2024年に日本にやって来た外国人旅行者の数は約3700万人で、過去最高を記録した。
あるドイツ人は日本を旅行している時に、電車や地下鉄の中で印象的な光景を見たとSNSに写真を投稿した。そこには、スーツを着た何人ものビジネスパーソンが、座席に座って目を閉じて眠っている様子が映っていた。
彼はそれを見て、「日本人はハードワーカーという話は、都市伝説ではなかった!」と確信。そんなネガティブな見方の一方で、安心して寝られるのは治安が良いからだと指摘していた。どちらもドイツにはないか、珍しいことらしい。
友人のドイツ人は日本の大学に半年ほど留学していて、今は母国で働いている。これから、彼との会話の内容を書いていこう。
ーー最近、日本に住んでいるアメリカ人と話をしていたら、「日本人は浮気(不倫)に厳しすぎないか?」と言われた。
たとえば、芸能人にスキャンダルが発覚すると、CMが削除される、億単位の違約金を請求される、テレビから姿を消される、過去作品が封印される、といったことが起こる。
最近、日本ではそんな出来事があったけど、ドイツで同じことが起きたら、どうなると思う?
ドイツだったら、そんな大ごとにはなる予感がしない。前に見た YouTubeの動画で、西洋人が「日本では有名人が浮気や不倫をすると、大きなダメージを負って、社会的に追放されることがある!」と興奮気味に話していたから、ヨーロッパ人は浮気に対して寛容な文化があるんだろうね。
ーーそれはなんで?
なんでって、他人のことだからじゃないの? 直接関係ない人が浮気をしても、自分には損も得もないから、「いろいろ大変だろうけど、まあガンバレ」とか思わない。
好きな芸能人が浮気や不倫をしても、最初からカトリック神父のような高い倫理観を芸能人に求めていないから、ショックを受ける人も少ないんじゃないかな?
それにしても、私にはちょっと不思議な感じがする。日本に住んでいた時、日本人は他人に関わりたくないという気持ちがとても強いように感じた。それなのに、他人の恋愛問題にはなんでそんなに強く反応するの?
ーーなんでだろう? 社会全体のモラルを守るために、個人に制裁を加えようとしているのかな? それよりも単純に、社会の頂点にいる人が転落する様子は「エンタメ」として面白いから、というゲスな理由のほうが大きい気がする。
日本は浮気が多くて、ドイツでは少ないというイメージがあった。でも、実際には数はあまり変わらず、日本ではすごく非難されるけど、ドイツは静かだから、そんな印象をもったかもしれない。
ーー日本人は叩きすぎると思う?
「すぎる」かどうかは基準による。間違いなく言えるのは、ドイツの価値観や文化を日本の社会に押し付けるのは間違いだということだね。
100年以上前、ヨーロッパ人は自分たちの考え方が絶対に正しいと信じて、他国を植民地にして現地の文化を壊していた。
ーーヨーロッパ中心主義のことかな。
残念ながら、今でもヨーロッパはアジアやアフリカよりも文明的だと思っている人がいる。私はそういう考え方が大っ嫌いなんだ。
ーー(100年ほど前というと、日本は西洋列強の側にいて、領土を広げていたころか。日本をリーダーとして、アジア経済圏をつくろうという大東亜共栄圏は日本中心主義の表れだったかも)
日本のことは日本人が決めたらいい。私には関係ない。前にイスラム圏の国で、夫が不倫した妻を殺したというニュースを見たことがある。そのレベルになったら、海外から抗議の声を上げる必要があるかもしれないけど、CMが無くなったとか、そんなことはどうでもいい。
ーーじゃ、君から見て、日本についてネガティブなイメージって何かある?
それは労働環境。これについては、客観的に見てドイツの方がいいと思う。いろんなメディアや動画でも言われているけど、日本の会社では休みを取りにくいし、労働時間も長い。社員は会社に尽くすことが求められる。ドイツでは、国が労働者の権利をしっかり守っているから、1ヶ月の休みを簡単に取れるし、労働時間も短い。
*ドイツの労働者の年間労働時間は、日本より約20%短いというデータがある。それなのに、世界のGDPランキングで、日本は3位をキープしていたが、2024年にドイツに抜かれ、4位に転落した。
ーー社会的に個人の権利が尊重されていることが、他人の浮気に口を出さないことにもつながっているような気がする。
そうかもしれない。とにかく、日本もドイツも世界的な経済大国で、モノづくりに強いという共通点がある。でも、仕事の仕方はかなり違う。日本はもっと生産性の向上に力を入れるべきだと思う。
ーー確かに。労働環境については、むしろヨーロッパの価値観を日本に押し付けてほしい。
コメント
コメント一覧 (2件)
> 「日本人は浮気(不倫)に厳しすぎないか?」
ああ、これはおそらく、日本人が、戦前からの儒教的価値観を(自分ではそれと気づかず未だに)引きずっているからだと思います。つまり「一国の君主にとって、女色に溺れ国を亡ぼすことが最も重い罪である」とする考え方です。殷の紂王が滅びたのも美女が原因、唐の玄宗皇帝の寵姫であった楊貴妃も「傾国の美女」と言われ、平安時代に中国から日本へやって来た妖怪「九尾の狐」は「玉藻の前」という絶世の美女でしたが、安倍晴明に打倒されました。「男尊女卑」なんて考えも結局はその辺の考え方が元になっています。
そのことを最もよく端的に表している単語が「傾城(けいせい)」、つまり君主が溺れて国を傾けるほどの美女という意味です。漢書に曰く、「一顧傾人城 再顧傾人国(一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾ける)」だとか。この「傾城」という単語は日本へ伝わってから、単なるトップクラスの遊女(花魁)を意味する単語に変化しました。「傾城に誠なし」だの、「傾城の恋はまことの恋ならで金持て来いがほんの恋なり」などという歌も伝わっています。
儒教の影響は間違いなくあるでしょうね。