今年はきょう１０月６日が月見の日なので、これから日本と中国の月見に関して、重要な２つのことについて書いていこう。
結論から言うと日本は団子と感謝、中国は月餅と思念だ。
日本の月見
日本で月を見る習慣は縄文時代にあったという説もあるが、現代の月見の文化は平安時代に中国から伝わった風習が直接のルーツになっている。
しかし、鯉のぼりやラーメンにしても、日本人は中国から伝わった文化に独自の変化を加え、独自の文化に昇華してきた。月見もそんな魔改造のひとつ。
日本に住んでいる知人の中国人の話では、満月を模したといわれる日本の「月見団子」が中国の月見には無い。そもそも彼は「団子」という漢字を見ても、意味がわからなかった。
さらに、中国の月見は「十五夜の月（中秋の名月）」だけだが、日本では「十三夜」も月見の日になっている（月見）。
現代の中国で月見は「中秋節」と呼ばれ、ことしは日本と同じ１０月６日にその日を迎える。彼にとっては、これは意外な事実だった。
中国では、春節（正月）や清明節などの伝統行事は旧暦に基づいて行われるのに対し、日本では、正月や七夕などの伝統行事は新暦に基づいて行われている。だから、彼は日本の月見も新暦の日に行うものだと思っていた。しかし、理由は分からないが、月見に関しては日本も旧暦に基づき、中国と同じ日にすることになっている。
それと彼が不思議に感じたのは、日本では月見の日が休日になっていないこと。中国では清明節や端午節、中秋節など伝統行事をおこなう日は祝日になっているから、日本でも月見の日は休みかと思ったけどそうじゃない。
海外から見た日本の月見
日本の月見の伝統は、海外でどれほど知られているのだろうか？
英語版ウィキペディアを見ると、月見は中国の中秋節とは別に、日本文化の一部として独立したページが作られている。そのページでは、日本の月見にはススキで飾り付けをしたり、月見団子を食べたりすることが含まれていると説明されており、日本独自の月見の風習が紹介されている。
Tsukimi traditions include displaying decorations made from Japanese pampas grass (susuki) and eating rice dumplings called Tsukimi dango in order to celebrate the beauty of the Moon.
日本の月見は美しい秋の月を鑑賞したり、団子を供えて豊かな収穫に月に感謝したりするという２つの意義がある。
中国文化の月見
日本の月見では団子を食べるように、中国の中秋節（月見）では月餅（げっぺい、ユエピン）というお菓子を食べることがお約束。月餅の真ん丸な形は満月を象徴していたり、家族の絆を意味したりする。
月見に月餅を食べる習慣は唐王朝（618～907年）の時代にはじまったので、千年以上の歴史がある。伝統的な月餅の中身はあんこで、今ではナッツやチョコレートなど、さまざまなバリエーションがある。
現代の中国では中秋節になると、月餅を家族や友人、お世話になった人にプレゼントする習慣がある。月餅は自分で食べるのではなく、誰かにプレゼントすることが多い。しかし、月餅は高カロリーだから、先ほどの中国人はあまりうれしくないと言う。彼が大学生のころ、教授の仕事を手伝ったら、お礼として月餅を箱ごともらって、正直ウンザリしたらしい。
平安時代の末期、動乱の時代を生きた歌人で僧侶の西行がこんな句を詠んだ。
「何事も 変わりのみ行く 世の中に 同じ影にて すめる月かな」
世間ではすべてが移り変わっているのに、昔と同じように光り輝く月を見て、西行は人の世の諸行無常を感じたらしい。月の光は時代も場所も超越している。
彼にとって月見で大切な考え方は、「思念（思い、考えること）」という言葉で表せる。月見の日、家族が一緒にいればみんなで月を見て月餅を食べ、家族と遠く離れていたら、月を見上げて家族のことを思う。お互いに同じ月を見て、相手を考えることで、物理的な距離を超えて心で家族とつながることができる。つまり、『妖怪ウォッチ』風に言うなら、「ぼくらは同じ空を見上げている」という状態だ。
中国文化では「孝」の考え方がとても重要で、一族のきずなは強い。そのため、中秋節はとても大切な行事だという。
おまけ
数年前、中国がコロナ禍にあった時、日本は物資を送って支援した。その際、日本から届けられた支援物資の段ボールに、次の漢詩のメッセージが添えられていた。
「山川異域 風月同天」
（住んでいる場所は違っても、風や月は同じで、ひとつの空の下でつながっている）
このメッセージに対して、中国外交部の華報道官は日本に感謝の気持ちを伝えた。こんなことは異例だ。
中国人の考え方として、遠く離れていても、同じ空の下でつながっているというフレーズは心に刺さるらしい。
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