金髪で白い肌の外国人に初めて会って、「どこから来ましたか?」と質問し、「リトアニアです」と言われたら、きっと8割以上の日本人が「それはどこですか?」と聞き返す。ほとんどの日本人にとってリトアニアはヨーロッパの死角で、人生の中でこの国と接点を持つ人は少ない。
静岡の大学に留学していた友人のリトアニア人は、日本でそれを何度も経験して、母国の知名度のなさを痛感した。リトアニアはバルト三国のひとつで、ロシアとドイツの間にあると言うと、かろうじて理解してくれる人が多い。
去年、駐日リトアニア大使が『桃太郎電鉄ワールド』のイベントに参加したのも、そんな残念な思いをする国民を一人でも減らすことが目的にあったと思う。
『桃鉄ワールド』をすると世界各国の文化や歴史を知ることができるらしく、リトアニアも登場する。ジーカス駐日大使はリトアニアの食文化について語り、国民はハチミツが大好きなことや、リトアニアでは酪農が盛んで、種類のチーズが本当にたくさんあることなどを紹介した。
だからこそ、友人のリトアニア人は日本で生活していて、チーズの少なさに不満を感じていた。その代わり、充実していたのはシーフードだ。日本のスーパーに行くと、リトアニアのスーパーでずらりと並ぶチーズが魚に替わった感じで、彼が生まれて初めて見る魚がいくつもあったという。
昨年 12月、そんな彼が新妻を連れて、新婚旅行で日本へやって来たので、彼らと会って話をした。夫にとっては久しぶりの、妻は初めての日本をどう感じたのか? これから、日本の食文化について彼らが感じたことを紹介しよう。
リトアニアの街
ーー外国人が日本旅行で楽しみにしているのがグルメ。今回は日本に来てから、どんな物を食べた?
夫:私が日本にいたころ、定食が好きでよく食べていたから、彼女にも食べさせたんだ。あれはどうだった?
妻:ユニークで気に入ったわ。
ーーユニークか。定食のどんなところが変わっていると思った?
妻:ヨーロッパのレストランでは、前菜、スープ、メインの肉料理、デザート、そして最後に飲み物が提供される。定食はそうじゃなくて、いろんな食べ物が同時に出てくる感じで、発想が違うと思ったの。
夫:そうそう。見た目が豪華だし、「どれを食べようかな〜」という楽しみもある。
ーー一つずつ食べ進めていく西洋料理と違って、定食は出し惜しみなしで、「一度にドンっ」という感じだね。そう言えば、あれを「all-in-one meal」って表現した外国人がいたな。
夫:ご飯やおかずを食べながら、みそ汁を飲むのも珍しい体験だと思った。
妻:そうね。ヨーロッパの料理では、口の中で食べ物とスープが一緒になることはないから。
ーーなるほど。その発想はなかったね。
懐石料理は西洋のコース料理みたいに、一品ずつ食べていくけど、日本料理は昔から「全部のせ」のスタイルが多かったかもしれない。
代表的な和食に、1つの汁物と3つの食べ物(主菜と2つの副菜)をセットにした「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」がある。みそ汁とメインとなる魚料理(または肉料理)、それと2つのおかずのセットが一汁三菜で、それに主食の米を組み合わせたものは現代の日本でもよくある。
一汁三菜をはじめとする日本の伝統的な食事では、必要な栄養をバランスよく取ることができ、長寿や肥満防止に効果的とされる。こうしたことに加え、日本の食には四季の移ろいが表現されている。和食が世界で高く評価され、ユネスコ無形文化遺産に登録されたのも納得。
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