知人のアメリカ人女性は日本の小中学校で英語を教えていて、今は母国に戻ってジョージア州に住んでいる。彼女は人種的にはベトナム人で、ここでは「ニャアン」という名前にする。では、これからニャアンに聞いた話をシェアしよう。
ーーこの前カナダ人と食堂に行ったら、彼がシラス丼を見て「目がたくさんあって気持ち悪い…」って目が点になってた。シラス丼って、カナダやアメリカの人の感覚だとドン引きアイテムなの？
わかる〜。アメリカでは、普通は生き物の頭を取って調理するから、目玉のある料理なんて無い。“皆無”ってわけでもないけど。だから、「目玉を食べる」っていう感覚は一般的には気持ち悪いと思うよ〜。
ーーニャアンもダメ？
私はへーき。魚の目玉を食べる文化はベトナムにもあるから。
ーーそっか。アメリカは移民の国だから、白人と日系やベトナム系では違う食文化をもっている。人口の９５％以上が大和民族の日本とは、根本的に社会構造がちがう。
そう。日本にいたとき、「これって、アメリカではどうなの？」って簡単に聞いてくる人がよくいたけど、地域や人種を限定してくれないと、「いろいろある」としか答えられないことが多かった。
ーーインド人と同じだな。インドについて質問すると、「わたしの住んでいる州では」とか「ヒンドゥー教では」と限定して答える人が多かった。「東アジアはどう？」って聞かれても、日本人は日本のことしか答えられないのと同じか。
そんな感じ。話を目玉に戻すと、魚の目玉には栄養があるから、ベトナムでは人気が高いよ。ベトナムに帰ったとき、親戚と食事をしてたら、魚の目玉が出てきて、誰が食べるかで言い争いになった。アメリカだったら、逆に「どうぞどうぞ」ってお互いに譲りあう。
ーー「ダチョウ倶楽部」状態って人類共通なんだ。
ニューヨークの中心部、たぶんタイムズスクエアの周辺
ーー最近、友だちがイギリスからニューヨークに遊びに来たんだって？ その人はニューヨークについてどんなことを言ってた？
その子はケンブリッジに住んでいるけど、そこはどんなところか知ってる？
ーーケンブリッジというと、日本では大学と飛鳥が有名。でも、ここでは世界陸上じゃなく、８００年以上の歴史を誇るケンブリッジ大学のほうだろうけど。日本で例えるなら、ロンドンが東京で、ケンブリッジは京都になるってうわさ。
ケンブリッジには歴史的な建物がたくさんあって、「古き良きイギリス」を感じさせる都市なのよ。それに対して、ニューヨークは高層ビルが立ち並んでいるから、彼女はマンハッタンを見上げながら歩いて、「映画の中にいるみたい！」って感動してた。
ーーオノボリさん状態で「かがくのちからってすげー！」とか「未来ずらー！」みたいな感じか。
それは知らない。タイムズスクエアは色と光の洪水だったから、彼女は「まさにアメリカ！」って感じたみたい。
ーーそう言えば、前にアメリカ人から渋谷がタイムズスクエアに似ているって聞いた。
日本の中ならそうだろうけど、タイムズスクエアはもっとずっと派手よ。
ーースクランブル交差点では、世界の交差点（タイムズスクエア）には勝てないか。ニャアンもキラキラを見た？
わたしはニューヨークの大学に通っていたから、今さらタイムズスクエアのネオンサインを見ても何も思わない。
タイムズスクエア
ーー彼女はニューヨークについて嫌なことは言ってなかった？
「空がすごくせまい」って言ってたから、観光ならいいけど、そこに住みたくはないんじゃないかな。それと物価に不満を言ってた。
ーー平均家賃が約８０万円とか、ニューヨークの物価はヤバいって聞いた。日本のセレブが向こうじゃ平均になる。
彼女はレストランや店で「こんなに高いの？」っていちいちビックリしてた。たとえば、ピザ一切れで６ドルだったのは衝撃的だったみたい。ジョージアなら４ドルくらいかな。
ーー一切れで６ドル（約９００円）か。ロピアならホールピザで２枚いけるかな。
でも、サイズが大きいから、彼女はそれにもビックリしてた。イギリスに比べたら、ニューヨークの食べ物は値段が高いけど、基本的に量が多いんだって。
ーー話を聞いてて思ったけど、そのイギリス人がアメリカで感じたことは、日本人と基本的に同じよ。アメリカを旅行した日本人も、よくタイムズスクエアの派手さや賑やかさに驚くし、物価の高さにはウンザリする。でも、料理の量が多いから、日本の感覚で２、３品注文したら、食べきれなかったって人がよくいる。
イギリス人とアメリカ人は同じことばを話すけど、社会全体では日本とイギリスのほうが近いかもね。とくにニューヨークは日本やイギリスからは遠くにある。アメリカは１７７６年にできた若くて活発な国だから、そのぶん歴史の重みはない。
ーー日本と西洋では建物や食べ物はまったく違うけど、イギリス人もシラス丼を見たらきっと驚く。でも、日本とイギリスは古い国だから、伝統を大切にする価値観は共通している気がする。
それはそうかも。
昨年、ニューヨークに住んでいるアメリカ人がマクドナルドで、ハンバーガーと飲み物ともう一品注文したら「３０ドルもかかった！ NYの物価はおかしい！」と怒っていた。
２０２４年のレートだと、３０ドルは約４８００円だから、デリバリーで割高になているとしてもこれはキツイ。
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