【日本の現状】外国の旗を侮辱するのは違法でも、日の丸ならセーフ

7月20日に参議院選挙が行われ、自民党は惨敗し、いま大混乱に陥っている。
その前日、選挙戦最終日の19日にある“事件”がおこった。
参政党の神谷代表が大勢の聴衆に向かって最後の演説をしていた時、「日本人ファースト」に反対する人たちが抗議活動をおこなった。その際、彼らが大きな日の丸に黒い「✕」をつけた旗を振っていたため、批判が殺到した。
ここで『ヤフコメ』の反応を紹介しよう。

「日の丸を平気で汚すことができる人達が今の日本には多くおり、この人達が生きやすい日本に作り変えられようとしている」というコメントには2・9万人が「共感した」のボタンを押し、「うーん」は1057人だけ。
「一人の国民としての品格を忘れずに行動したいものです」に「共感した」は1・3万で、「うーん」は592。
「日本国の公式な国旗である日の丸にバッテンは、いくらなんでもマズい」に「共感した」が1・2万で、「うーん」はわずか487。

日本の国旗を侮辱する行為には、ほとんど全ての人がドン引きし、冷たい目で見ている。
ちなみに、神谷代表は演説を終えた後、「アンチの皆さんも気をつけて帰ってくださいね」とにこやかに声をかけていたから、あまり気にしていなかったようだ。
それにしても、ここが日本で彼らは本当によかった。

 

前回、インドの国旗についての記事を書いた。

インド国旗を深掘り 3色やチャクラの意味、禁止されている侮辱行為

インド人たちは愛国心が強く、国家の尊厳を大切にしていることは知っていた。でも、この記事を書いていて、インド国旗を侮辱すると違法行為になり、罰せられることを初めて知った。国旗を傷つけたり破壊したりすると、最長3年の懲役か罰金、またはその両方が科せられる。
国旗には文字を記してはいけないと法律で定められているから、「✕」をつければ一発アウトで、警察に逮捕されることになる。この場合は「民衆のリンチから救出される」と言ったほうが正確かもしれない。

国旗はその国の名誉や尊厳を表すものだから、世界ではどこでも敬意を持って丁寧に扱うことが常識とされている。しかし、自国の旗を切ったり、燃やしたりする行為が法に触れるかどうかは、国によって異なる。
英語版ウィキペディアの「Flag desecration」(国旗の冒涜)を見てみると、オーストラリア、アメリカ、日本、南アフリカなどでは合法、つまり、国旗を傷つけても法的には責任を問われないことになっている。一方で、ドイツ、フランス、タイなどでは違法で、懲役や罰金が科せられる。
日本の周辺では、中国、韓国、台湾、ベトナム、フィリピンでは違法とされていて、日本だけ浮いている。

※細かい条件は国によって違うので、詳細はリンク先で確認してほしい。

 

ただし、日本には「外国国章損壊罪」があり、外国の旗を侮辱すると違法行為となるが、日の丸にはそのような法律はない。つまり、日本の国旗なら切っても燃やしても、法的には「問題なし」ということだ。

1987年、沖縄で国民体育大会が開催されたとき、掲揚された日の丸を引き降ろして燃やす事件が起きた。この時、犯人は建造物侵入罪や器物損壊罪で罪に問われたが、国旗を侮辱したことについてはスルーされた(沖縄国体日の丸焼却事件)。
2021年、自民党で「日本国を侮辱する目的で国旗を損壊・除去・汚損した人は、2年以下の懲役か20万円以下の罰金を科す」という内容の「国旗損壊罪」を成立させようとしたが、表現の自由などを理由に反対があり、結局不成立に終わった。
そのため、日本では日の丸を侮辱するために切ったり燃やしたりしても、法的には「OK」となる。(外国国章損壊罪

 

先日の参院選は参政党の大勝利に終わった。
「アンチ」がバツをつけた日の丸を振って抗議活動をするのを見て、「参政党は日の丸を汚す勢力の敵なのか」と思い、それが投票基準のひとつになった人は多かっただろう。
参政党を抜きにして、日の丸を侮辱する行為に拍手を送る人は例外で、嫌悪を感じる人が圧倒的に多いはず。
あの光景は異常で、結果的には参政党のアシストになったから、「これは参政党の支持者がやったのでは?」と自演を疑う人もいた。

外国の旗を侮辱する行為は違法でも、日の丸ならセーフ。
自国の旗を傷つける行為を法律で禁止せず、「野放し」にすることで、結果的に国民の愛国心が高まることにつながる。これは、見えない誰かの戦略かもしれない。
「表現の自由」を尊重して法案成立に反対した人たちにとって、数年後、それが「バッテン日の丸」を生み出し、「日本人ファースト」の追い風になったというのは悪夢に違いない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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