アメリカに行って、驚かない日本人はいない。
SNSを見ていたら、高校生のころアメリカに短期留学した日本人が、現地の高校ではガムをかみながら授業を受けてもいいと知って、衝撃を受けたという投稿があった。
「まじか!」と思って調べてみると、「Gum Chewing In School Is Good For The Brain」というサイトがあって、こんなことが書かれていた。
「教室でガムをかむことは、ストレスの軽減や集中力の向上、不安の緩和、記憶力のアップに効果があるため、人気を集めている。」
でも、反対意見もあって、授業中にガムをかむことを禁止する先生もいる。日本だと、教師に対する「侮辱行為」と見なされて、昭和ならビンタが飛んできただろうし、校則がゆるくなった今の学校でも「集中力が高まるからOK」なんて理屈が通用するとは思えない。先生の血圧が上がって、授業に支障がでてしまう。
さて、知り合いにニューヨーク出身のアメリカ人女性がいて、彼女は日本の小中学校で英語を教えた経験があり、今はアメリカに戻って学校関連の仕事をしている。今回は彼女から聞いた、日本人とアメリカ人の考え方の違いについて書いていこう。

大リーグでは選手がガムをかむことは問題にされない。日本では10年ほど前、巨人やソフトバンクで「ガム禁止令」がでた。あの行為をマナー違反と感じる人は多い。
ーー最近、30代のメキシコ人男性と会って話をしていたら、日本で運転免許証を取ることのむずかしさを力説された。彼は何度も落とされから免許センターを呪って、やっと合格したときには涙を流したんだって。
そうなんだ。感動に水を差すようで悪いんだけど、それには2つの理由が考えられるよね。日本の基準が厳しかったのか、それとも彼の考え方が甘々だったのか。
ーー後者だろうね。ネットで調べたら、世界で一番簡単に免許を取れる国はメキシコだという情報があった。書類を出して手数料を払うだけで、筆記と実技の試験を受けなくてもいいらしい(一部の州を除く)。
日本の基準だと、これは自動車学校に入る手続きだ。
信じられないくらい簡単だね。日本のスタートラインがメキシコではゴールになっているんだ。
ーーアメリカはどう? 運転免許を取るのは大変?
メキシコ以上、日本未満ってところ。
私の場合、まずペーパーテストに合格して「許可証(Learner’s Permit)」を手に入れた。それがあれば、運転経験がある人に教えてもらえるから、母を助手席に乗せて、家の近くを走りながら運転の仕方を覚えたの。
ーー自動車学校に行かないで、いきなり路上デビューするんだ。日本だと、仮免許の状態からスタートするようなものだから、チート行為にもほどがある。しかも、何のライセンスも持っていない家族を指導教官にするなんて。
州によって違うけど、私の知ってる限り、アメリカには日本のような教習所はないから、根本的に発想が違う。私は何回か街を走って「これはイケる」という手応えをつかんだから、実技試験を受けることにした。練習していた母の車でね。それにパスして、免許証をゲットできたってわけ。
ーーたしかにメキシコよりはハードルが高いけど、日本基準だとヌルゲーだな。家の車で試験を受けるとか、マンガのシーンみたいだ。
日本に住んでいた時、友だちのアメリカ人が免許を取ったんだけど、彼の感想は「すごく難しい」じゃなくて、「無駄に難しい」だった。
ーー無駄?
「ハイドロプレーニング現象」や「フェード現象」みたいな、免許を取ったらすぐに忘れるような用語を覚えるとか、「赤信号では止まらないといけない→✕」みたいなひっかけ問題とか?
それとも、猫を追い出すために車体を叩くことかな? インド人の知人は日本の自動車学校でこの「猫バンバン」を知って気に入って、インドの家族にも教えてあげたって言ってたけど。
※救急車など緊急車両は必ずしも止まる必要はない。
それもあるかもしれないけど、そのアメリカ人が言ったのはまったく別のことだった。
彼はアメリカで何年も車を運転していて、実際に何が必要かは分かっていた。だから、実技試験に合格するために必要なことを学んでいると、「いや、これはいらないだろ?」とか「その技術は運転してから身につければいいだろ!」と、ツッコみたくなることが多かったんだって。
ーーアメリカの試験は分からないけど、日本では細かいところまでチェックされるからね。
無駄が多いことのほかにも、日本人がそれを受け入れて素直に従っていることにも、彼は違和感を感じたんだって。もし反対意見がたくさんあれば、システムや内容は変わるはずだよね? だから、それらは日本人の常識や考え方に反していないことになる。
彼はそんな疑問を口にした後、すぐに「それが日本人なんだよな」って自分で答えを出して納得していた。
ーー日本では免許を取った後に、ドライバーが事故を起こさないことを重視しているから、免許を取るまでを厳しくしている、 という話を聞いたことがある。
日米では、大切にするポイントがきっと違うよね。
アメリカ人は役割分担をはっきり考える。受験者が最低限の知識と技能を持っていることを確認して、免許を与えることが警察官の仕事で、それ以外のことは関係ない。もし事故を起こしたら、それは完全にドライバーの責任になる。
ーーそれは日本も基本的に同じだけど、アメリカの社会は個人主義で、自由と責任がすごく強調されていると思う。落ちたら死ぬような崖に、「どこまで進むかは自己責任で」みたいな文が書いてあったのを見て、日本との違いを感じた。
日本の学校も、役割があいまいに感じた。日本では、夏休みでも子供に宿題を出したり、日記を書かせたりする。アメリカだと、夏休みに子供に何をさせるかは親が責任をもって考えてることで、学校は家庭に関与しない。
日本みたいに教師の立場は強くないから、宿題なんて出したら、「休みの過ごし方に学校が口を出すな!」って怒る親もいるだろうね。
ーーアメリカにはたくさんの人種や宗教があって、「正しい」がいろいろあると聞いたことがある。親に「学校より教会を信じる」って言われたら、先生はお手上げだろうね。
内容によるけど、めんどくさいことになると思う。だから、「学校がすることはここまで」って、境界をはっきりさせることが重要なのよ。
ーーネットで見たら、日本の実技試験では「態度やマナー」も評価されるって書いてあった。アメリカでは、たとえばガムをかみながら、実技試験を受けることはできる?
それは大丈夫でしょ。本人の自由で問題ないと思う。
日本では「教える人」の立場が高いよね。だから、敬意が必要になって、日本語は敬語が発達した。アメリカでは平等が重視されていて、生徒と教師の関係はとても近い。
ーーつまり、日本では「上」の立場にいる人が、社会や相手のことを広く考えるから、境があいまいになって細かく指示を出す。言い換えれば管理社会だ。それと、これは儒教の影響だと思うけど、日本人は権威に弱く、それに従いやすい。
それに対して、アメリカ社会は平等が重視されているから、対人関係でもカジュアルな言動が認められる。
全体的にはそうだね。
ーー知人のアメリカ人が大学を卒業して、会社で働きはじめたとき、50代の上司に肩書や敬称を付けずに、ニックネームで呼んでいたと聞いてビックリした。日本じゃありえないよ。朝、20代の新人が石破茂部長に向かって、「おはよう、ゲル」ってあいさつしたら大問題になる。
そこは日本と違うよね〜。

コメント