ドイツのアジア人蔑視・差別 日本人は韓国人の行動力を見習うべき

今では「忌み言葉」となって封印されたと思うけど、数年前まで、ドイツで「スシボンバー」という言葉があった。
日本人のサッカー選手がドイツリーグで目の覚めるような活躍をすると、現地メディアから敬意を込めて「スシボンバー」の称号がおくられた。初代スシボンバーは、ハンブルガーSVなどでプレーしていた高原直泰さんだった記憶。
近年では、2017年にベルギーリーグでプレーをしていた久保裕也が現地メディアに「スシボンバー久保裕也はチームメートを驚かせた」と書かれた。

爆発的に活躍することから「爆弾」、そして、ヨーロッパで最も有名で親しまれている日本文化は「スシ」なので、それを合わせてこのキャッチーな表現が作られたらしい。
ちなみに、香川真司選手はドイツ時代、「極上の寿司」と呼ばれたことがある。
こうした呼称について、個人的には、アジア人を軽視するドイツ社会の雰囲気を感じていい気はしないけれど、朝日新聞の記事のように、日本ではあまり問題視されていない。(2005年04月27日)

ハンブルクでの生活満喫 スシボンバー高原選手

しかし、ドイツの空気は変わった。
2012年、サッカー解説者が実況中に日本を「スシの国」と表現したことが差別的だとして問題視され、その解説者はその後解説から降ろされ、最終的には解雇された。
*この解説者は「スシーズ」という複数形を使ったため、「スシの国」とはニュアンスが違ったらしい。

 

スシボンバーについては「もっと配慮しろや」と思ったけれど、「スシの国」で解雇されるのは厳しすぎる。そのギャップに疑問を感じて、ドイツ人に意見を聞いたことがある。
彼は、ドイツ社会にはアジア人に対する軽視が確かにあって、その意識が「スシボンバー」にも表れていると言う。ドイツ人として、日本人に対して非礼を謝りたいとも言っていた。

ドイツも年々、人種差別に敏感になっているから、今はそういった表現はできないらしい。
「スシの国」の件については、この解説者が過去にも差別的な発言をしていたため、「累積」で退場になったとのこと。
彼としては、すでにドイツ社会には、アジア人への軽視や差別を容認する雰囲気があり、この発言を認めるとその雰囲気を強めてしまうので、社会に警鐘を鳴らす意味でも厳罰が必要だと考えていた。

ドイツでアジア人を侮辱する言葉に、中国語の発音をからかう「チン・チャン・チョン」がある。普通のドイツ人に東アジアの人間の区別はできない。ドイツで街を歩いていたら、通りすがりの人に「チン・チャン・チョン」と言われて、ドキッとした日本人というもいる。

 

さて、韓国最大の全国紙・朝鮮日報の記事によると、お隣さんはお怒りのようだ。(2025/05/08)

主力DF金ミン哉に人種差別? 2季ぶりVのバイエルン、動画サムネに批判殺到

ドイツ・ブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンに、韓国サッカー代表のキム・ミンジェが選手が所属している。彼は優勝を決めた試合に出場したにもかかわらず、その後、「人種差別」を受けたということで、韓国民が怒った。

ミュンヘンが公開した優勝を祝う動画のサムネイルには、ハリー・ケインやトーマス・ミュラーといった有名選手たちの写真が使われていたが、そこにキム選手の姿はなかった。
そのため、韓国では「アジア人だから冷遇されている」といった指摘があがり、「キム・ミンジェ人種差別問題」へと発展した。
批判を受けて、ミュンヘンはサムネイルを変更し、キム選手を含めることにした。
ブンデスリーガ事務局も、ミュンヘンの優勝を祝う公式動画にキム選手がいなかったため、韓国人から批判を受けたという。

韓国代表のソン・フンミン選手も、ドイツでプレーしていたころについて、「想像もできないほどの人種差別をたくさん受けた」と話した。今回の抗議の背景には、こうした負の積み重ねがある。
ただ、この人種差別騒動について、キム選手は何も反応していない。きっと嵐が過ぎ去るのを待っている。

 

記事を読む限り、キム選手だけがこんな扱いを受けたわけではないようだ。
もし、日本人選手が同じ扱いを受けても、日本のメディアや国民は「塩対応」といった程度に受け止め、あまり大きな問題にはならない気がする。
しかし、アメリカ人やドイツ人に聞くと、欧米社会では「沈黙は金」ではなく、沈黙は「OK」の意思表示と受け取られることが多い。
日本人の場合、不満があっても直接相手に言うのは面倒で、「今回は勉強になった」と自分を納得させる、つまり泣き寝入りすることが多い。だから海外のホテルでは、日本人客はクレームが少ないと“歓迎”されている。
欧米人は違って、「それはおかしい」と思ったら、言葉や態度で直接伝えることが一般的で、その結果、対応が変わることも多い。「沈黙は損」なのだ。

 

自分の気持ちをはっきり伝えるという点では、韓国人は日本人よりも欧米人に近い。
今回のケースでも、「批判殺到」といった形で怒りを表現したことで、ドイツ側にしっかりと修正をさせている。外国人を相手に、無視できないほどの直接的なアクションを起こし、アジア人に対する「無自覚な蔑視」に気づかせ、意識を変えることは、日本人のためにもなる。
国際社会を生きていくこれからの日本人は、この行動力に関しては隣人を見習ったほうがいい。

ところで、韓国人選手を「キムチボンバー」と呼んだら、韓国でどんな騒ぎになるのだろうか。「ハンブルクでの生活満喫 キムチボンバー・キム選手」とはならないはずだ。

 

 

「ヨーロッパ」カテゴリー 目次 ①

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

ドイツ人の価値観 サッカーW杯で日本との試合より大事なもの

ドイツ人はバウムクーヘンを食べるのか? 日本の物とはどう違う?

ドイツ人が感じた日本の街や人:無人販売所・盗み・創造力

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