同じ過去を持っていても、まったく違うイマがある。
日本に対する韓国と台湾の見方がまさにそれ。
台湾では、1895年〜1945年までの日本統治時代をそのまま「日治時代」と呼んでいる。
この時期には苦しいこともあったけれど、日本は纏足と辮髮の習慣、それとアヘンの吸引という「三悪」を社会から駆逐したことなど、良い面もあったと評価されている。
一方、韓国ではこの時代を「日本統治時代」と呼ぶこともあったが、2003年ごろからは、日本の加害性を強調する「日帝強占期」が一般的に使われるようになった。
韓国の歴史認識ではこの時代は暗闇で、「良い面もあった」と光の部分を指摘をすることは、社会的に許されていない。
たまにそのタブーを破り、その時代に社会が発展したなどポジティブな意見を言う人もいるが、すぐに 十字砲火を受けるのが「韓国あるある」のひとつ。
台湾と韓国では同じ時代があっても、現在の認識は大きく違っている。
その原因にあるのが「二・二八事件」だ。
ソウル市内のバス停
1936年の２月26日、日本の陸軍将校たちが政権関係者を襲うクーデター未遂事件がおきた。
その約 10年後、台湾では、市民が政権側に抗議する「二・二八事件」がぼっ発する。
1945年に日本がアメリカに降伏し、台湾から撤退すると、それと入れ替わるように、中国本土から、蔣介石をトップとする中国国民党の役人や軍人がやってきて、台湾を統治するようになる。
＊台湾では、彼らを「外省人」と呼び、昔から台湾に住んでいた中国人（漢民族）を「内省人」と呼んで区別されている。
台湾の人たちは最初、本土から来た「同胞」を歓迎したけれど、期待はすぐに衝撃や失望に変わった。
外省人はワイロを当然のように要求し、強盗や殺人などの犯罪行為をおこなって、人びとの不安を引き起こす。
国民党政府はマスコミに対し、犯人が外省人であることを隠すよう命じ、犯人が罰を受けないこともよくあった。
さらに、国民党政府の行政スキルは最＆低。
物資が不足して物価は高騰し、倒産する企業が続出して、街には失業者があふれるようになる。
こうした生活苦や差別的な対応によって、内省人の怒りと不満は高まっていき、ついに爆発した。
1947年２月28日、大規模な抗議デモが発生すると、軍は機関銃で民衆をなぎ倒し、多くの市民が殺害される。
民衆はこの暴挙に激怒し、政府関連の施設を襲撃し、外省人の店には火をつけた。
外省人も内省人も見た目では違いが分からない。
そこで、内省人は日本語で話しかけも答えられない人や、「君が代」を歌えなかった人間を外省人とみなし、暴力をふるうこともあった。
しかし、本気なった軍を相手にしたら、民衆に勝ち目はゼロ。
このとき、日本時代の貴重な人財が失われ、台湾社会の発展も遅れた。
裁判官・医師・役人をはじめ日本統治時代に高等教育を受けたエリート層が次々と逮捕・投獄・拷問され、その多くは殺害された。
二・二八事件では、数万人の市民が殺害されたと言われる。
本土からきた外省人を出迎える台湾の学生たち（1945年）
彼らはこのときまだ悪夢を知らなかった。
日本統治時代、台湾の治安は良く、役人の汚職もほとんどがなかった。市民はそこそこ豊かな生活をしていたから、戦後のギャップに驚いた。
外省人への絶望や怒りが日本の評価を高めることになり、それが現在の熱烈な親日感情につながっている。
非武装の民衆が一方的に撃たれている。
一方、日本の支配から解放された韓国では、すぐに朝鮮戦争（1950〜53）がはじまり、国土は焦土と化す。
韓国の歴史教科書を読むと、この戦争によって日本経済が復活したと書いてある。
しかし、それは過大評価だ。
「朝鮮特需」は高度経済成長の要因の一つでしかなく、「そのおかげで日本はよみがえった」とするのは盛りすぎ。
それに、このとき日本は米軍に物資の補給や武器の修理などをおこない、後方支援をしていたから、韓国にとっても大きな利益があった。
つまり、日韓はウィン・ウィンだったのだ。
しかし、韓国では「朝鮮戦争で日本は大儲けした」と、恨みに満ちた目で見ることが一般的にある。
日本が朝鮮戦争を引き起こしたとか、あり得ない主張をする人がいて、それを信じる雰囲気もいる。
韓国では、戦争をはさんだ「ビフォー・アフター」で、台湾のように「あの時代は良かった…」と実感することがなかった。
朝鮮時代末期と日本時代の「ビフォー・アフター」を検証することもほとんど行われていない。
そんなことで現在の台湾と韓国では、日本に対する見方が「反対」と言っていいほど違っている。
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