中国社会にはこびる腐敗 古代の紂王から現代の学校給食まで

3000年以上前、中国の殷(いん)を支配していた紂王(ちゅうおう)は、とても傲慢&残酷な王として有名だ。
紂王はまともに政治をせず、妲己(だっき)という女性を寵愛し、大量の肉を吊るしたり、プールのように酒を溜めたりして、好きなだけごちそうを食べたり飲んだりしていた。これによって「酒池肉林」というパワーワードが生まれ、21世紀の日本でも使われている。
『仮面ライダーカブト』に出てくる天道総司が言った「世界は自分を中心に回っている。そう思った方が楽しい」を最悪の形で実現したのが殷の紂王だった。

しかし、天道総司は「まずい飯屋と悪の栄えたためしはない」とも言った。
紂王とその周囲の人間のゴージャスライフが、多くの民衆の犠牲の上に成り立っていたことは言うまでもない。巨悪の最後はあっけなかった。武王の軍に攻められると、紂王は自殺して地上から姿を消した。
現代の中国や日本では、紂王は暴君の代名詞、妲己は悪女の代名詞となっている。

 

紂王さまのご尊顔

 

最近、中国でそんな出来事の3000分の1くらいの小悪が発覚した。
朝鮮日報の記事(2025/05/29)

教職員は肉のおかず、生徒はラー油だけ…「格差給食」が物議 /中国・四川省

麻婆豆腐を生んだ四川省にある中学校で「事件」は起こった。昼食時、先生たちはお肉たっぷりのおかずを楽しんでいたのに対して、生徒たちはラー油がかけられただけのご飯を食べていたのだ。
このラー油は「老干媽(ラオガンマー)」という、麻婆豆腐にも使われるコスパのいいラー油。中国メディアが「言葉では言い表せないほどひどい給食」と書いたほどだから、相当ヒドイものだったのだろう。
さらに、生徒の保護者は1食あたり10元(約200円)を払っていたのに、先生たちは約160円しか払っていなかったというオチまであった。

地元当局が調べた結果、「事件」の規模はさらに広がる。
この学校の給食に関わる職員が、食材納品業者から賄賂を受け取ったり、給食費を横領したりしていたことがわかった。
中国全体で見れば、これはタイタニック号を沈めた氷山の一角にすぎない。2023年には全国の小中学校で約3万8000件の給食に関する不正が報告され、約2万3000人が懲戒処分を受けたという。
これは明るみに出た部分だけだから、「学校給食の闇」はもっともっと深い。「自分に溺れる者はいずれ闇に落ちる」という天道総司の言葉は中国でも知られていい。

習近平主席は「トラもハエもたたく」と腐敗撲滅を宣言した。さすがに、「酒池肉林」という言葉を生み出した紂王レベルの大きな悪は無くなったと思う。しかし、今の中国社会には、ハエからトラまで、退治すべき不正はまだまだはこびっているようだ。
紂王が妲己に溺れたように、校長が給食費を愛人に貢いでいなかった点では、殷時代よりも少し進化していると言えるか。

 

 

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