【日英関係】戦争の悲劇を乗り越え、強敵は“とも”となった

敵と全力で戦うことで相手を理解し、最終的には仲間(友だち)になるという展開は、『少年ジャンプ』でよく見られる王道パターン。
日本人はそんな物語が大好きだ。
『北斗の拳』では、ケンシロウがそんなライバルと出会って強くなり、負けたラオウは最期にその差を知ってこう言った。

「強敵(とも)か・・おれには強敵(とも)と呼べる男はトキしかいなかった・・」

現実世界では、日本とイギリスがまさにそんな関係だ。幕末にはイギリスと薩摩藩を戦争をした結果、お互いを認めあい、友好関係を結ぶこととなった。
現代では「プリンス・オブ・ウェールズ」がそのシンボルとなっている。

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太平洋戦争のはじまりは「マレー作戦」

1941年12月8日(日本時間)、日本軍がハワイの真珠湾にあった米軍基地に奇襲攻撃をしかけ、太平洋戦争がはじまったと一般的には思われているが、じつはその直前に日本軍がマレー半島に上陸し、イギリス軍と戦っている。
だから、厳密に言うとこの「マレー作戦」が太平洋戦争の開始だ。

日本軍の目的はイギリス軍を撃破し、シンガポールを手に入れることだった。当然、イギリス側もそれは分かっていたから、シンガポールを守るために王太子(ウェールズ公)に由来する最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズを含む東洋艦隊を向かわせた。
プリンス・オブ・ウェールズはイギリス軍が誇る戦艦で、チャーチル首相は「世界最強」と豪語したが、結果的にそれは歴史的な「死亡フラグ」となってしまう。

 

シンガポールに到着したプリンス・オブ・ウェールズ(1941年12月2日)

強敵「プリンス・オブ・ウェールズ」との戦闘

イギリス側は、日本軍の戦闘能力を考え、シンガポール要塞と東洋艦隊があれば十分だと判断したが、これは後に大誤算と分かる。
日本軍がマレー半島に上陸した2日後、日本海軍の航空隊と東洋艦隊がマレー沖で激突し、激しい戦闘となった。
プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスがこの戦いで、日本の攻撃機による魚雷攻撃を受けて、たった2時間で撃沈されてしまう。

完敗の原因は、イギリス軍が日本軍の性能を過小評価していたから、とは言い切れない。というのは、海上を航行中の戦艦を航空機だけで沈めたのはこれが世界初の事例で、当時の常識を超えていたからだ。
それをやってのけた日本軍の攻撃力を、イギリスが正確に把握できなかったのは仕方なかったかもしれない。
マレー沖海戦の敗北によって、イギリスのアジアにおける制海権は崩壊し、勝った日本は圧倒的優位に立った。特にイギリス側にとって、プリンス・オブ・ウェールズを沈められたことの喪失感や屈辱感はとてつもなく大きかった。しかし最終的には、日本人がその気持ちを味わうことになるのだけど。

太平洋戦争は日英両国民に、深い傷跡を残す結果となった。

「とも」となったプリンス・オブ・ウェールズ

マレー沖海戦から84年後、ことしの夏、イギリス海軍のクイーン・エリザベス級航空母艦「プリンス・オブ・ウェールズ」が初めて日本を訪問し、東京国際クルーズターミナルに入港した。その際、イギリス軍のステルス戦闘機(F-35B)が、海上自衛隊の護衛艦「かが」に初めて着艦した。
ちなみに、日本海軍の航空母艦「加賀」も1942年のミッドウェー海戦で米軍に撃沈されている。

かつて敵対した日英は今や同盟国となった。
日本軍が撃沈した戦艦と同じ名前の空母が来日して軍事交流を行ったことは、日英が太平洋戦争の悲劇を乗り越えたことを明確に示している。
そんな出来事に日本のネット民も胸を熱くした。

・前世が日本の空母艦載機にボコられたんだけっか
・戦艦に王室の称号を付ける感覚が分からん
日本で言うと戦艦「秋篠宮」みたいな感じでしょ
・復讐にやってきた
・紅茶運んで来たのか
・お台場の見学ツアーあるんか
・競馬の話かと思ったわ

 

激しい戦闘の記憶は消えることがなくても、憎しみや恨みを過去のものとし、歴史的な和解をすることは可能だ。
1941年には「強敵」だったプリンス・オブ・ウェールズが、2025年には「とも」となった。そのエピソードは、日本とイギリスの友好と未来志向の関係を象徴している。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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