最近、あるテレビ番組で「潔癖」を自称する女性タレントが集まって、トークを繰り広げた。
あるタレントは、外出先で誰が使ったかわからない便座にはできるだけ座りたくない、という理由で、1日にトイレに行くのは朝と帰宅してからの2回だけだと話す。
別の女性も同じ理由で、ここ10年ほど自宅以外の便座には座っていない言う。どうしても外で必要になったときは、「空気椅子」のように便座からお尻を浮かせて用を足しているらしい。
ほかの女性も、便座にお尻をつけたくないという意見に同意する。
これにネット民の反応は?
・それは潔癖症じゃなくて神経症
・MY便座持ち歩けばいいのに
・潔癖症と綺麗好きは違う
・ドアノブとかどうしてんだろ
便座並みに汚いだろうに
・空気中細菌だらけなのにw
ただ、タレントはテレビ番組で「つめ跡」を残すために、盛った話をすることも多いから、どこまで本当かはわからない。
それでも、日本人の衛生観念は世界的に見ても高いのはガチ。特にトイレでそれがわかる。
DeNAトラベルのアンケート調査によると、「海外旅行中にトイレで困ったことがある」と答えた人は86・9%にのぼった。その理由のトップ3は次の通りだ。
1位:トイレが汚い(81・1%)
2位:トイレットペーパーがない(54・0%)
3位:トイレットペーパーが流せない(52・2%)
つまり、海外でトイレを利用したほとんどの日本人は「トイレが汚くて困る」と感じている。「日本の常識は世界の非常識」と言われるが、その代表例がトイレだ。だから、日本に来た外国人は「トイレがとてもきれいで快適だ!」と絶賛する。
日本人は清潔に敏感で、衛生観念も高い。10年間、自宅以外のトイレを使っていないというのは別としても、「公共トイレの便座に座りたくない」という人は海外に比べても多いだろう。
実はこれはインド人にも共通している。ただし、その理由はとてもインドらしい。

20年ほど前、海外の空港のトイレで「便座に座ってご利用ください」という注意書きを見たとき、「洋式トイレなら当たり前では?」と不思議に思った。
その後、インドに行ってその謎が解けた(たぶん)。
10年以上前のインドでは和式トイレのように、しゃがんで排泄するスタイルが一般的で、高級ホテルやレストランなど限られた場所にしか洋式トイレはなかった。
あるとき個室に入ると、フタ付きの洋式トイレなのに、足をのせるスペースがある斬新なトイレに出会って(上の写真)、便座に座るのか、靴を履いたまましゃがむか、一瞬迷ってしまった。
「しゃがみ式トイレ」はタイや中国などアジア圏でよく見かけたが、こんな形の便座があったのはインドだけ。珍しかったから、写真も撮っておいた。
後でインド人の日本語ガイドに聞いた話では、これはカースト制度に関係している。上位カーストの人たちは、下位カーストの人と間接的でも触れると「穢れる」と考えていたため、できるだけ接触を絶っていた。インドではそんな文化が続いていたから、今でも、誰が使ったかわからない便座には座りたくないと考える人が多い。
そのため、洋式トイレのように見える便座に靴を履いたままのって用を足せるようになっているという。靴が滑ると大惨事になるから、接地面はギザギザになっている。
それなら最初から和式スタイルのトイレにすればよさそうだが、インドの常識や感覚はよく分からない。
海外の空港の「便座に座ってご利用ください」という注意書きも、靴を履いたまま洋式トイレを使う人がいたから必要だったのだろう。
確かにインドでは、カースト制度の影響で他人と物を共有したがらない文化がある。博識なインド人から、伝統的なチャイの器が土製なのもその一例だと聞いた。他人と同じコップを使うのはイヤだから、飲み終わったら地面に捨てて壊し、いつも新しい器を使う。
ただし最近は、この「穢れ」の意識も薄れつつあり、ガラス製のコップでチャイを飲むことも増えてきた。
「公共トイレの便座に座りたくない」という人は世界中にいる。でも、その理由には文化の違いがある。これが全てとは言わないが、日本人の場合は衛生的な「汚れ」、インド人は宗教的な「穢れ」が気になるのだろう。
有名タレントが公共トイレの便座にお尻をつけたくないというのも、“カースト意識”が関係しているかも。
インド西部にある大都市・コルカタ

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