10年ぐらい前、香港人と台湾人を連れて、上のような池があるお寺に行った。
いまは中庭に移されたけど、この池は当時、寺の外にあって誰でも近づくことができた。
通りからも見えるから、通行人がぶらりとやってくるもできる。
この池を見て、香港人と台湾人が「きれいな鯉ですね。恋しました」なんてことを言う前に、「なんでこんなきれいな鯉がここにいるのですか?」とビックリした顔をする。
そこでボクが放生池(ほうじょうち)の説明をした。
放生池ってのは、捕まえられた魚や亀などを放してやるための池で、これは仏教的にとてもいいこととされている。仏教の教えでは、こうした善行を積むことで、より良い来世に行くことができる。
といってもこの池は今では観賞用なんだろうけど。
「香港や台湾のお寺には放生池がないのか?」と思ったらそうじゃない。
「こんな高そうな錦鯉が外にいるのに、誰も盗まないのですか?」ということに彼らは驚いていた。
「香港や台湾なら危ない。中国なら絶対に盗まれる」と太鼓判を押す。
売れると思ったら石まで盗む、というのは冗談ではなくて、わりと本気だったかもしれない。
鯉はむかしから日本にも中国にもいた。
でも、錦鯉を育てることは19世紀に新潟県ではじまったという。
日本で品種改良が進んだ錦鯉は、「生きた宝石」「泳ぐ芸術品」という上品なニックネームを持っている。
業界団体が「日本の国魚」としている錦鯉は外国人にもファンが多く、いまでは海外への輸出も盛んだ。
英語でも、「Koi Fish」とか「Nishiki Koi」と呼ばれることもあるとか。
前に上海の日本語ガイドから、錦鯉には「成功」や「豊かさ」のイメージがあるから、これを所有したいと考える中国人が増えていると聞いた。
高級車のように、錦鯉は社会的地位の高さを象徴するものかもしれない。
そういえば去年、Record chinaにこんな記事(2018年12月6日)があった。
中国の「今年の流行語」トップ10、「錦鯉」や「仏系」がランクインする意味は?―中国メディア
2018年の中国の流行語ナンバーワンに「錦鯉」が選ばれた。
ちなみに意味は「強運の持ち主」。
錦鯉が1位になった理由として、記事にはこう書いてある。
今年中国で「縁起物」として人気となり、ここ一番の勝負の時にニシキゴイの画像をスマートフォンの待ち受け画面にする若者が増えた。
中国で「錦鯉」が流行語になったことは、「新しい時代を生きる人々の『美しい生活』へのあこがれ」を表しているという。
最近の中国は経済成長(と格差)がいちじるしい。
だからこんな中国人も登場する。
韓国紙・中央日報の記事(2019年02月28日)
中国人富豪に2億300万円で売れた日本のニシキゴイ
錦鯉が世界の金持ちの間で人気を呼んで、値段も急上昇している。
去年は、中国人の富豪が広島県で飼育された錦鯉を史上最高の2億300万円で購入。
チャイナマネー恐るべし。
記事では、中国の不動産会社社長が「優雅な泳ぎは日ごろのストレスを忘れさせてくれる。何時間見ていても飽きない」と錦鯉の魅力を語っている。
アジアやオーストラリアなど世界中で錦鯉の品評会が開かれているけれど、「本場の日本で受賞するのがステータス」とは愛好者の弁。
最近の輸出先を見ると、香港やオランダ、ドイツの他、ブラジルやアラブ首長国連邦も増えている。
でも、値段が上昇すれば当然のことながら、日本人が錦鯉を手に入れることが難しくなってしまう。
寺の外にあった池を中庭に移した理由はコレか?
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