インドネシア人を日本の植物園に連れて行ったら、お世辞抜きで喜ばれた

5月の中ごろ、「浜名湖ガーデンパーク」のバラが見ごろを迎えていると聞いたので、インドネシア人のカップルを誘って、OKをもらった後に少し不安になった。
インドネシア人を植物園に連れて行くという選択は正しかったのか? 経験がかぶってしまって、楽しめないのではないのか?

内陸国のモンゴルに生まれて、今まで一度も海を見たことがないモンゴル人を中田島砂丘に連れて行けば、言葉を失うほど感動するかもしれない。
でも、鳥取市民を連れていけば、海には見慣れているし、砂丘は鳥取砂丘の下位互換になるから、かなりの高確率でガッカリされる。結果、「はっきり言ってここはショボいけど、自分を誘ってくれた気持ちはありがたい」ということになる予感しかない。
そんな失望と感謝が入り混じった気持ちが伝わると、こっちも気まずくなる。
日本人でも外国人でも、喜んでもらうには「レア感」が大切だ。

 

いかにも南国の雰囲気がするバリ島の村

 

10年以上前、バリ島から首都ジャカルタまで、インドネシアを3週間ほど旅行して、自然の豊かさに圧倒された。赤道の真下にあるインドネシアは、大部分が熱帯雨林気候で、1年を通じて25℃以上あり、Tシャツ&短パンで過ごせるから、衣替えなんて必要ない。
降水量も多いため、インドネシアは世界で3番目に多くの植物がある国と言われ、世界最大の花・ラフレシアをはじめ、たくさんの種類の花がある。
日本の冬のように寂しい風景が広がることはなく、1年中、豊かな緑と色とりどりの花を見ることができる。
泊まっていたホテルでは毎日、飾りの花が変えられていたし、街中では頭に花飾りをつけた女性が歩いていた。花の飾りをした(させられた)神像もあって、日本にはないトロピカル感を感じた。

「インドネシアは本当に自然が豊かで、人々は花と一緒に暮らしているんだな」という印象を受けたことを思い出すと、インドネシア人を日本の植物園に連れて行くのは、もしかしたら正しい選択ではなかったかもしれないと少し不安になる。

 

花飾りをしているインドネシアの少女

 

インドネシアに住んでいる日本人のブログ『散歩で出会ったインドネシアの花』には、こんなことが書かれている。

「朝の散歩と夕方の散歩で、色々な花に出会った。」
「散歩をするとずっと花に接している感じがする。」
「花の無い樹木が珍しいくらいに、至る所に花が咲いている。」

インドネシア人に花を見せるのは、経験が丸かぶりになるし、「浜名湖ガーデンパーク」は市内でトップレベルの植物公園でも、インドネシアの自然の上位互換にはなれない。それでも、自分から誘っておいて、今さらキャンセルするわけにもいかず、「浜名湖ガーデンパーク」に行くことになった。
園内を一緒に歩いていると、日本では5月がバラのシーズンで、これを逃すともうなかなか見ることができないと話すと、彼らはインドネシアでバラは一年中見ることができるとサラリと言う。やっぱり失敗だったのかなとテンションが下がる。

*AIで確認したところ、「Yes, certain rose varieties can bloom all year round in Indonesia」と、インドネシアでは一年中咲くバラの品種もあるということだから、全土でいつでも見られるわけではなさそう。

でも、全体的に見ると、彼らは園内を歩きながら「インドネシアにも似たような花がある。けど、こんな色は見たことない。珍しい」と言っていたりして、予想以上に「浜名湖ガーデンパーク」を楽しんでいた。彼らはあちこちで足を止めて写真を撮ったり、話をしたりしたから時間が押して、その後カフェで話す予定はキャンセルになった。

 

 

話を聞くと、彼らはインドネシアの大都市に住んでいて、実はあまり自然を感じる生活をしていなかった。もちろん、道端に花は咲いているし、花屋で花を買って家に飾ることもできる。でも、自然と接する機会は意外と少ない。
インドネシア政府は経済発展を重視して都市を設計したから、彼らが住んでいる都市にはビルが多く、人工的な空間が広がっている。山に行けば、自然に囲まれていろんな花を見ることができるけれど、2人は車を持っていなかったので、そんな機会はめったに無かった。

インドネシア人から見ると、日本人は基本的に何でも丁寧&綿密に仕事をするらしい。「浜名湖ガーデンパーク」でも来場者を飽きさせないように、各所で「映える」ように花が配置されていて、彼らは花や景色を楽しみ、日本人の発想に感心していた。
園内を歩いていて、「ここに連れてきてくれてありがとう!」と言うのを聞いて、このプランが成功したと確信した。

「ダメ押し」は、その日の夜に届いたこのメッセージだ。

「Thank you for the ride! It was fun and nice walk」
(車で連れて行ってくれてありがとう!楽しくて気持ちのいい散歩だった)

花や自然そのものは特別ではなくても、「日本人の配慮」という要素があれば、インドネシア人にはレアな体験になる。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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