所有物と言い張る勇気には脱帽するしかない。
裁判で浮石寺は500年 – 600年前に倭寇が強奪した仏像だと主張する根拠を求められたが、「根拠を示す鑑定書は仏像を失ったときに、思い出すのが悲しいので捨てた」と主張し、根拠は提示できなかった。
でも考えられないことに、裁判では浮石寺の主張が認められた。
盗んだ仏像を返さなくていいというトンデモ判決がでたから、日韓の外交問題に発展する。
もちろん韓国にも光はある。
浮石寺から略奪されたことを証明する根拠や経緯を示さずに、「返還不要」と結論づけたことには、韓国の多くの専門家が異議を唱えた。
産経新聞の記事(2017/1/27)
国際法の専門家は匿名で「略奪された確証がなく、韓国人が盗んできたことが明らかな文化財を『韓国のものだ』と主張するのは国益にならない」と述べたという。
韓国専門家の相当数、日本返還求める 「国際的信用失墜させる」「略奪の確証なし」と断言
こんなことは韓国の名誉を失墜させ、日韓関係を悪化させることは明白。
でもそんな国民感情に反する意見を口にすると、社会的制裁を受けて家族や職場にも迷惑をかける可能性が高いから、名前を明らかにすることはできない。
検察が寺側の根拠不足をつくのは当然としても、裁判でそれを言うにあたって、まずは国民感情に言及しないといけないとは思わなかった。
中央日報の記事(2017年3月21日)
「愛国心の面では日本に返したくないのが当然だが、法理的に見れば浮石寺が不利な面がある」と説明した。
日本から持ち込まれた仏像控訴審の初公判…韓国検察「盗品所有権の主張は曖昧」
でも結局、愛国心が法理に勝ってしまったことはさっき書いたとおり。
この裁判については最近、韓国検察が「ギブアップ宣言」をしたらしい。
中央日報の記事(2021.09.16)
韓国検察「日本から盗んだ金銅仏像、真偽についてはこれ以上争わない」
対馬から盗まれた仏像は14世紀に浮石寺で製作されたもの、という主張を検察は受け入れてもうこの点は問わないことにした。
「速やかな返還を韓国政府に求めていく」という日本政府の要求がかなう可能性はもう絶望的だろう。
「Wow!Korea」の解説によると愛国心が法を超越するこの判決には、慰安婦・徴用工裁判とのこんな共通点がある。(9/16)
時効を無視した裁判であり、証拠が滅失した時期になってから推定に依存した判決を行うことだ。しかも、裁判官は「反日無罪」の圧力の中、「親日売国奴」に転落することを覚悟しないといけない。
<W解説>対馬から盗難の仏像、韓国窃盗団の「我々は愛国者だ」にみる「反日無罪」の非正常
裁判で「愛国心の面では日本に返したくないのが当然」と言った検察は、「我々は愛国者だ」と言う窃盗団と重なる。
「盗まれた仏像は対馬の寺に返すべき」と主張したら、韓国社会の「親日売国奴」に転落し、自分だけでなく家族や周囲の人間も攻撃を受けてしまう可能性が高い。
だから、国際的信用の失墜を不安視する専門家は匿名でコメントするしかないし、検察や裁判官も法理を貫くことをあきらめる。
韓国社会の、愛国が社会的正義になってしまうという風潮はどうにかならないかと、前々から思っているけれど、「反日無罪」の圧力はもはや無双状態で誰も手がつけられない。
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