先週、韓国の尹(ユン)大統領がいきなり非常戒厳令を宣言して、国内は大混乱におちいった。
知人の韓国人に言わせるとあれは完全な失敗で、日本人の友人から「韓国はいま大丈夫?」心配されると申し訳なく思うし、韓国は経済的には世界のトップクラスに入ったけれど、政治は三流だったことが明らかになって本当に恥ずかしくなる。
彼にとっての救いは、戒厳令が出されると、すぐに多くの市民が集まって大統領の暴走を止めたことで、「韓国の民主主義は死んでいません」と言う。
いまユン氏はこの混乱の責任を問われていて、もうすぐ大統領からただの人になるか、下手したら犯罪者に転落する。次の韓国大統領にいちばん近くにいるのが、いま最大野党の代表をしている李在明(イジェミョン)氏だ。
対日強硬派で知られる彼は、日本について「今でも軍事大国化を夢見ている」と敵視するような発言をしてきた。日本と協力的な尹大統領の外交も「屈辱的」と批判している。
日本が今でも軍事大国化を夢見ているというのは、韓国のように徴兵制さえない日本の現実を無視する発言だが、韓国メディアの報道を見ていると、「日本が軍国化して周辺国に攻め込むかもしれない」と危機感をあおるような記事やコラムがたまにある。
ほとんどの日本国民は「いや、それはない」とあきれるだろうし、ボクもそう思っていた。が、韓国人の話を聞くと、あちらがそう感じるのはまったく荒唐無稽なことではなくて、それなりのワケがあるのかなとも思うようになった。
先日の12月9日は、1872年に明治政府が太陰暦を廃止し、旧暦の12月3日から太陽暦の1月1日にすることを決めた日だった。
中国・韓国・ベトナムも太陰暦(旧暦)から太陽暦(新暦)に切り替えたけれど、正月などの伝統行事まで新暦に変更したのは東アジアの中では日本だけだ。
くわしいことはこの記事を。
19世紀、日本は西洋列強を参考にして思い切った国内改革をおこない、社会の価値観や制度を大きく変えて近代国家に生まれ変わり、独立を維持することができた。
そんな急激な変化について、当時の日本を訪れたアメリカ人のシドモアは「古い秩序の突然の放棄」は「欧州の間ではたいへんな驚きでした」と記している。
江戸時代までの古い制度や価値観を捨て、急スピードで西洋的なものを導入して、社会や政治をつくり変えた日本は東アジアのオンリーワン。だから、明治維新の成功に興味を持つ韓国人や中国人がたまにいて、その秘訣を質問されたことは何度もある。
ところで12月9日は、戦後直後の1945年にGHQによるプロパガンダ番組『眞相はかうだ(真相はこうだ)』の放送が開始された日でもある。
GHQとは、日本を占領したマッカーサーをトップとする連合国軍最高司令官総司令部のことで、実質的にはアメリカと考えていい。
当時のアメリカによる占領政策は、日本に二度と戦争をさせないということを主要な目的とし、日本人から軍国主義的な精神を除去する活動の一つとして『眞相はこうだ』が放送された。
そのため、その内容は全国の日本人に、「敗北と戦争に対する罪、現在および将来の苦難と窮乏に対する軍国主義者の責任、連合国の軍事占領の理由と目的を周知徹底せしめる」というものになっている。
以前、インド人やトルコ人から、「なんで原子爆弾を2発も落とされて、数十万人の市民が殺されrたのに、現在の日本人はアメリカを憎んでいないのか?」と聞かれた。
その理由の一つに、国民が「あの戦争では日本が悪かった」という罪悪感を持ち、日本を責める方向へ導くように、GHQが学校教育の内容を決めたり、『眞相はかうだ』などのプロパガンダ放送を見せたりしたことがある。
GHQに対する見方はいろいろあるが、戦後の日本は世界に誇れる平和国家として生まれ変わった。
10年ほど前に韓国旅行をした時、2024年の現在なら60代になっている韓国人男性にガイドをしてもらった。その人は日本人女性と結婚して日本語はペラペラで、日本に何度も行ったことがあり、日本人の友人もたくさんいた。
日本が大好きで、一般の韓国人よりも日本の歴史や文化にくわしい彼は、日本について不安を感じることがあると、意外なことを言う。
明治維新では国民が政府の指示に従い、江戸時代までの価値観をとつぜん捨て去り、社会体制を一変させたし、戦後の日本では軍国主義の精神が無くなり、平和な国へ180度変わった。
そのガイドから見ると、日本人は韓国人よりも自己主張が弱くておとなしく、政府に対してとても従順。そのため、いつか政府が号令を出すと国民が素直に従って、またいきなり軍国主義の国へ変わるのではないかと、そんな可能性はとても低いがゼロではないから、不安を感じるという。それに、日本人には本音と建前があってどこか信用できないところがあるから、表面上に見えることをそのまま信じることはできないらしい。
最近、東京に住んでいたことのある30代の韓国人女性に、そのガイドの見方についてどう思うか聞いてみた。すると、「そんなことを考えたことはありませんでした」とやや戸惑って、ちょっと思案した後、その人の気持ちに共感できると言う。
彼女も日本に遊びに来た友人も、日本で出会う人は親切で丁寧で、礼儀正しく接するから感動した。学校教育で知った「残酷で野蛮な日本人」はどこにも存在しない。しかし、時代が違うだけでどっちも同じ日本人だ。
彼女もガイドと同じように日本人は従順で、言われたことをキッチリ守る人たちという印象を持っていた。だから、日本の首相が靖国神社に参拝に行ったと知ると、また国民が「右へならえ」でそれに従って、国全体が軍国主義化するのではないかという不安や恐怖がまったく無くはないと言う。
21世紀の日本が軍国化して、周辺国へ攻め込むか?
それはアニメや小説の話で、ボクにはまったく現実感を感じない。
しかし、明治や戦後の日本がそれまで激変したことについては、さまざまな外国人が疑問に思っている。それを考えると、また日本が急変する可能性がまったく無いと言い切ることもできない。
韓国メディアの報道や韓国人のネットコメントで、「日本が軍国主義化して周辺国を侵略するかも」といった内容のものを見ると、「反日教育を受けたせい」と以前は軽く考えていた。
しかし、日本は近代史において、別の国に生まれ変わるような大きな変化が二度もあった。古い秩序を突然放棄して太陽暦を導入するだけでなく、伝統行事の日にちまで移動するほど、社会を大きく変えられた理由や原因は日本人でもなかなか説明できない。
韓国人は日本人とは受けている教育が違って、まったく別の見方を持っているから、日本が近代史で二度も激変したことを知れば、今の日本に対して心のどこかに不安や恐怖を感じることは、共感はできないとしても、最近は「仕方がないかもしれない」と思うようになってきた。「今でも軍事大国化を夢見ている」はバカバカしいとしても。
日本で戒厳令が出されるような政治的混乱は起こらないだろうけど、もしそうなったら、どうなるのか? 韓国に比べれば、国民は政府の暴走を止めることよりも、政府の発表に素直に従う可能性が高いと思う。
韓国人が日本と日本人に対して持っている考えをよく書いてくださいました。
あの内容にプラスすると、韓国人は日本人がとても残忍で好戦的で未開だと思っています。
相撲の力士たちの服装を見て、”日本人は未開だ”と思っている人が多いです。また、太平洋戦争、韓日併合と壬辰倭乱、それ以前の倭寇の数多くの侵略を学びながら、日本は好戦的な性格を持っていると確信しています。だから日本が再武装すると周りは戦雲が漂うと強く思っているんですよね。
> 韓国メディアの報道や韓国人のネットコメントで、「日本が軍国主義化して周辺国を侵略するかも」といった内容のものを見ると、「反日教育を受けたせい」と以前は軽く考えていた。
単に「反日教育」だけが理由ではないと思いますよ。それは、韓国人が心の底で抱いている「日本に対する劣等感」の現れです。(彼ら自身はそんなことを絶対に認めないですが。)
「日本が軍国主義化する可能性がある」という主張は、「韓国には戒厳令が発せられてもう少しのところで民主主義が崩壊寸前だったのを危うく止めることができた」のだから、「日本は(民主主義の発展度合において)韓国以下であってほしい、いや、そうであるに違いない」とする願望の現れであると(私を含めて)かなり多くの日本人は見抜いています。そういう歪んだ嫉妬心が発露しているのは明らかだと思いますけどね。
まあでも、「日本が軍国主義化する」可能性よりは、「韓国で(これまで何度も起きたように)戒厳令やクーデターが発生して、民主主義や経済が大きく後退する」可能性の方がずっと高いでしょう。今回の戒厳令騒動を見てますますそう思いました。実に危なっかしい。
そもそも日本人はそんな危ない政治家を選挙で国の代表には選びませんよ。一人に大きな権限が集中する大統領制でもないし。
ボロクソですね(笑)
でも、日本を旅行して日本を好きになる韓国人は多いと聞きました。
> 国民は政府の暴走を止めることよりも、政府の発表に素直に従う(その結果として軍国主義化する)可能性が高いと思う。
それよりも可能性が高いのは、「一部政治家と多くの国民の過度な主張に煽られて、韓国がいっそう軍国主義化する」可能性の方が高いと思いますけどね。
あと、暦のことを取り上げて「アジアの中で、日本だけが明治維新で伝統文化を捨て去って近代国家へ変革できた」と主張されているようですが。
それは全くの誤りです。むしろ、韓国や中国に比べて日本の方が、伝統文化をより大切にしていると思います。寺社建築、舞踊、絵画、文学、その他色々です。中国も韓国も革命・政変のたび毎にそれらを捨て去り、社会から抹消してきています。
日本で暦が刷新されたのは、そのことが西欧社会に並び立つのに必要だった(と明治の先人達が判断した)からです。服装もそうです。髪型もそうです。廃刀令もそうです。
私が思うに、日本の近代化・工業化に最も貢献したのは、「メートル法の導入」だったのでは。もしもメートル法を使わず旧来の尺貫法のままだったら、西欧の科学技術と工業力を取り入れるのは著しく困難であり、日本もアジアの後進国となっていたでしょう。
これは19世紀の近代化の話です。
初代文部大臣の森有礼は英語を公用語とするよう提唱しました。
こんな例は当時の東アジアではほかにありません。