先日、カンボジア人が「P・P」という言葉を見ると、首都プノンペンか、ポル・ポトという悪魔を思い浮かべるという話を書いた。
以前、日本に住んでいたアメリカ人と話していたとき、彼は「『LDP』という言葉を見て、すぐに意味が分かれば、その外国人は日本に長く住んでいる証拠だね」と言った。
これは「Liberal Democratic Party(自由民主党)」の略で、確かにそれが分かれば観光客レベルの浅い日本理解をとっくに超えている。
「朱に染まれば赤くなる」と言うように、付き合う人によって大きな影響を受けることは、昔から世界中であった。
「LDP=自民党」と分かるくらい日本に“沼っている”外国人なら、価値観や考え方で影響を受けて、行動の一部が「日本人化」している可能性が高い。
友人のイギリス人女性が夫にそれを指摘されて、顔を赤くした経験がある。
ある日、彼女が電話で日本人と日本語で話をしていて、「はい。では、よろしくお願いします」と言って電話を切った。すると、ニコニコしている夫と目が合い、「君は話をしているとき、何度も頭を下げていたから、見ていて面白かった。すっかり日本人になったね。おめでとう!」と祝福されてしまった。無意識の「エアーお辞儀」を見られて、彼女は少し恥ずかしかった。
知人のドイツ人も日本の大学に1年間留学していて、帰国後に恥ずかしい思いをした。
彼が日本に来たころ、違和感を感じたのが「相槌(あいずち)」だった。
この言葉は鍛冶屋での作業に由来する。刀を作る際、師匠がハンマー(槌)で打ち、弟子もそれに合わせてハンマーで打ち、「トンカン トンカン」とリズムよく作業を行うことから、相槌という言葉が生まれた。
もちろん、ドイツ人も会話をするときは、蝋人形のように無言で相手の顔を見つめることはなく、話を進めたり盛り上げたりするために相槌を打つ。違うのはそのタイミングだ。
彼が日本人の様子を見ていると、年齢性別に関係なく、学生も教授も店員も「うん」「うんうん」「はい」「ああ」「うーん」と相槌をよく打っていて、それがとても印象的だった。
ちなみに、丁寧に「はい」と相槌を打つのは、英語の「Hi」に聞こえて変な気持ちになったという。
彼は日本で働くことを考えていたから、留学中はできるだけ日本人と交流し、日本語スキルを高める努力をしていた。
1年後、そんな生活に別れを告げて彼はドイツへ帰国すると、自分が「日本人化」していることに気づいた。家族とドイツ語で話していると、頭を大きく下げながら、日本語で「うん」「うんうん」と相槌を打っていることを指摘され、「うける〜」と笑われた。
相槌がドイツ語に戻ってもタイミングが日本人的だったらしく、友だちには「オマエ、相槌が多すぎないか? 話を止められてなんか話しづらい」と文句を言われた。
ドイツに戻って2年以上が過ぎた今、彼はそんなころを懐かしく感じているが、戻りたいとは思わないらしい。

コメント
コメント一覧 (2件)
LDP=Liberal Democratic Party(自由民主党)なんですが、この政党名はズルイ。なぜって、日本の政治では自由民主主義に反対するのはまず不可能であり、本当にこんな反対をしたら国民から支持が得られません。他の野党は、自由主義かつ民主主義を標榜したくても、その政党名が使えないという訳です。
自民党が長く与党の地位を保てているのも、この政党名のおかげと言えなくもないのです。
まぁ、名前だけですし、自民党が大敗したり、政権を失ったこともあります。安泰ではありませんよ。