SNSを見ていたら、日本を旅行したあるイギリス人の斬新な感想を見つけた。
彼は東京で乗った電車や地下鉄について、
「Very clean, reliable, frequent and BUSY」
と、とても清潔で信頼でき(時間に正確で)、本数も多く、そして忙しいと混雑ぶりを強調した。
彼はイギリスにいたとき、日本の公共交通機関の「地獄の混雑」について話を聞いて、「マジカよ?」と疑わしかったから、日本に行ったらそれを確認したいと思っていた。
それで、実際にラッシュアワー時に乗車したら、ドアが開いたら車両に詰め込まれ、中では人びとに押しつぶされ、息をすることも苦しくなって窒息する前に運よく出ることができた。
彼にとって満員電車の状況は、とても許容できるものではなかったが、とっては忘れられない思い出になったという
これは男性だからこそできる「日本体験」だ。
イギリス政府は以前、自国の女性に対して、日本では「chikan」に気をつけろとアドバイスを出した。

さて友人に、日本に10年近く住んでいるイギリス人女性のサラがいる。今回は7月の終わりに彼女と会ってかわした会話の様子をお伝えしようと思う。

ロンドンの風景
ーーことしの夏、サラはどこかへ旅行する予定はあるのか?
サ:あるよ。お盆を外して、山形と新潟に行くつもりだ。
ーー日本に5年以上いると、さすがに言うことが違うな。もう日本人との同化がかなり進んでいる。
メジャーな観光地はもうだいたい制覇した?
サ:まあね。 東京、京都、大阪なんかは自分でも行ったし、イギリスから家族や友人が遊びに来たときにも案内したからね。
ーーつまり、定番の観光地はもう制覇したわけだ。
サ:もちろん、すべてじゃないけどね。
有名な観光地は外国人観光客が多いから、率直に言ってあまり行きたくないんだ。
ーー日本に住む外国人が、日本に来る外国人にウンザリする。最近、SNSでよく見かけるようになったな。
サ:2、3年前に京都の伏見稲荷大社へ行ったときなんて、ほとんど外国人しかいなかった。騒々しいし、風情も何もなくて、正直ガッカリしたよ。
ーー白人になろうとするアジア人を「バナナ」って呼ぶことがあるけど、サラはその逆みたいだな。
サ:じゃあ、わたしは何になるんだ?
ーー外側が黄色で中身が白い…、つまりモナカか。
サ:美味しいよね、モナカ。でも、わたしは「雪見だいふく」派だ。
ーー最高にどうでもいい情報だな。
それにしても、静岡から山形まで行って「ムカサリ絵馬」を見ようとするなんて、かなりマニアックだよ。そんな発想、静岡県民でもなかなか思いつかない。
サ:何それ、初めて聞いた!


サ:今回の目的は、ただ単純にまだ行ったことがなくて、夏の暑さを避けられるところへ行きたいなって思っただけさ。
ーーイギリス人って、伝統的に暑さに弱いよな。
インドを植民地支配していたとき、あまりの暑さに音を上げて、ダージリンとかシムラとかの避暑地をバンバンつくって、夏はそこへ移動して過ごしていたくらいだし。
サ:おいおい、インドや日本と比べないでくれよ。
でも、調べてみたら山形と新潟はわたしのイメージと少し違った。
山形と新潟は冬になると雪がすっごく積もるから、勝手に涼しいと思い込んでいたけど、夏は普通に暑いみたいじゃないか。
いやいや、人間の思い込みというのは恐ろしいね。
ーーそれは避暑になってないな。場所によっては、静岡のほうが涼しいんじゃないか?
たとえば、南伊豆町とか。
サ:すごいピンポイントね。
ーー南伊豆町に石廊崎ってところがあって、そこは約100年、35℃以上の日がないらしい。
そのあたりの海水は冷たくて風も吹くから、夏でもわりと涼しくて過ごしやすい。
(1939年に統計が開始されて以来、これまで87年間、35℃以上の猛暑日が記録されていない。)
それで、「奇跡の避暑地」っていわれているんだって。
サ:日本にいるイギリス人にとって、その響きはとても魅力的だね〜。
それを6月に言ってくれなかったのが残念だ。
ーーそっちが言う前に俺が知ってたら、旅行どころじゃなくなるけどな。
サ:同感だね、そんなホラーはいらない。

ーーそれにしても、サラは旅行が好きだよな。
サ:それは日本に来てからだよ。イギリスにいたときはそうでもなかった。
ーーイギリスにも、建物や自然で魅力的なところはたくさんあるだろ?
サ:もちろん。でも、日本みたいな「熱心さ」がない。
ーーたとえば?
サ:日本って京都や大阪みたいな有名な観光地だけじゃなくて、地方の町や村も積極的に観光誘致しているじゃないか。
その地域ならではの魅力を見つけて、独特のゆるキャラを製作してPRしている。
イギリス人は、そういう涙ぐましい努力をしないのだよ。
ーーそう言えば、前にアメリカ人が「“ゆるキャラ”は英語にするのがむずかしい」って言ってたな。
「ローカルマスコット(Local mascot)」だと、かわいらしさを含む「ゆる」のニュアンスがでないって。
※「ゆるキャラ」は日本独自のものだから、英語版ウィキペディアには、日本語をそのまま使った「Yuru-kyara」という項目がある。
サ:そう、イギリスには都市を象徴する「ゆるキャラ」の概念がないのよ。
ーーご当地キャラクターにはほかにも、萌えキャラ、ご当地ヒーロー、ご当地VTuberといろいろある。
全国ナンバーワンを決める『ゆるキャラグランプリ』も開催されてるし、日本国内でガラパゴス的にどんどん進化しているよな。

南伊豆町のマスコットキャラクター「いろう男爵」
ホームページ(南伊豆町宣伝部長『いろう男爵』誕生!!)で、「町の宣伝部長として宣伝活動を積極的に行っていきます」と決意を語る。
サ:さっきの南伊豆町が良い例だよ。
全国的に猛暑が問題になっているなかで、「自分たちの地域は比較的涼しい」という特徴を見つけて、それを「奇跡の避暑地」という観光資源としてPRする。
ーー確かに、日本はそういうことをよくやるな。
サ:そのとおり。
だから、わたしにとって日本人の発想は面白くて、「こんなものまで観光にするのか」とよく感心させられる。
でも、イギリスでは、観光地以外の都市や村は観光客の誘致に熱心じゃないんだ。
小さな町が「奇跡の◯◯」なんてキャッチコピーをつくって、積極的に観光客を呼び込むなんて聞いたことがない。
ーーイギリスでは観光で「町おこし」とか、地域を活性化しようと考えないのか?
サ:うーん、それを深く考えたことはないな。
私の両親も地方に住んでいるけど、あの人たちについて言えば、知らない人がたくさんやってきて、地元の環境や生活が変わることを望んでいない。
観光客が来たら受け入れるけど、自分から熱心に呼び込もうとはしない。
ーー保守的、ってことか?
サ:田舎に住む人は大抵そうでしょ。
住み慣れた土地が変わってほしくないと考えてる。
ーー日本ではその温度差が問題になっている。
京都では外国人客がやってきて、飲食業や宿泊施設の人たちは喜んでいるけど、住民には環境が荒れたり、外国人向けに観光化されたりしてウンザリしている人が多い。
サ:わたしにもよくわかるよ、その住民たちの気持ちが。
伏見稲荷大社のあの状態は何とかしたほうがいい。
まぁ、結局これは日本人が考える問題だ。
わたしはモナカじゃなくて、日本に住むイギリス人の一人にすぎないからね。

イギリス南部にある「ドーバーの白い崖」のイメージ。
昔は、ドーバー海峡を越えてイングランド(イギリス)へわたる人が見ていたから、この白い崖はイギリスのシンボルになっている。
ある中国人がこの「白い崖」を見て、わが国ならすぐに観光化されてチケットブースや展望台を兼ねた休憩所などができるだろうと、AIで下のような絵を描いていた。

日本人もこんな雄大な自然があったら、すぐに観光化して、「奇跡の白い崖」みたいなキャッチコピーをつくって大々的にPRするかもしれない。

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