恩を仇で返すにもほどがある!
命の恩人を殺してしまうとかどんな畜生だよ、と思ったら、相手はその畜生(仏教でいう人間以外の動物)だった。
AFPの記事(2019年5月11日)
ノルウェー人女性が狂犬病で死亡、旅先のフィリピンで助けた子犬にかまれる
フィリピンを旅行中、道端で横たわっている子犬を見つけたビルギッタさんは、かごの中に子犬を入れて保護する。
子犬の体を洗ってあげたり世話をしたりすると、子犬は回復し始め、ビルギッタさんと遊ぶようになる。
そのなかで、ビルギッタさんの指を噛んでしまった。
ノルウェーに帰国後、彼女の容体は急変し、病院で集中治療を受けたものの、そのまま息を引き取ったという。
狂犬病だった。
ビルギッタ・カレスタッドというノルウェー人女性の命は24歳で終わってしまった。
遺族はこう話している。
「私たちの愛するビルギッタは動物が大好きだった。私たちが恐れていることは、ビルギッタのような優しい心を持つ人に、こうしたことが起こり得ることだ」
いまのノルウェーや日本で狂犬病なんて考えられないけど、世界保健機関(WHO)によると、世界中では毎年5万9000人以上が狂犬病で死亡しているという。要注意だ。
狂犬病は致死率100%といわれていて、一度かかったら、もう余命しか残っていない。
このニュースで思い出した物語がある。
それは中国の明の時代、13世紀ごろにできた「東郭先生とオオカミ」という話。
*中国語や韓国語の「先生」とは「~さん」という意味だから、「東郭さん」というニュアンスだろう。
内容はざっとこんな感じだ。
ある日、道を歩いていた東郭さんは、猟師に追われてひん死のオオカミと出会う。
オオカミは「お願いです。私を助けてください。このご恩は必ず返しますから」と懇願する。
それを聞いた東郭さんは、「そうか。では、泣きながら滅べ」と無慈悲なことは言わず、「では、この袋に入りなさい」と言ってオオカミをかくまってあげる。
そこに猟師登場。
「オオカミを見なかったか?」と聞く猟師に、「いえ、見ませんでしたが」とすっとぼける東郭さん。
「そうか」と猟師さんは手負いのオオカミを探して先に進む。
完全に姿が見えなくなると、東郭さんは袋からオオカミを出して、「もう大丈夫です」と言葉をかける。
そんな東郭さんにオオカミはこう言った。
「ありがとうございました。あなたは私の命を助けてくれました。もうひとつ、良いことをしませんか?私はいま、とてもお腹が減っているのです。あなたを食べさせてください」
これを聞いた東郭さんはビックリ。
「マジかよ!これはこのあと、夜になってオオカミの集団が食べ物や金をくわえてやって来る展開だろっ。恩を仇で返すにもほどがあるぞ!」と思った東郭さんはオオカミと生死をかけた戦いをはじめる。
そこを通りかかった農夫がこのバトルを見つけて、くわでオオカミを殴り殺して一件落着。
そんな夢も希望もないストーリーが「東郭先生とオオカミ」という物語。
*セリフなどを多少アレンジしたけど、内容はだいたいこんな感じ。
さて、あなたをこの話をどう思いますか?
中国人はこの東郭先生を「お人よし」を超えて、無知で愚かとバカにすることが多い。
善意をかけることが正しいのではない。
それが通じる相手かどうかを見極めないといけない。
悪人に善意や誠意をしめしたら、逆に利用されて、自分がとんでもない被害を受けてしまうこともある。
分別のない善人が生きていけるほど、中国の社会はやさしくないのだ。
この話は韓国でも有名で、学校の教科書にも載っているという。
韓国の全国紙・中央日報にはこんなコラム(2006年10月25日)もある。
読者らの予想を越えない話の構造だ。 しかし農夫は東郭先生に「野獣の性情はなおらない。あなたがオオカミに仁慈をかけるのは愚かな行為」という訓戒を残す。
東郭先生
いや、予想を越えるだろ。
教科書で教えるような子供向けの物語なら、東郭さんの慈悲に触れたオオカミは心を入れ替えて、恩返しをしてその後仲良く暮らす、というあったか展開じゃないのか?
でも、「状況の本質を無視したり悟ることができず、愚かさで一貫したうその仁慈に対する風刺だ」というのが韓国人の見方で、これは中国人とまったく同じ。
ということで日本人が中国人や韓国人を相手にするときは、「東郭先生とオオカミ」を教訓としたほうがいい。
相手の価値観にそって考え、対応するのは当然のことだから。それにこの物語で伝えていることは間違っていないし、「平和ボケ」の日本人にはきっと必要だ。
中国の大学生が人々の誠意に期待して無人販売所を設置したところ、大惨敗した。
中国の大学教授は、「夢を見たい気持ちは分かるが、道徳心がなっていない社会では市民に高いレベルの“誠実さ”を求めてもうまくいかない」と的確なことを言う。
それはこの記事をどうぞ。
こんな中国人は嫌いだ①日本人の想像を越えるマナー違反・ルール無視
韓国については、慰安婦問題や徴用工問題をふり返ってほしい。
約束をすべて守った日本の誠意に、韓国はどう応えたか。
日韓がいまでも過去の歴史問題でもめている大きな原因は、日本人と韓国人では、決定的に違う価値観やものの見方があるからだ。
その点、中国の対韓外交はみごとの一言。
中国は甘えを許さないし、韓国から絶対に舐められない。
ということで、東郭先生を見よ。
慈悲をかける前に、相手をしっかり見て、それが通じるかどうかを判断しないといけない。
先に誠意を見せて、残酷に裏切られることもある。
でもその場合、「愚かな行為」をしたのはこちら側だ。
中国と韓国で有名なこの話が日本ではまるで知られていない。
日本人の価値観とは絶望的に合わなかったから、日本では受け入れられなかったのだろう。
「私たちの愛するビルギッタは動物が大好きだった。ビルギッタのような優しい心を持つ人に、こうしたことが起こり得ることだ」という言葉の受け止め方も、日本人と中国人や韓国人では違うと思う。
これと正反対な話が三国志に出てくる「七縦七擒(シチショウシチキン)」というもの。
蜀の諸葛孔明が孟獲(もうかく)という敵将とたたかい、孟獲を捕らえては逃がしてやる。
7回たたかって7回とも負けた孟獲は、孔明の才能と人格に心からの忠誠を誓って、以後は孔明の忠実なしもべとなった。
こういう話は日本人の大好物。
だから日本でも有名だ。
孟獲さん
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