日本の「劇的変化」と韓国人の不安
日本の歴史には、ドラマティックに変わった「瞬間」がある。
明治維新では国民が政府の指示にしたがい、江戸時代までの価値観や文化を否定し、西洋列強をモデルに近代国家に生まれ変わった。
また、戦後の日本では軍国主義の精神がなくなり、平和国家へと180度転換した。
こうした劇的な変化を知り、「日本でまた急に軍国主義が復活するのでは?」と不安を感じる韓国人に出会ったことがある。

さまざまな人種や宗教の人がいるアメリカなどと違って、日本では国民の約95%が日本人で占められているため、「全体主義」的な傾向がある。
韓国における不買運動と「同調圧力」
しかし、人口の約95%以上が同じ民族という条件は、じつは韓国も同じだ。
そのため、2019年に日本製品のボイコット運動が起きた際には、急激に全国へ拡大した。
当時、知人のアメリカ人がソウルに住んでいて、日本製品の不買を呼びかけるのぼりを見かけて驚いた。

現在、韓国ではスタバの不買運動がおこなわれている。
政府が不買をあおり、(すべてではないが)国民がそれに動かされるという構図は2019年の「ノージャパン」と同じだ。

日本では、いつもは客でごった返していた韓国のスタバ店舗が、急にガラガラになったのを見て驚く人が多い。
ネットの反応を見ると、急速に広がる不買運動を知り、韓国社会の「一体感」を感じ取った人も目立つ。
・国が主導しているので、これを見て少し怖いなと思う。
もし日本の政権が、白黒のパッケージを出したとカルビーの不買運動を呼びかけたら全体主義体制と同じに感じます。
・不買運動には驚いた。大統領選挙での熱気もすごい。いつも何かしらのデモをしている印象。
・相変わらず苛烈な反応。
不買運動が右にならえのただのブームみたい。
・世論ではなく感情で国ごと動く。
まぁ反感買って当然なことしちゃったとは思うけど、国が排斥に同調するってのもねぇ。
・サッカーの応援でもそうだけどなんで韓国は一致団結感が凄いの?
日本の社会について、「同じ基準やルールを求められ、同調圧力が強い」と感じる韓国人がいる。
しかし同時に、日本人が韓国社会を見てそう感じることもあるのだ。
韓国には「ウリ(私たち)」という集団の結びつきを大切にする文化があって、これは強みにも弱みにもなる。


日本製品の不買を呼びかけるのぼり。
当時、ソウルに住んでいたアメリカ人がこれを見かけて驚いた。
1997年「IMF危機」と金集め運動
国民がまとまりやすいというのが、韓国社会の大きな特徴だ
韓国社会の「全体主義的」な傾向は、不買運動のようなネガティブな形で現れることもあれば、すさまじい団結力を発揮することもある。
その代表例が、1997年のアジア通貨危機だ。
韓国では大企業が次々と倒産し、国の信用格付けが大きく下がり、「国家破産」に近い状態になった。
韓国政府は自力での立て直しを断念する。国際通貨基金(IMF)へ救済を要請したことで、韓国はその管理下に置かれた。
この国難に国民が立ち上がる。
「金集め運動」が巻き起こり、国を救うために国民が貴金属を出し合ったのだ。
国民が金を集めて国家に「寄付」することで、金保有量を増やし国家の信用度を高めようとした。さらにそれを基盤として外貨準備を拡大しようとした。
これは一部の団体による「愛国指輪集め運動」から始まったもので、国民の共感を集めてすぐに全国へ拡大した。
具体的には、新婚の夫婦は結婚指輪を、多くの夫婦は子どもの一歳祝いの指輪を、そして高齢の夫婦は子どもから贈られた指輪を国家へ差し出した。
有名なキリスト教の聖職者は就任時に受け取った十字架を寄付しようとし、周囲があわててそれを引き止めた。
この国民運動は2か月間ほど続き、約351万人が参加して約227トンの金が集まった。
しかし、韓国メディア『파이낸셜리뷰』の記事によると、この国民運動には「全体主義的な思考の危険性」を指摘する声もあったという。
[역사속 경제리뷰] 금 모으기 운동
【歴史の中の経済レビュー】金集め運動
「美談」の裏にある全体主義の危うさ
以前、韓国を旅行したとき、日本語ガイドから「IMF危機」の話を聞いた。
2026年の現在なら、そのガイドは70歳ほどになっていて、当時の韓国社会の混乱を肌で感じた人物だった。
当時、彼も自分の財産の一部を国にささげたという。
あの運動は、国難を克服しようとする国民のDNAが目覚めた出来事で、彼は基本的に「美談」と考えていた。
しかし一方で、時間が経つにつれ、マイナス面も感じるようになった。
あの時は「国のために、何かを犠牲にしなければならない」という、ものすごい社会的圧力があって、何もしないと「非国民め!」とののしられるような空気があったという。
これが「全体主義的な思考の危険性」の正体だろう。
当時の熱気は消え去り、冷静になって考えるとこんな疑問がわいてきた。
・政府のミスに対して、国民はどこまで責任を負うべきか?
・そもそも国民をあおった政治家やメディアの人間は、どれだけ自分の財産を国家に差し出したのか?
それでもガイドは、全体的にはあの愛国運動を高く評価していた。
国家が「IMF危機」におちいると、多くの国民が献身的に行動したことを、誇らしく感じていた。
今の韓国の国民にも、きっとそんな一体感や「国難克服のDNA」がある。
母国に重大な危機がおとずれたら、自分を犠牲にしても救おうと多くの人が立ち上がるだろう。
全体主義に傾いて「共通の敵」を攻撃することもあれば、一致団結して大切なものを守ろうとすることもある。
良くも悪くもそれが韓国の人たちだ。
きっとそれほど激しくはないが、日本人にもそんな「全体主義」的な傾向がある。

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