【韓国 vs ＩＯＣ】朝鮮出身の日本代表・孫基禎をめぐる争い【韓国 vs ＩＯＣ】朝鮮出身の日本代表・孫基禎をめぐる争い

『こち亀』には４年に１度、夏季オリンピックの年にだけ登場する日暮熟睡男（ひぐらしねるお）というキャラがいる。通称、「オリンピック男」だ。
ここからは真面目な話で、オリンピックの年になると韓国ではよく、孫基禎（ソン・ギジョン、そんきてい）がメディアに取り上げられる。
彼は日本統治時代の朝鮮で生まれたマラソン選手で、1936年のベルリン・オリンピックに参加し、金メダルを獲得した。
彼は朝鮮人だが、日本代表として出場したから、国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）の記録では彼の国籍は「日本」となっている。

朝鮮系日本人だった孫はマラソンの才能が注目を浴び、京城（現ソウル）の高等普通学校にスカウトされ、陸上部で指導を受けて才能を開花していく。
そして、１９３５年に東京で行なわれた明治神宮体育大会のマラソンで、当時の世界最高記録（２時間２６分４２秒）を樹立し、孫はベルリン五輪の日本代表有力候補と見なされた。
そして翌年、日本選手団のメンバーの１人として、胸のゼッケンに日の丸を付けて出場する。マラソンの優勝セレモニーでは日の丸が揚げられたから、客観的に見れば彼の国籍は日本以外にありえない。
しかし、現代の韓国では、その名誉は韓国（朝鮮）人のものと考えられていて、この事実を受け入れられないでいる。

そんな気持ちが背景にあり、東京五輪が行なわれた２０２１年、東京にある日本オリンピックミュージアムが批判を浴びた。この中の「歴代日本人金メダリスト」の展示で孫基禎が含まれていたから、韓国で「けしからん！」といった批判が噴出。
しかし、日本はＩＯＣの公式記録に基づき、「歴代日本人金メダリスト」から孫を外すことはなかった。

ベルリン五輪で金メダルに輝いた孫基禎
当時、朝鮮の新聞『東亜日報』が胸の日の丸を消した写真を掲載した。

韓国の民族感情からしたら、孫の国籍は間違いなく「ＫＯＲＥＡ」だ。
その強い気持を持ちつづけることはいいが、現実を勝手に書き換えてはいけない。
ドイツのベルリン五輪記念スタジアムでは、種目ごとの優勝者の名前が刻まれていて、その中に孫もいる。
中央日報のコラムによると、１９７０年８月１５日、夜の闇にまぎれてとんでもないことをした人物がいた。（2024.08.11）

当時国会議員だった朴永禄（パク・ヨンロク）氏がはしごをかけて上り、「ＪＡＰＡＮ」を削り「ＫＯＲＥＡ」に変えた。５時間かかったという。

日章旗に覆われてはならない「記録の男」孫基禎

パク議員は金づちをノミを使い、５時間かけて孫の国籍「ＪＡＰＡＮ（小文字のJapanかも）」の文字を削り、代わりに「ＫＯＲＥＡ（Korea）」と彫った。
コラムではこの行為を「義挙」のように書いているが、完全な違法行為だ。
ドイツ警察は不法侵入と公共財産破壊の容疑でパクを捕まえようとしたが、彼はすでに出国していた。この事件のあと、ＩＯＣと西ドイツ政府がすぐに孫の国籍を「ＪＡＰＡＮ」に直したことは言うまでもない。
この精神は、統治時代に『東亜日報』が日の丸を消したころとまるで変わっていない。

ＩＯＣに韓国の主張を受け入れる気配はないため、コラムでは「今後も孫基禎の国籍を韓国に変えるのは容易ではない」とため息をつく。五輪が孫の国籍を「コリア」と認めれば、日本オリンピックミュージアムの記録もそう変更されるだろうけど、たぶんそんな未来はやってこない。
「ＪＡＰＡＮ」の文字を削ったことは、ＩＯＣのルールを破壊したことを意味するから、今となっては大きなブーメランになってしまった。

それにしても、孫が日本の指導や支援を受け、日本代表選手として選ばれて五輪に参加したという事実は、ふだん韓国が強調している「日帝の残虐で差別的な支配」というのと矛盾してないか？
この時代にインド人がイギリス代表、ベトナム人がフランス代表選手に選ばれて、五輪に参加できたとは思えない。