「言ってません」 韓国の日本報道はわりと事実とちがう

 

ことし3月、大リーグ(MLB)のドジャースとパドレスの選手たちが、試合をするために訪韓すると、韓国の人たちは世界的スターとなった大谷選手に熱狂した。
大谷選手には超人的な実力があり、しかも素晴らしい人間性も兼ね備えている。
そんな偉人がこんなことを言ったら、「大谷フィーバー」は沸騰するのは必然。
中央日報の記事(2024.03.18)

「韓国は最も好きな国」…韓国のファンも興奮させた大谷

韓国人から見ると、大谷選手は「21世紀の野球のアイコン」で、今回ソウルに来たことで、「漫画の主人公ではなく現実の人物という事実を改めて立証した」というほどの人物だ。
そんなスター選手が韓国を「最も好きな国」と表現したから、朝鮮日報も絶賛した。(2024/03/18 )

MLB:大谷の「韓国愛」は本物…「彼は日本で最高の外交官」

しかし、ここで残念なお知らせがある。
大谷選手が「韓国は最も好きな国」と言った事実はない。実際の発言は「(韓国は)好きな国の一つ」だった。

日本についての韓国メディアの報道には、「実際以上に盛る」という特徴がある。
多くの人に見てもらわないと会社の利益が出ないから、視聴者の注意を引いたり喜ばせたりするために、事実と違う報道をすることがわりとある。
日本人の感覚なら、来日した海外のスーパースターが「日本は好きな国の一つ」と言ったのを、メディアが「日本は最も好きな国」と報道したら、きっと批判が殺到する。
しかし、韓国社会では、それぐらいなら“誤差”の範囲内で大きな問題にはならない。

 

さらに韓国では、物事を自分の都合の良いように解釈する傾向があり、それに基づいて政治家が発言したり、メディアが報道したりするため、後で日本側から「そんなことは言っていない」と否定されることがある。
5年前、中央日報が「タンザニアで「独島は韓国の領土」記念コイン発行」という記事を掲載した。(2019.09.16)
これは、KBS(韓国放送公社)が報じたことがもとになっている。
しかし、日本政府がタンザニア側に確認したところ、中央銀行も政府もそんなコインの存在を否定したから、当時の菅官房長官が「事実ではない」と公式に発表した。
これはもう「誤報」と言っていいレベル。

 

きのう行われた自民党の総裁選挙で、1回目の投票では高市氏に敗れたものの、決選投票で逆転して石破氏が新しい総裁に選ばれた。つまり、日本の次の首相だ。
この結果に隣国は拍手を送っている。

朝鮮日報の記事(2024/09/28)

韓国大統領府、石破首相誕生に「韓日関係の良い流れが続くだろう」

高市氏は首相になっても靖国神社には参拝すると宣言していて、韓国では「極右」と見なされているため、それが現実なるという“悪夢”は避けることができた。反対に、石破氏は韓国で歴史問題に対して「前向き」と歓迎されている。
その理由は、2017年に石破氏が慰安婦問題について「韓国が納得するまで謝罪すべきだ」と発言するなど、韓国にとって理想的な歴史認識を示したからだ。

韓国メディアのMBCも、その言葉をニュースの見出しに持ってきて大きく報道した。(2024.09.27)

‘한국이 납득할 때까지 사죄해야’‥한일 관계 ‘순풍’?
(機械翻訳:「韓国が納得するまで謝罪すべき」…韓日関係「順風」?)

石破氏は1910年の日韓併合についても、韓国の自尊心を傷つけたことだとし、申し訳ないことだと発言したという。
過去のこんな発言から、韓国では石破氏は「良心的な日本人」と見なされている。今回そんな人物がトップになったことで、これから日韓関係はうまくいく(順風)のではないか? という期待が高まっている。
少なくとも、歴史問題が原因で、関係が悪化することはないと安心感を持っているはずだ。

しかし、ここで残念なお知らせをしないといけない。
日本政府は慰安婦問題について、2015年の日韓合意によって解決したと考えている。「韓国が納得するまで謝罪すべき」という発言は、そんな政府の立場を否定することになるため、日本のメディアが韓国紙の報道について石破氏に真意を確認した。
すると、結果は「やっぱり」だった。

産経新聞の記事(2017/5/24)

韓国紙、自民・石破茂氏が「納得得るまで日本は謝罪を」と述べたと報道 本人は「謝罪」否定

石破氏は、「お互いが納得するまで努力を続けるべきだ」と話しただけで、「謝罪」という言葉は一切使っていないと明言し、韓国メディアの報道を否定したのだ。
与党の有力者である石破氏が慰安婦合意を否定するわけがない。
韓国メディアは「努力」を「謝罪」と解釈したらしい。それよりも、「お互い」を「日本」と主語を変えた方がひどい。

韓国では今でも石破氏について、「日本は韓国へ謝罪すべきと言ってくれた人物」という認識をしている。
とはいえ、韓国的には「極右」の高市氏が、総裁選で石破氏に匹敵する大きな支持を集めたことは韓国側も知っているから、石破氏が韓国に譲歩して、日韓関係がすぐに変わるとは考えていないはずだ。
しかし、来年は日韓国交正常化60周年の記念の年だから、韓国側が日本の「前向き」な態度変化を期待していることは間違いない。

 

石破氏本人が否定しているのもかかわらず、韓国ではそれを前提に「これまでの右翼勢力と違う」と理解して、これからの日韓関係を明るく考えているらしい。事実誤認からスタートして、“順風”にはいかないと思うけれど。
韓国のメディアは「好きな国の一つ」を「最も好きな国」と表現したり、「努力」を「謝罪」と言い換えたりしないで、事実をそのまま伝えた方がいい。そうでないと、無責任に国民の期待をふくらませて、いつか現実に打ちのめされる。で、その後なぜか日本が叩かれる。
いっそのこと、石破新首相が高市氏を外務大臣に任命して、最初に韓国の甘い期待を吹き飛ばしてもいいと思う。

 

 

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

優秀な遺伝子?韓国人で好き嫌いが分かれる「クッポン」

韓国メディアの「日本報道」には6つの特徴がある

 

4 件のコメント

  • 韓国メディアの過剰、推測、主観的報道は有名です。
    大谷翔平を韓国のマスコミが賞賛するのは、多少異様に思われるかもしれませんが、基本的には否定的な考え方を持っています。今年3月に大谷の通訳、水原の賭博事件が発生した際、韓国のメディアは大谷が関与した可能性もあるというニュースを継続的に伝えました。日本人の大谷がMLBで韓国選手より優位な成績を残し、最高の人気を博している状況を叱責したからです。
    大谷翔平が非の打ちどころのない性格の選手なので、現在では賞賛していますが、相変わらず彼らは大谷を嫉妬しています。アーロン·ジャッジがホームラン数で大谷をリードすると、「大谷、横にどけ!」というタイトルでジャッジを称える記事を書くのがその理由です。

  • >「大谷、横にどけ!」というタイトルでジャッジを称える
    日本から韓国の大谷報道を見ると、「絶賛一色」という感じでした。ですが、こんな報道もあるんですね。
    やっぱり、日本にいては、韓国の事情は正確に見えません。

  • 記事冒頭の写真にもあるのですが、韓国人って、どうして命令文なのに「Fighting!」という進行形を使うのですかね? どう考えても間違ってますよ。この場合、ボクシングの試合再開と同様に「Fight!」というのが正しいことは明らかでしょう。日本の中学生でも分かります。
    韓国人って、「日本人よりも英語は上手い」ことをよく主張しているのですが、怪しいものです。
    あるいは、和製英語みたいなものか? 韓製英語?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。