日韓関係は李大統領しだい　「国家間の約束は守る」の重要性

2025年8月28日

何年か前、大坂の小学生が『子ども川柳』に応募した作品が秀逸だった。
その子は友だちと待ち合わせをしたのに、誰も来なかったらしい。そこで「約束したのに　　ふざけんな」と怒った気持ちを川柳にした。

※「著作権パンチ」をくらうかもしれないので、この川柳をそれをそのまま載せることはできない。気になる人は検索してくれ。

自分で言ったことを自分で破る人間とは信頼関係なんて築けない。「約束を守る」というのは、年齢や性別に関係なく大切なこと。信頼を裏切りで返されたら、小学生でも怒る。これは人間関係だけでなく、国家間でも同じだ。

２０１８年、韓国の最高裁判所が「徴用工裁判」で日本企業に損害賠償を命じる判決を出した。
しかし請求権の問題は、１９６５年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」と両政府が確認している。韓国がこの合意をひっくり返したため、日本は「約束したのに　ふざけんな」の百倍以上の怒りを感じて大反発した。

当時の安倍首相は、この判決は国際法に反するもので絶対に受け入れられないと明言。
日本は国際法にしたがい、日韓の約束を守って誠実に対応してきた。だから、今度は韓国が国際的な約束を守るべきだと強く主張した。

韓国側はこの発言を、まるで砲撃をするような攻撃行為と理解したらしく、中央日報がこんな記事を掲載した（2019.06.24）。

安倍氏、韓国に砲門「これからは韓国が国際法と約束を守る番」

ここで話は変わって、１９９７年にアメリカ政府がベトナム政府と債務協定（DEBT AGREEMENT）について合意したと発表した。

UNITED STATES AND VIETNAM SIGN DEBT AGREEMENT

１９６０年代から７０年代にかけて、北ベトナムと南ベトナムの間で戦争があった。と言っても、南ベトナムはアメリカの傀儡国家だったから、実際には「北ベトナム VS アメリカ」の戦いだった。
アメリカは南ベトナムを軍事・経済の両面で支援したが、戦争に敗れ、インドシナ半島から撤退する。北ベトナムは南を崩壊させ、南北統一を実現した。

しかし、南ベトナムという国家が消滅しても、アメリカへの巨額の借金は残った。ベトナムが「敵の借金なんて知らん！　誰が払うか」と突っぱねれば、アメリカとの国交回復はできず、国際社会からの信用も失ってしまう。
戦争で国土は荒廃し、多くの青年を失って満身創痍だったけれど、ベトナムは約束を守り、負担を受け入れることにした。
アメリカに約１億４５００万ドルの債務を返済することで合意し、８５０万ドルを超える利息の頭金も、合意後３０日以内に支払うと約束した。
合意には「covers the entire amount of economic debtoutstanding（未払いの経済債務の全額を対象とする）」と明記されていた。
国家間の約束がどれほど重要かを示す例だ。

ここで話は日韓関係に戻る。
尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領は昨年末、非常戒厳令を出して大失敗し、辞任に追い込まれた。今年６月に選挙がおこなわれ、新大統領に就任したのが李在明（イ・ジェミョン）氏。
李氏はかつて日本を「敵性国家」と呼び、尹前大統領の日本に友好的な外交を「屈辱外交」や「売国外交」と非難していたから、日本では「反日的な人物」と警戒されていた。いっぽう、韓国国内では、日本に強く出ることを期待する声が多かった。

しかし、そんな不安と期待は良い意味で裏切られた。
今月、李大統領は日本のメディアのインタビューで、慰安婦や徴用工に関する合意について「国としての約束なので覆すのは望ましくない」と発言したのだ。

文政権の時代、韓国側が約束を破り、日韓関係は戦後最悪と呼ばれるほど悪化した。底なしの奈落に落ちた。その悪夢が再来するのではと懸念されていたが、李大統領はそれを否定した。
朝鮮日報は社説でこの発言を高く評価している。（2025/08/22）

李在明大統領が韓日関係、韓米日協力を強調し「国家間の約束を守る」と自ら発言したことは幸いであり望ましいことだ。

「国家間の約束は覆してはならない」　これぞ正常な外交だ

日本との合意を守ることを「正常な外交」と考えるのは韓国の保守派に多いが、リベラル派には「屈辱外交」と映る。
しかしベトナムの例が示すように、国家間の約束は決定的に重要だ。李大統領が自身の言葉を行動で表せば、日韓関係は明るい未来に向かうことができる。
「約束したのに　ふざけんな」という、ガッカリな未来がこないことを願う。