これが日本人への差別?欧米の「文化の盗用」の考え方

 

いま日本で開かれているラグビーW杯。
日本がアイルランドを破るという伝説の試合は見逃したけど、カナダ代表のチームがバスから降りてくるシーンは見れたから、それでチャラにしよう。
いやならないけど。

カナダの選手が浴衣・下駄・鉢巻きの3点セットを身に着けていたのは話題になった。

 

 

この動画に寄せられた日本人のコメントを見ると、

・Hello!
Thank you for enjoying Japanese culture! Everyone is nice
・Welcome to Japan! Have a good stay!
・楽しそうでなによりだ。
リラックスするときはちゃんと緩めんとね。
・楽しそう
日本を満喫してください

と好意的なものばかり。
なかには、「Be careful!Wearing a kimono with the right side over the left is how dead people wear it.」と「左前」を注意する人もいたけど、まあドンマイ。
外国人が浴衣や着物を着るなど日本文化に親しんでいるのを見たら、日本人としてはうれしくなる人がほとんどだろう。

では、これはどうか?
3年前、ファッション誌「ヴォーグ」にモデルのカーリークロスさんがこんな姿で登場した。

 

この写真がヴォーグに掲載されると、「日本人への差別だ!」「日本文化を盗んだ!」という非難の声が殺到。
このコメントはモデルに日本人ではなく、白人を起用したことに怒っている。

「Why is the model white? Are there a shortage of Japanese Models in the world…Or if it ain’t white it ain’t right?」

カーリークロスさんはツイッターに謝罪文を投稿。

 

このときの日本人の反応はというと、先ほどとは反対で、「え?なんで?」と目が点になる人がほとんど。
これが「差別」や「盗み」というのなら、その被害者は日本人になる。
でも日本ではその理由がわからない人や「むしろうれしい」という人もいて、これで怒る人は、ボクが見た限りでは一人もいなかった。

アメリカ出身で白人のカーリークロスが着物を着るといのうは、他民族の文化を「appropriate」(私物化する、奪う)したことになる。
日本文化を“盗用”したということで、「本当に申し訳ないと思っています」と謝罪した。

これが欧米社会で「Cultural appropriation」(文化の盗用)と言われるものだ。
自分の人種や民族に属さない文化のものを身に着けると、「差別だ」などの批判が飛んでくる。
カーリークロスがチャイナドレスやインドのサリーを着ても、謝罪するはめになっていたと思う。

*日本人が怒る文化盗用というのは、他国の人間が「剣道や茶道の起源はわが国にある」と言い出すことで、白人女性が着物を着ているのを見て怒り出す日本人なんて無視していい。

 

カーリークロスは以前にもファッション・ショーで、ネイティブアメリカン(アメリカ先住民)が頭部にかぶる飾り「warbonnets」(下の写真)を着けていたことで「文化を盗用した」とたたかれた。

 

白人がこれをつけると“文化盗用罪”になる。
白人女性が着物を着るのもこれと同じ感覚。

 

くわしいことは英語版ウィキペディアの説明をどうぞ。

Several fashion designers and models have featured imitations of Native American warbonnets in their fashion shows,such as Victoria’s Secret in 2012, when model Karlie Kloss wore one during her walk on the runway; a Navajo Nation spokesman called it a “mockery”.Cherokee academic Adrienne Keene wrote in The New York Times:

Cultural appropriation 

 

でもこうなると、日本人も欧米の伝統衣装を着ることができなくなってしまう。
*ネイティブアメリカンのもの以外に、「アメリカの伝統衣装」なんてものがあるか知らないけど。
カナダ代表チームが着物を着ていても、日本だから問題はなかったけど、あれと同じことを別の国でやったら、きっと「文化を盗用した!」というクレームがくる。

面倒くさい世の中だ。ということを友人のアメリカ人も思っていた。
彼の話では、「Cultural appropriation」(文化の盗用)という考え方は欧米社会にあるけど、実際にそれで文句を言う人は本当に少ないらしい。

くわしいことはこの記事を。

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。