知人のイギリス人女性は日本に興味があって、静岡へやってきて英会話学校で英語を教えはじめて、もう5年以上がすぎた。
ここでは彼女の名前を、今いろんな意味で話題の「スカーレット」とするが、べつに友だちが少ないわけではない。
彼女は英会話スクールで働いていて、苦い思いをしたこともある。
今のクリスマスシーズンに、彼女はレッスン前に、ニコニコ顔の上司から「今日からこれを付けて授業をしてくれ」と言われ、トナカイの角を渡されただけなら良かった。それに加えて、トナカイの鼻も付けるように言われたから、「なんで顔にバンドをしなきゃならんねん!」と不快になって、レッスン直前に士気を失ってしまった。
最近、そんな彼女と会って「旬な話」をした。
クリスマス大好き日本人
ーー12月に入って、街のあちこちでクリスマスの歌が聞こえて、ツリーなんかの飾りも見るようになった。
そうそう、日本人はクリスマスの雰囲気が好きだよねー。
ーーでも、そのせいでスカーレットには苦い思い出がある。
だまれ。
ーーソーリー。とにかくクリスマスには、日本の伝統文化には無い圧倒的な「オシャレ感」があるから、日本人に受けたと思う。
そう言えば、日本人の女友だちから結婚式に招かれたことがある。「彼女は無宗教なのに、なんで教会で式をするのかな〜」って不思議に感じたけど、あれも、きっと華やかな感じが理由なんだ。
ーーそうそう。今では神社で結婚式をあげる神前式が普通になっている。でも、あれは明治時代、キリスト教のウェディングの影響を受けてできたもので、江戸時代の日本人はそんなことをしなかった。
6世紀に朝鮮半島から仏像が伝わったとき、日本人は「仏の顔はキラキラ輝いている(仏の相貌端厳し」とまず見た目でヤラれた。
形から入るのって大事。でも、日本人はクリスマスの雰囲気を楽しむけだけで、キリスト教徒にはならないよね。
ーー日本人は基本「イイトコ取り」だから。
神前式の歴史は新しいけど、神道の伝統は古代からある。日本人は無宗教といっても実は日本教徒で、その辺のベースは変えようとしない。遣唐使の時代、中国から仏教を導入しても、道教は採用しなかったみたいに。
日本人は外国の文化を取捨選択して受け入れている。

「楽天」のアドベントカレンダー
アドベントカレンダー
クリスマスと言えば、最近アドベントカレンダーを買ったの。それは知ってる?
ーーあ、あぁ、アドカレね。聞いたことはある。
…ねーよ、そんな略語。知らなかったよね?
ーーはい。
アドベントはイエス・キリストの誕生日、12月25日を待ち望む期間のことで、だいたい1か月間あるわけよ。
※アドベントは「やって来る」という意味で、クリスマスのアドベントは「キリストの到来」を意味する。2025年のアドベント期間は、11月30日から12月24日まで。
ーーあっ、思い出した。ドイツ人からその話を聞いたことがある。アドベントのころになると、クリスマスマーケットが開かれるんだって。
イギリスではアドベント用の特別なカレンダーがある。それは立体的なもので、日付のある小窓を開けると、中にお菓子が入ってる。子どものころ、毎日アドベントカレンダーの小窓をパカッと開けて、チョコを食べるのが超楽しみだった!
ーーそれはきっと日本の子供も喜ぶな。
アドベントカレンダーはワクワク感を高める道具で、クリスマスのカウントダウンなのよ。日本でそれを見つけて、懐かしくなっから即買いしちゃった。
ーー日本人はキリスト教を商業利用することには熱心だから、そのうちアドベントも“くる”かも。

エッグノッグ
エッグノッグ
ーースカーレットは今年のクリスマスは何をすんの?
友だちを呼んでパーティーを開く予定だから、この前、コストコへ行ってワインやチキンを買ってきた。
ーー関係ないけど、ある職場で「今年のクリスマスとか何するの?」と男性の上司が女性社員に聞いたら、セクハラになって減給処分を受けたんだって。
それは敏感すぎ!
ーー話を戻すと、欧米でクリスマスの飲み物と言えばワインがメイン?
冬はそれを温めて、スパイスやハチミツを入れてよくホットワインにする。昔は上流階級の飲み物だったシャンパンもお祝いの雰囲気を高めてくれるから、クリスマスにはふさわしい。
ーーそっか。シャンパンはめでたい飲み物だから、スポーツ大会で優勝した選手やチームがかけ合うのか。あの「シャンパンファイト」は、ナポレオンが戦勝記念におこなったのが始まりという説もあるらしい。
ほかにもアメリカやカナダの人たちは、クリスマスシーズンになるとよくエッグノッグ(eggnog)を飲む。
ーーエグいノックって、千本ノックのこと?
エッグノッグっていうのは卵、牛乳、砂糖を材料にして作って、シナモンやナツメグなどのスパイスを加えた飲み物のこと。冬の季節にぴったりの温かくて甘い飲み物で、大人はそれにブランデーやウィスキーなどのアルコールを入れて飲む。
ーー写真で見るとミルクセーキみたいで、濃厚で甘そう。
そう。エッグノッグはイギリスで生まれたけど、今ではアメリカやカナダで人気になってるの。
ーーイギリス人は起源を主張しない?
は? なんでそんなことをするの?
ーーいや、日中韓は文化の起源をめぐって、ネット上でマウントの取り合いになってよくケンカになるから。
そんなのどうでもいいでしょ。今度のクリスマスパーティーでは、アメリカ人の知り合いがエッグノッグを作ってくれることになっているから、楽しみにしてるの。
ーーそれはいいね、パーティーを楽しんで。
ありがとう。
ーー(最後まで誘ってくれないんだ。)
おまけ
豪邸に住んで優雅にシャンパンを飲みながら、世の中の貧困や不平等を批判するような偽善的な人間を「シャンパン社会主義者」と揶揄することがある。アメリカでは「リムジン・リベラル」という。
こんな二重基準を持って正義を楽しむ人は世界中にいる。

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