カナダ人留学生と日本を深掘り
静岡県に住むカナダ人留学生の「アリ」は、カナダからやって来た友人と白川郷を目指した。その理由は、意外にも「聖地巡礼」だった。
さらに、彼らは日本の電車の正確さに「都市伝説じゃなかった!」と感動。
ではこれから、20代のカナダ人(♂)が日本で感じたことを書いていこう。
バケットリストの上位、冬の白川郷へ
ーーこの前、カナダから手紙が来たんだって?
アリ:いえ、友人のライアンです。それに今は21世紀ですよ。
※元ネタは1978年の大ヒット曲「カナダからの手紙」。この曲の影響でカナダの認知度が急上昇し、その年の日本人観光客が3割も増えた。カナダのイメージを変えた歌でもある。
ーーああ、友だちだったか。で、そのライアン君をどこへ連れて行ったんだ?
アリ: 白川郷です。ずっと前から、私たちの「バケットリスト」の上位に白川郷があったんです。ところで、この言葉は日本語になっているって聞いたんですけど、そうなんですか?
ーーだね。キャッチー(耳に残りやすい)な言葉だから、最近は「バケットリスト」を使う人が増えてきた。逆から考えれば、もともと日本には「人生でやりたいことを書き出す」という発想は薄かったかも。遺言を書くことは大昔からあったけど。
アリ:原因をつくった私が言うのも何ですけど、旅話の楽しい雰囲気が吹っ飛びましたね。
外国人オタクを惹きつける「聖地巡礼」の魔力
ーー閑話休題(それはさておき)。
旅行先として、1月の白川郷は良いチョイスだ。合掌造り集落と雪景色のコラボは日本人でも憧れる。アリとライアンもその景色が目的だったんでしょ?
アリ: それもありますけど、私たちの一番の目的は「聖地巡礼」なんです。
ーーアニメやドラマに出てきた場所をめぐる、あの「聖地巡礼」?
アリ: そうです。
ーー英語で、その意味での「聖地巡礼」って言葉はあるの?
アリ:宗教的に重要な施設を訪れる「Pilgrimage(ピルグリミッジ:聖地巡礼)」ならありますけど、ポップカルチャーの舞台をめぐる専用の言葉はないです。
ーー知り合いのベトナム人とトルコ人は『スラムダンク』が大好きだから、鎌倉で「聖地巡礼」をしたと言ってた。
海外でそういう「聖地巡礼」は有名なの?
アリ: アニメファンなら知っている、という感じですね。作品の世界を追体験するこの文化は、すごく日本的で面白いです。
ーー確かにあれは外国人には出てこない、日本独自の「ガラパゴス的進化」をとげた発想かもしれないな。で、白川郷は何の「聖地」なんだ?
アリ: 『ひぐらしのなく頃に』です。
ーーそうなんだ! かわいい少女が残酷な事件を引き起こすあの「鬱アニメ」って、白川郷が舞台だったんだ。
アリ: そうなんです。私とライアンは『ひぐらし』が大好きだったから、日本に来たら絶対に行こうと決めていたんです。
ーーそれで白川郷へGOしたと。
アリ:めんどくさいのでスルーしますね。私やライアンみたいなアニメの大ファンなら、日本自体が憧れの「聖地」なんです。
ーー知人のインドネシア人は新婚旅行で、サウジアラビアのメッカへ行った。イスラム教では最高の聖地だからね。
アリ:それはガチなやつですね。
ーー15世紀にコロンブスが黄金を求めて「ジパング」を目指したように、現代の外国人は「物語の追体験」を求めてやってくるわけだ。
アリ:あくまでオタク界隈の話です。ムスリムのメッカ巡礼とちがって、かなりユルい巡礼です。
![]()
都市伝説じゃなかった!「日本の鉄道」の正確さに感嘆
ーーライアンは初めての日本で、何が一番印象に残ったと言ってた?
アリ:「日本の鉄道」が断トツだと思います。
彼は電車を何度も使って移動していて、「1分単位で正確に動く、というウワサは都市伝説じゃなくて事実だった!」って感動していましたから。
ーー「ラピュタは本当にあったんだ!」みたいな気持ちかな。
日本の鉄道は1872年(明治5年)にイギリスをモデルに始まって、イギリス人技術者のモレノは今でも「日本の鉄道の恩人」と呼ばれている。
でも、今や弟子が師匠を追い越した。イギリス人が日本に来て、あまりの正確さに「これは奇跡!」と驚くほどだからね。
アリ:日本に10ヶ月住んでいる私も、本当にスゴいと思います。鉄道網が隅々にまでつながっているから、アクセスがすごく楽です。それに、時間に正確ですから計画も立てやすい。カナダ人からすると、この快適さと便利さは衝撃的ですね。
「鉄道の発達」と「初詣」の意外な関係
ーーじつは、日本の鉄道がここまで発展した背景には「聖地巡礼」が関係している。
アリ: どういうことです?
明治時代、鉄道会社が乗客を増やすために「列車に乗って遠くの神社へ初詣に行こう!」ってキャンペーンを仕掛けた。それが成功して、それがきっかけで、今のような正月行事としての「初詣」が定着したと言われている。
インドネシア人が「日本の電車はスゴイけどイラナイ」と言うわけ
アリ: 昔の日本人は信心深かったんですね。
ーー今よりはね。それと、日本人は昔からキャンペーンに弱い。バレンタインデーやクリスマスがそれを証明している。

カナダの博物館(たぶん)
カナダは「カーセントリック(車社会)」
ーーカナダに電車はないの?
アリ:あるわっ! でも日本に比べると全然発達していませんね。カナダはカーセントリック(車社会)な国なんです。
※カーセントリック(Car-centric)とは、「カー」と「セントリック(中心の)」を組み合わせた言葉。
ーーアメリカもそうだよね。 カナダと何か共通点があるのかな?
アリ: 北米では、自動車会社の力が強かったから、政治家に働きかけて、鉄道よりも道路を優先させたって話があります。
ーー利権が発展をジャマしたのか。
日本でも、自動車会社が大きな影響力を持っていますよね? そんなことはなかったんですか?
ーーどうなんだろ。鉄道利権がそれを上回っていたとか?

カナダにこそ新幹線が必要なわけ
アリ: 私もライアンも新幹線にホレました。正確で、静かで、清潔です。あの快適さには乗客のマナーの良さが不可欠ですが。
カナダは世界第2位の広大な国だから、高速鉄道が必要なんです。
ーー日本の26倍以上の面積がある国なのに、日本でいう「鈍行」はあっても、新幹線みたいな高速鉄道はないんだ?
アリ: カナダにもアメリカにもまだありません。全土は無理でも、経済発展のために、主要都市を結ぶ高速鉄道は必要です。
ーーその時は、ぜひ日本の新幹線システムを選んでほしい。インドネシアみたいに後悔させないから。
※現在、カナダではトロント〜ケベック間で高速鉄道計画が進められている。もしこれが完成すれば、現在トロントからモントリオール(約550キロ)まで約5時間半かかっているところ、「のぞみ」を基準にすれば時間を半分ほどにカットできる。
さあ、日本の新幹線技術を採用するんだ。

コメント