【最悪の日韓関係】「信頼できない」 vs 「自尊心の戦い」

同じものを見ていても、相手にはまったく別のものが見えている。
日本の立場から韓国を見るとよくそう思う。

たとえばこれは韓国の全国紙、中央日報のコラムだ。（2019年09月03日）

韓日関係が最悪に達している。日本の輸出制限以降両国の対立はすでに自尊心戦いの段階を越えている。

日本との戦い、電撃戦でない高地戦

現在の日韓関係が最悪というのはわかる。
でも、いま日本政府が韓国に行っているのは輸出管理の強化であって、「輸出規制」ではない。
ただ日本のマスコミでも韓国メディアと同じ表現するところがあるから、まだこれは理解できる。
でも、日韓の対立が「自尊心戦いの段階を越えた」ってなに？
そんなことを日本で聞いたことがない。
「越えた」という前にほとんどの日本人は、「自尊心の戦い」が始まっていたことすら知らないだろう。

日韓では本当に価値観が違う。
「日本との戦い、電撃戦でない高地戦」という新聞記事の見出しを見て、これが「輸出管理の運用見直し」のことだと気づく日本人が何人いるのか。
安全保障の観点から日本はこの措置をとったのだけど、韓国側にはまったく通じていない。
上のことだけをみてもそれは明白。

ところで、なんで日本政府は韓国に対して輸出管理を強化したのか？
その理由も個人の価値観によっていろんな見え方があるから、ここでは確実な情報を提供しようと思う。

ことし７月、テレビの討論番組「日曜報道 THE PRIME（ザ・プライム）」に主演した安倍首相はこんな発言をした。

「韓国は（北朝鮮への）制裁をよく守っていると、貿易管理を確実にしていると主張しているが、国と国との請求権協定を破って約束を守らないのが明確だが、貿易管理規定もまともに守っていないと思うのが当然だ」

「韓国が言うのは信頼できない」

「欧州諸国はどの国も韓国を『ホワイト国』に指定しておらず、日本がアジアの中で『ホワイト国』に指定した国も韓国だけ」

「このような特別の優遇措置を今回やめようとしている」

「すべての国が（韓国に）取っている措置を日本だけがやめるというのではなく、逆にアジアで韓国だけを特別に優遇してきた日本が他の国と同様にするということ」

以上の内容はすべて正しい。
現に韓国側は日本との請求権協定（1965年の日韓請求権協定）を破っている。
すでに解決済みの徴用工問題を持ち出して、日本企業に賠償を払わせようとしているのだから。
慰安婦合意の実質的な破棄をふくめて、「韓国が言うのは信頼できない」と言うのはもっともだ。
それに日本はアジアのどの国も「グループA（ホワイト国）」にはしていない。
韓国をそこから外すというのは韓国への特別扱いをやめて、タイや中国など他のアジアの国と同じにするだけのこと。

ここでのキーワードは「信頼できない」だろう。
ここ一年の韓国のふるまいを見ても、ほとんどの日本国民はこれに納得するはずだ。
大事な約束を守らない相手が「貿易管理はしっかり行っている」と言っても信用されることはない。

こんな立場の日本政府に対して、きのう韓国側が「答え」を示した。

中央日報の記事（2019年09月03日）

韓国首相に会った河村氏「ＧＳＯＭＩＡ・ホワイトリスト、セットで原点に戻そうと提案受けた」

韓国を訪問した日韓議連の河村幹事長がイ・ナギョン首相と会談をおこなったさい、韓国側からこんな提案をうけた。

「韓国のGSOMIA（軍事情報包括保護協定）終了決定、ホワイト国から韓国を排除した日本の措置の２種類をセットで一緒に元へ戻すということはどうだろうか」

帰国した河村幹事長からこの報告を聞いた安倍首相の反応は早かった。

「徴用工問題の解決が最優先だ。国と国との国際約束だから、しっかり守ってもらいたい」と瞬時に却下。

日韓で軍事機密を共有して他にはもらさないという軍事情報包括保護協定（GSOMIA）と輸出管理強化はまったくの別問題だ。
安全保障と貿易の問題はそれぞれ個別に対応することで、交換材料になるわけがない。

でも、「韓国が言うのは信頼できない」と言われて、信頼回復の努力をすることは、韓国にとっては日本に屈することと同じ。とても屈辱的だ。
だから「自尊心の戦い」になる。
でも、日本は最初からそんな戦いを挑んでないから、日韓はまったくかみ合わない。
提案してもすぐに却下されてしまう。
ただ自尊を考えたら、約束を守れないことのほうが傷つくと思うのだけど。

いま韓国側は「自尊心戦いの段階を越えた」と、何かとの戦いを終えて別のステージに移っている。
韓国が見ているものは、日本には見えていない。
令和元年の日韓関係は最悪のまま終わるだろう。