8月の6日と9日は1945年に原爆が投下され、15日は天皇が国民に降伏を伝えた日だから、この月になると、マスコミは戦争や平和に関する報道を集中的にするようになる。
この傾向は毎年同じでマンネリ化しているので、皮肉や批判的な意味を込めて、「8月ジャーナリズム」と呼ばれることもある。
それでも日本人にとって8月は重要で、くり返し戦争と平和について考える必要がある。
ことしの8月15日、天皇陛下は政府主催の全国戦没者追悼式に参列され、次のように述べられた。
「再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」
先の大戦の戦没者を追悼し、平和を祈る日だから、政府広報は事前に「正午から1分間の黙とうをお願いします」と呼びかけた。
日本では列島が「お通夜」のようになり、厳粛な気持ちになる一方で、8月15日に喜びを爆発させる国民もいる。
Here are more glimpses from the Red Fort.
May India keep scaling new heights of progress! pic.twitter.com/Je8S7qi7QN
— Narendra Modi (@narendramodi) August 15, 2025
8月15日、モディ首相はインド独立を祝う投稿した。
・Happy Independence Day! 🇮🇳
We must protect the freedom and democracy that our freedom fighters fought so hard for! Jai Hind!
・HAPPY INDEPENDENCE DAY 🙏🏻
जय हिन्द ! जय भारत !
🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳🇮🇳
・Happy independence Baaharat
・Wishing everyone a Happy 79th Independence Day.
Jai Hind 🇮🇳
1947年8月15日、インドはイギリスから正式に独立し、インドの初代首相ネルーは演説で、14日から15日にかわる瞬間について「真夜中の鐘が鳴る時、世界が眠りにつく時、インドは生命と自由に目覚める」と述べた。
だから、インド国民にとって、この日はもっとも大切な日になっている、わけでもない。
インド人に「いちばん重要な日」をたずねると、ヒンドゥー教徒は「ディワリ」、イスラム教徒は「イード」、キリスト教徒は「クリスマス」というように、宗教ごとに違う答えが返ってくることが多い。
しかし、すべての国民にとって、独立記念日は平等で祝福すべき日になっている。インドにとって8月15日は、政治的にはもっとも重要な日と言っていいだろう。
だから、SNSでは「独立記念日おめでとう!」とお祝いの言葉が花火のように次々とあがっている。
「Jai Hind」(ジャイ・ヒンド)とはインドの言葉で、「インド万歳」や「インドの勝利」を意味する挨拶やスローガンだ。
イギリスに対する独立運動の中で、インド人がこのフレーズを使いはじめ、チャンドラ・ボース率いるインド国民軍の公式スローガンとなった。
ボースは日本軍とともにイギリスと戦った人物で、現代のインドでは国民的英雄になっている。
8月15日、心から追悼の意を表す日本と、高らかに「勝利」を叫ぶインドは本当に対照的だ。しかし、これは「たまたま日が重なった」ということではない。日本が降伏した日とインドが独立した日はじつはリンクしている。
この2つを結びつけるキーワードは「ルイス・マウントバッテン」だ。

インドの英雄、チャンドラ・ボース

1922年に来日し、人力車夫のコスプレをする英国王エドワード8世(中央)とマウントバッテン。
マウントバッテン(以下、バッテン)はイギリス軍の軍人で、太平洋戦争時には、東南アジア地域連合軍の総司令官として、ビルマの戦いで日本軍と戦った。
日本軍が撤退すると、彼はインド総督に就任。そのころのイギリスは「満身創痍」だった。
大英帝国の繁栄を支えていたマレーやシンガポール、ビルマなどの植民地は日本に占領され、本国はドイツ軍との激しい戦いで疲弊し、インド国内では独立運動がおこなわれていた。
「雑魚化」とまではいかないが、弱体化していたイギリスにもうインドを支配する力は残っていなかった。
そんなことでイギリスはインドに統治権を譲渡することを決定していたが、その具体的な日にちまでは決まっていなかった。
8月15日という日を選んだのはバッテンだ。
インドのビジネス専門の英字日刊紙『The Economic Times』の記事に、その理由が書いてある。
バッテンにとって8月15日は、個人的なとても重要な意味があった。それは第二次世界大戦中、大日本帝国が降伏したことで、彼がビルマのジャングルでおこなっていた作戦が終了した日だったのだ。
the day when his campaign through the jungles of Burma ended with the unconditional surrender of the Japanese Empire during World War II.
The Japan angle behind August 15 as date of India’s Independence Day
8月15日はバッテンにとって、個人的な「最も輝かしい瞬間」と結びついていて、彼は新しくアジアの国が誕生するにふさわしい日だと考えた。日本が降伏してちょうど2周年になる日だったから、この日をインド独立の日に選んだと彼は話している。
それにしても、イギリスと戦っていた国が降伏した日に、イギリスに支配されていた国を解放するという感覚が、ボクにはよくわからない。その気持ちはインド人も同じらしく、記事では「(皮肉だ)」と表現している。

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