「日本はアジアの国だな」とイギリス人が実感した3つの要素

前に読んだ本に日米の夏の違いについて、こんなことが書いてあった。

ある日、日本の映像会社にアメリカの会社から、「日本の夏の映像を送ってほしい」というオファーがあった。で、その会社が夏の風景を撮って編集した映像を送ったところ、アメリカ側から、「変な音が入っていた。それを取り除いてほしい」と怒り気味にクレームがきた。
「何だろう?」と思って日本のスタッフが確認すると、その正体はセミの鳴き声だった。
アメリカ側のスタッフは、誰もセミの声を聞いたことがなかったから、それを機械のノイズと思ったというオチ。
海外には、日本の夏の風物詩がただの雑音に聞こえる人もいる。

7月の上旬、「X」のトレンドに「セミの声」が上がった。暑くなったのに、ことしはセミの声が聞こえてこないという人が全国にいて、その違和感がトレンドワードになったのだ。ことしは急に暑くなったから、羽化(成虫になること)できなかったセミの幼虫が多かったことが、その現象の背景にあると考えられる。

このニュースにネット民の感想は?

・北海道でしかセミが見れない時代がくる
・庶民は電気代高騰で別な意味で泣いています。
・蚊も少ない気がする
・すでに死んでるやつは何匹か見た
・先月フライングしたセミが一匹だけ鳴いてて何かせつなかった

では、今回は日本に約10年住んでいるイギリス人女性から聞いた話を紹介しよう。

 

ーーもう1年の半分が過ぎて7月になった。夏が本気を出して襲いかかってきたけど、最近はどんな感じ?

そうね。7月ごろになると、日本の太陽には「死んでほしい」じゃなくて、「シね」って思うわね。希望じゃなくて、これは命令。だって、日本の夏は気温と湿度が高くてとても不快だし、暑さに慣れていない私はすごく体力を奪われるのよ。

ーーそれはゲームで言うなら、いつも「エナジードレイン」の攻撃を受けているようなもの!

それだけじゃないの。私は日本人じゃなくて、白い肌をしているから、日差しの強い日に日焼け止めを忘れると、肌がすごく赤くなる。ヤケドみたいな状態になって、とても痛いのよ。

ーー意識したことなかったけど、日本人の肌の色は日本の風土に合っているのか。ネットを見ると、ロンドンの8月の平均気温は約19℃から22℃ぐらいって書いてある。

ーー意識したことなかったけど、日本人の肌の色は日本の風土に合っているのか。ネット見ると、ロンドンの8月の平均気温は約19℃から22℃ぐらいと書いてある。

なんでそれを言っちゃうかな。私はこの時期になると、涼しくて過ごしやすいイギリスに帰りたくなるから、その気持ちをグッとこらえているというのに。イギリスには、家族といっしょに祝いたいから、クリスマスシーズンに帰国してるの。夏に帰ってもつまらないし。

ーー暑苦しい時期は日本にいて、寒さの厳しい時期にイギリスにいるというのは、最悪のタイミングで最悪の選択をしているように見える。オーストラリアみたいに季節が逆転して、サンタクロースがサーフィンをしている国だったらよかったのに。

それがそうでもないのよ。イギリスの我が家はセントラルヒーティングだから、家にいる時は日本よりずっとあったかくて、快適に過ごすことができる。それに、最近はヨーロッパの天気も順調に狂っていて、とんでもなく暑い日もあるって聞いたから、もうすぐ地球上で私が住める場所が無くなりそう。

 

日本の空港で配られていたカード。外国人にとって、日本の夏は本当に危険。もちろん地域差があって、台湾人はそうでもない。

 

ーーでも、冷涼な気候のイギリスには「ゴキブリはいない」という、全日本人がうらやましがるような話を聞いた。

そうなの? 私は何度か見たことがあるけれど。でも、日本に比べたら数は少ないし、サイズも小さい。日本のGは本当に怖いし、気持ちが悪いわね。

ーーことしの日本の夏は異常に暑いと、毎年聞いている気がするけれど、知り合いのドイツ人は日本に来て、初めてセミの鳴き声を聞いたと言っていた。ドイツ全土にセミがいないかどうかは置いといて、彼は見たことも聞いたこともなかったらしい。

それは私も同じ。イギリスでは、グラスホッパー(バッタ)の声なら聞こえてくることがあっても、セミの鳴き声はなかった。

ーーヨーロッパにも地域差があって、南部にはセミがいるけれど、北部に行くといなくなるらしい。
イソップ寓話の『アリとキリギリス』は、原本は『アリとセミ』なんだってね。(The Ant and the Grasshopper
イソップが住んでいたギリシャはヨーロッパの南部にあって、わりと暖かくてセミが身近にいた。でも、北部にいる人はセミを知らないから、それをキリギリスやバッタに置き換えた。日本で知られているのはそのバージョン。

そうなの? あの話に出てくる遊び好きで怠け者で、最後に「ザマァ」ってなるやつは、もともとはセミだったの?

ーーそう。スペイン人は『アリとセミ』で知っていたから、逆に「日本では“アリとキリギリス”になってる!」と驚いていた。
話を聞いていると、四季はイギリスにもあるけれど、特に夏が日本とは違うみたいだ。

そうなのよ。殺人的な蒸し暑さに加えて、強烈な日差しを浴びたり、いろいろな種類の虫を見たりすると、「日本はアジアの国なんだな」って実感する。

ーー最近、日本の夏はどんどん暑くなって、セミの声が聞こえなくなっている。このままだと逆の意味で、イギリスみたいに静かな夏になりそう。

 

1960年代、アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが、殺虫剤や農薬などを大量に使用し続けると、春になっても鳥が鳴かなくなり、生き物が出す音が無くなったりする暗い未来を想定し、『沈黙の春』という作品を書いて世界中に警告した。
いつか日本の子供が日本の夏の映像を見て、「お母さん、この変な音はなに?」と聞く未来が来ないことを願う。

 

 

日本 「目次」

ヨーロッパ 「目次」

今も昔も外国人が感心する、日本人の「ゆずり合い精神」

イギリス人から見た日本 時間感覚と鉄道が“逆転”している

【東西のウナギ】イギリス人・日本人が互いに驚いたワケ

イギリス人が見た日本 ロンドンと東京の違い&その理由

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメントする

目次