チャンスをピンチに変えた文大統領。”北朝鮮”で支持率最低。

 

今から思えば、去年11月ごろの韓国・文大統領は絶好調だった。

「KBS WORLD Radio」の記事(2017-11-13)によると、このときにおこなわれた世論調査では、文大統領の支持率は80%を超えている。

くわしいことはこの記事をご覧ください。

文大統領の支持率が80.9%に

 

でも、日本では逆に、このときの文大統領の評判は散々だった。

この世論調査がおこなわれた少し前、韓国政府がトランプ大統領のために開いた夕食会で、「独島エビ」と「元慰安婦」が登場した。
このサプライズに日本中が衝撃を受ける。
テレビ、新聞、雑誌がこれを取り上げ、あるテレビ番組ではこの夕食会を「反日晩さん会」と紹介していた。

 

この夕食会によって、日本での文大統領のイメージは悪化したけれど、韓国人にはこれが受けた。
韓国の政治家が手っ取り早く支持率を上げたかったら、反日パフォーマンスをすればいい。
「水戸黄門」の黄門さまになって、視聴者人から拍手をもらうことができる。

韓国の政治家にとって大事なことは「倭人の目」ではなくて「国民の目」だから、「反日晩さん会」のようなことはきっとこれからも起こる。

先ほどの世論調査によると、韓国の国民が文大統領を支持するもっと大きな理由は、「国民とのコミュニケーション」だ。
「反日晩さん会」をふくめてこの時点では、文大統領は国民とのコミュニケーションがうまく取れていた。

 

グーグルキーワードに「文大統領」と入力すると、こんな画面が出てくる。
日本で文大統領を支持する声はほとんどない。

 

 

去年11月の時点では、「文大統領の支持率は、しばらくは安泰なんだろうな」と思っていた。

それは、2018年2月に平昌五輪が開催されるから。

五輪が失敗したら、文大統領の支持率は当然下がる。
でも、大きな失敗もなく五輪は終わって、多くの国民は自国で五輪が開かれたことに満足するんだろうな、と考えていた。

 

年が明けて1月になると、北から春風が舞い込む。
北朝鮮が「平昌五輪に参加する」と韓国に伝えてきた。

これに韓国政府は、狂喜乱舞の熱烈大歓迎。

文大統領にとっては、五輪開催だけでも自分をアピールする良いチャンスだったのに、さらにボーナスをもらったようなもの。

だからこの時は、「文大統領の支持率は高止まりするだろうな」と思っていた。

 

 

ところがここにきて、文大統領の支持率が急落する。
五輪開催の直前におこなわれた世論調査では、支持率は過去最低を記録した。

中央日報の記事(2018年02月02日)から。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政遂行に対する支持度が2日、63%となった。韓国ギャラップの基準では就任以来最も低い支持率だ。

文在寅大統領の支持率63%、最低値更新

韓国ギャラップの結果は「信頼水準95%、標本誤差±3.1%ポイント」というもので、信頼性はきわめて高い。

それによると、文大統領を支持しない最大の要因は「北朝鮮」になっている。
平昌五輪では、韓国と北朝鮮が合同チームを結成したり、南北選手が同時に入場したりすることが発表された。

でも韓国政府のこの決定に、25%の人がNOを突きつける。
それ以下はこんな感じ。

「過去史の蒸し返し・報復政治」(14%)、「親北朝鮮性向」(12%)、「北核・安保」(7%)などが挙げられた。

やっぱり、キーワードは「北朝鮮」。

文大統領としては、北朝鮮との友好・南北の融和を世界中にアピールしたい。
それで韓国政府は、五輪初となる南北合同チーム「コリア」をつくったし、北朝鮮の選手と一緒に入場することも決めた。

でも、これが裏目に出た。

 

 

南北合同チームは、韓国政府が北朝鮮に提案したことによって実現した。

政治家はハッピーだけど、選手はたまらない。
北朝鮮の選手が試合に出る分だけ、自分たちは試合に出られない。

政治的判断によってつくられたチームだから、北朝鮮の選手は確実に試合に出ることができる。
そうしなかったら、北朝鮮側が怒り出す。

 

でも、合同チームについて、韓国の選手はこう言っている。

「とても当惑し、失望している」
「このようなことが起こっているのがまだ信じられない」
「選手たちは傷付いており、士気も下がっている状態だ」

朝鮮日報の記事「女子アイスホッケー韓国代表GK『選手たちは傷付き、士気低下』(2018/01/19)」から。

 

韓国で女子アイスホッケーは人気がない。
だから、選手は十分なサポートを受けることができない。
レストランで餃子をつくったり皿を洗ったりして、何とか練習を続けてきた選手もいる。

苦労を重ねて国家代表選手に選ばれたら、北朝鮮選手が”特別枠”で試合に出ることを知らされた。
これで失望しない選手はいないだろう。

 

 

これに対して韓国政府はあまりに無神経だった。

韓国の首相が「女子アイスホッケーはメダルをねらえる位置にはない」と発言すれば、大統領府の幹部はこう言う

「南北合同チームの話が持ち上がらなければ、誰もアイスホッケーのチームには注目しなかったはずだ」

 

文大統領はと言えば、きっと金大中(キム・デジュン)元大統領を意識している。

金大中氏は2000年にノーベル平和賞を受賞した。
韓国がノーベル賞を取ったのはこの1回だけ。

金大中氏は「太陽政策」が評価されて、ノーベル平和賞が授与されている。
太陽政策とは、1998年から2008年まで韓国政府が採用していた北朝鮮への外交政策のこと。

太陽政策

「北朝鮮の頑な態度を改めさせるためには、圧力ではなく温情が必要であるとするものであり、軍事力で統一するよりも人道援助、経済援助、文化交流、観光事業を深めることで将来の南北朝鮮統一を図ろうとする外交政策」である。

「ウィキペディア」

文大統領も金大中氏のように、北朝鮮の最高指導者と会談をおこないたいと思っているはず。
北朝鮮との話し合いで「核・ミサイル問題」が解決されたら、ノーベル平和賞はまず間違いない。

 

 

文大統領は去年9月、「グローバル市民賞」を受賞した。
このときニューヨークでおこなわれた授賞式では、「韓国の国民にこそ、ノーベル平和賞を受賞する資格がある」と発言している。

この言葉に韓国国民は大感激。
ネットでは、文大統領を絶賛するコメントが雨あられ。

「韓国人に生まれて良かった」
「国民が誇りに思う国、国民が誇りに思う大統領」
「文大統領を最後まで応援し続ける」

くわしいことはレコードチャイナの記事(2017年9月20日)をご覧ください。

「韓国国民にはノーベル平和賞の資格がある」世界にアピールした文大統領を韓国ネットが称賛

 

こんな文大統領なら、自分がノーベル平和賞の受賞者になることを夢見ているだろう。

 

 

文大統領の支持率急落の原因は、北朝鮮にはなく、その参加を自分の名誉や手柄にしようとしたことだろう。

合同チーム結成に、国民は南北融和よりも文政権の”私欲”を見たのではないか。
「国民とのコミュニケーション」ができてなく、自分の声しか聴いていなかった。
文大統領は北朝鮮の参加を聞いて、舞い上がってしまったようだ。

支持率が下がったことを知った文大統領は、今になって「風前の灯を守るように南北対話を守ってほしい」と国民に呼びかけた。
でも、国民にしたら「選手や韓国のプライドを守ってほしい」という思いだろう。

文大統領は、五輪の開催・北朝鮮の参加というチャンスを活かそうと思ったら、ピンチを招いてしまった。

 

この画面はしばらく変わりそうにない。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。