日本とインドネシアには、国として「負の共通点」がある。
先日の17日、インドネシア東部で火山が「ドッカーン!」と噴火して、多くの飛行機が欠航になった。この事態を受けて、日本では気象庁が「日本への津波の影響はない」と発表した。
日本火山学会によると、活火山の数が多い国は、アメリカ(174)、ロシア(156)、インドネシア(139)、日本(123)の順(火山についてのQ&A)。世界的に見ても、日本とインドネシアは国の広さに対して火山がとても多い。
インドネシアでは2004年、スマトラ島沖地震で大津波が発生し、10万人以上が亡くなった。東日本大震災を経験した日本にとっても、他人事ではない。
日本とインドネシアは、火山の噴火、地震、津波などの自然災害がとても多く、人々はいつもそのリスクをかかえて生きているという点でまったく同じだ。
今回は、そんなインドネシアからやってきて、日本で働いている(または働いていた)4人のインドネシア人から聞いた、日本の社会との違いについて書いていこう。
ネタバレすると、個人的に「東南アジアの人たちは、モノはなくても日本人よりも心は豊か」というイメージがやや崩れた。
ーーふだんは日本に住んでいて、ときどきインドネシアに帰るという生活をしていると。2つの国を比べて、あらためて感じるインドネシアの良さって何かある?
「インドネシアは経済成長が続いていて、国全体がエネルギッシュで、どんどん豊かになっていることです。」
「同じく。久しぶりに地元に帰ると、古い建物のかわりに新しいビルが建っていたり、道路が広くなっていたりして、街のようすがすごく変わってます。」
「よく知っている都市なのに、記憶と違うから道に迷いそうになりますw」
ーーず〜っと経済が停滞していた日本とは反対で、うらやましいこと山のごとし。
10年ほど前に日本に住んでいたインドネシア人が数年ぶりに日本へ来て、「街が変わってなくてビックリしました! 記憶と同じなので、懐かしさがよみがえってきました」と反対のことを言っていた。あのときほど、「失われた30年」という言葉を実感したことはなかった。
で、インドネシアの経済が成長している理由は何だと思う?
「人口が多くて、労働者も消費者もたくさんいることが、一番の理由だと思います。」
ーーそれも、日本とは反対だ。日本は少子高齢化が進んでいて、働く人が減って、お年寄りが増えている。そうなると、年金や医療費などの負担が国民にのしかかってくる。それが、日本経済が伸びない原因のひとつになっている。
ーーじゃあ、今のインドネシア社会がかかえている問題は何だと思う?
「一番の問題は、経済格差がすごく大きいことですね。金持ちの家に生まれるか、貧しい家に生まれるかで、人生が大きく変わります。」
「変わるというより、“決まる”と言ったほうが正確じゃないかな。」
「そうなると、社会の中で階級が固定化していきます。残念ながら、インドネシア社会はその方向へ進んでいるようです。」
ーーインドネシアの金持ちは、まわりから反感を持たれないように気をつけたりしない? 日本には「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があって、お金のある政治家や有名人が親しみを持たれるように、「庶民派」をアピールすることがよくある。
「日本人と比べると、そういうことはあまりないですね。インドネシアの金持ちは自信を持って、堂々とアピールします。」
「日本の社会では『空気を読む』能力がすごく大事にされていて、みんなまわりからどう見られているかを気にします。でもインドネシアの社会では、そういう雰囲気があまりありません。お金持ちは、むしろ自分をどんどん見せびらかします。」
「経済は成長して、国全体は豊かになっています。でも、上位10%以内の人たちが、その“おいしい部分”をほとんど吸い取ってしまいます。その結果、金持ちは大金持ちになって、生活に苦しむ人は増えています。」
ーー話を聞いていて、日本に住んでいたアメリカ人女性の話を思い出した。
彼女の経験によると、アメリカでは住んでいる場所でその人の収入が見えてくる。金持ちが多い地区は建物も道もきれい。でも、貧しい人が多い地区では、路上にゴミがたくさん落ちていて、変なにおいもする。警察に連絡しても、金持ちの地域にはすぐに警官が駆けつけるけど、貧しい地域は後回しにされたり、来てくれないこともある。
でも日本では、どこもだいたい同じように見えるから、都市の中で、金持ちや貧しい人が住んでいるエリアが分からないらしい。
「インドネシアも同じですね。街を見れば、そこに住む人たちのステータスが分かります。」
「都市と田舎の格差もすごく大きくて、大都市と農村ではまったく別の世界です。農村は無視されたり後回しにされたりして、道や水道、電気などがちゃんと整っていません。今も不便な生活をしている人が多いです。」
「日本では、農村でも道が舗装されていて、車で走りやすいし、インフラもしっかり整っています。コンビニやスーパーも生活圏にあって、恵まれているな〜と思いました。」
「私の印象では、日本は国全体が豊かです。インドネシアは全体的に貧しくて、所々すごく豊かな部分があって、そのギャップが大きいです。田舎では仕事がないから、若い人たちは都会に行きます。でも就職はむずかしくて、生活のために犯罪に走る人も少なくないです。」
ーーどの国でも、格差が広がると治安が悪くなるけど、今のインドネシアではその問題が特に深刻だと。
「もともとインドネシアでは、お金持ちが偉そうにして、貧しい人を見下すようなところがありました。格差が広がったことで、そういう風潮がもっと強くなっている気がして、イヤな感じです。」
「日本は、貧富の差が小さくて中間層が多いから、みんなが平等だという空気があります。お互いをリスペクトしている感じがして、日本人は心も豊かだと思います。」
「私も同感です。インドネシア人も、そういう価値観を大事にしないといけないと思います。日本に住んでいると、インドネシア社会の『金持ちはえらい』『貧しい人は価値が低い』という見方がすごく気になります。」
ーー東南アジアではモノはなくても、人々の目がキラキラしていて豊かな心がある。一方、日本は物質的には豊かでも、心は貧しい。経済大国になったが、大切なものを失ってしまった…。
日本では発展途上国にそんなイメージがあって、返す刀で日本をディスる話を何度も聞いたことがある。
でも、今回聞いた話は逆だね。インドネシア人は日本人の豊かな心に学ばないといけない、という見方は意外で、新鮮だった。それも、インドネシアが経済的に成功してきた証かな。
コメント
コメント一覧 (1件)
> ーー東南アジアではモノはなくても、人々の目がキラキラしていて豊かな心がある。一方、日本は物質的には豊かでも、心は貧しい。経済大国になったが、大切なものを失ってしまった…。
「衣食足りて礼節を知る」って知りませんか? 逆に言うと、「衣食も足りなきゃ礼節は知りようがない」ってことです。日本人が「(経済成長が)失われた30年」の間に達成したのは、他の先進国と違って、そういう点だと思いますがね。