【過去より未来】反日を越える韓国の“克日”、その現状は?

 

ことしの夏の甲子園で優勝した京都国際高校は、もともとは日本に住む韓国人のための民族学校だった。それが後に方針が変わり、日本人も受け入れるようになると、その数はどんどん増えていき、現在では中高合わせた生徒数約160人のうち、8割が日本国籍となっている。
61人いる野球部員のうち、韓国籍を持つ生徒は一人だけで、あとはすべて日本人だ。

日韓友好に賛同する日本人・韓国人が集まるあるネットグループを見ていると、ことしの夏は甲子園に関する韓国人の投稿が多かった。試合に勝った後、部員たちが韓国語で校歌を歌うことも、民族感情を刺激し、この熱狂を加速させた。
ルーツは韓国の民族学校にあることから、京都国際が日本の頂点に立つと、それを「我がこと」のように考え、喜びを爆発させる韓国人はとても多かった。しかし、その一方で、現在では日本人の生徒の方が多く、野球部員はほぼすべてが日本人だったことから、あれを「日本に対する韓国の勝利」と理解するのはおかしいと指摘する韓国人もチラホラいた。
そんなコメントに対して、ある韓国人がこんな返信をする。

「야구부에 일본인이 많다고 뭐라시는 분들이 많은데… 일본 젊은 학생에게 한국 문화 및 역사를 가르치는 것이 더 훌륭하고 효율적인 외교다. 더 도와줘서 한국에 대한 좋은 이미지를 갖게 하는 것이 진정한 극일이요 아시아 평화다.」

機械翻訳を参考にすると、「野球部に日本人が多いと文句を言う人が多いが…日本の若い学生に韓国の文化や歴史を教える方がより立派で効率的な外交だ。韓国に対する良いイメージを持たせることが真の克日であり、アジアの平和だ」といった意味らしい。

 

見てのとおり、このコメントは野球の話とはズレている。
韓国メディアの記事を見ていると、「平和」や「正義」といったあいまいな概念を持ち出して、「だからいいんだ!」と自分たちの行為を正当化することが多いと思う。
まぁ、それはいいとして、「극일(克日)」というワードに引っかかる韓国人がいて、「この言葉はグループの目的と合致するでしょうか?」と疑問を投げかけた。

「克日」は、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権(1980年 – 1988年)の時代に登場した造語で、日本に打ち勝つという意味。
具体的には、日本よりもっと良い国をつくろうという目標のもと、全斗煥大統領は「反日」というネガティブな感情の代わりに、「克日」という新しい概念を掲げた。
日本が過去に行った“蛮行”を怒るのではなく、未来に目を向け、国民一人一人が努力して韓国の国力を上げ、強大な国にしようと考えたらしい。

1980年代の韓国からしたら、世界第2位の経済力を持つ日本は(良い意味で)モンスターのような国だった。
この「日本に追いつけ、追い越せ」という「克日」の考え方は国民の心をつかみ、この言葉はその後も韓国社会で使われることとなる。
過去の歴史を蒸し返して、くり返し日本に謝罪や賠償を要求することより、韓国民が未来に向かって努力して、素晴らしい国を築いていくことは日本にとっても望ましい。

しかし、韓国の人たちのコメントを見ていると、「克日」の意味や目的がズレていると感じることが多い。
それはメディアも同じだ。
たとえば、全国紙・中央日報で元国会議長の鄭義和(チョン・ウィファ)氏がこんな主張をしている。(2019.07.31)

反日を越えて克日で「美しい復讐」を準備しよう

もう日本への憎悪を深めるのはやめて、韓国人の知恵を集めて力を高め、日本より競争力のある国をつくる必要がある。世界のどの国よりも正しく、清廉で品格の高い社会を築くことが韓国民に求められている──。

そんな“真の克日”を実現することで、韓国は東アジアで平和と繁栄の花を咲かせる主役になることができるという。これが「美しい報復」の中身だ。
それにしても、韓国の人たちは本当に「平和」という言葉が好きらしい。
それはいいとして、その報復の対象は日本のはずで、これは「日本への憎悪」とセットになっているから、この言葉をチョイスする時点で過去にとらわれているように見える。

韓国では、過度な反日に対する反省が起こると、克日という考え方があらためて提起されることがよくある。しかし、この概念はあいまいでいろんな解釈ができるため、自分独自の理解を「真の克日」と表現する人も多い。

 

それでも全体的に見れば、80年代に比べると、日韓の特に経済的な差は本当に縮まって、日本を上回った部分もある。
最近では、中央日報の「20年前は半分だったのに…韓国の賃金、日本と逆転」(2024.03.18)という記事のように、「日本を上回った! もう今の韓国は昔とは違う」と強調する報道が多い。
だから、日本より良い国を築いて「克日」を達成し、「反日」が消える日も近いという期待は持たないほうがいい。
それはソレ、これはコレで、過去の日本に対する憎悪は小さくなることはあっても消えることはなく、きっとこれからも何かきっかけがあれば爆発する。
日韓関係はそんな単純ではないのだから。それでも、韓国が「真の克日」を早く実現してほしいとは思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。