2020防衛白書で、日本が「韓国との協力」を削除した理由

 

日本が発表した2020年度版の防衛白書で、韓国に関して昨年にはあった「幅広い分野での協力」という記述が削除されていた。
それで韓国側は「冷遇」されたとご立腹。

聯合ニュースの記事(2020.07.14)

20年版防衛白書 韓国を冷遇=「幅広い協力」削除

その理由のひとつは2018年の旭日旗掲揚問題で、このとき韓国の与党議員が日本を「永遠の二等国」と呼んで日本側を怒らせたことは前回の記事で書いた。

【永遠の二等国】防衛白書で日本が韓国を「冷遇」したワケ

今回は防衛白書に指摘されている別の冷遇理由、2018年のレーダー照射問題について書いていこうと思う。

 

この年(平成30年)12月20日、日本海で自衛隊機が韓国海軍の駆逐艦から射撃用レーダー(火器管制レーダー)で照射される出来事が起きた。
これは相手に銃口を向けるような危険な行為で、友好国に対しては絶対にあり得ない、あってはならないことだ。
それで日本政府が韓国に抗議したところから、今回の「冷遇」につながる問題がぼっ発。

くわしい経緯はここをクリック。

岩屋毅防衛大臣が記者会見を開き事件の内容を明らかにした。記者団に「韓国側の意図ははっきりと分からない」としつつ、「極めて危険な行為だ」と批判した。

韓国海軍レーダー照射問題

 

「極めて危険な行為だ」と怒った日本に対する韓国側の説明は酷かった。

「当日は悪天候だった」、「北朝鮮の遭難船を探していた人道的行為をしていた」などと説明していたけど、のちに防衛省が公開した映像によって、それが「ウソ」だとバレる。

韓国側は当初、日本がここまでするとは予想していなかったらしい。

 

当日は気持ちいいほどの青空が広がっていて、北朝鮮の船は駆逐艦の目の前にあった。

 

はじめ韓国側は自衛隊機へのレーダー照射を認めたけれど、あとになって「照射はなかった」と説明を一変させる。
こんな態度にいつもは韓国にやさしい朝日新聞もさじを投げて、社説「日韓防衛摩擦 不毛な悪循環を避けよ」(2018年12月27日)でこう書いた。

「発生から時間が経つにつれて韓国側が説明を変えたのは不可解であり、混乱を深めた」

「最近の韓国軍には、理解しづらい動きが目立つ」

「一連の韓国軍の動きにもし、民族主義的な感情が影を落としているのなら看過できない。」

同じくいつもは韓国に配慮する毎日新聞も、社説「海自機にレーダー照射 韓国に明確な説明求める」(2018年12月27日)で韓国を、「不可解なのは、韓国側の説明が変遷していることだ」「韓国側の説明は不自然」と非難した。

くわしいことはこの記事を。

レーダー照射:朝日・毎日も見放す韓国。原因は反日感情の嫌がらせ?

 

もともと韓国に厳しい自民党議員は怒り心頭で、小野寺前防衛相は「今回の件に関しては、わたしは、政府はもっと厳しく韓国に対して対応すべきだと思っている」と話し、新藤元総務相は「今、韓国全体が情緒で動いてしまっている。政権の運営能力はもうない。外交は死んだも同然」とあきれた。

*朝日新聞の指摘した「民族主義的な感情」とここで言う「情緒」は同じものとみていい。つまり反日感情だ。

別の自民党議員は「韓国という国はここまでおかしくなったのか」、「国としての謝罪が最低ラインだ」と怒り、自民党の会合では韓国側の説明について「うそをついていると言わざるを得ない」という声が飛び出した。

 

このとき多くの国民も「謝罪が最低ライン」と思っていたけど、それが通じる相手ではない。
韓国側は「自衛隊機が危険な低空飛行をした」と言い出して、日本に謝罪を要求し始めた。
このとき自衛隊機は国際法を守って飛んでいたから、この主張はあり得ない。

でも韓国国内では、「『神風』連想させる飛行を日本が行った」とメディアが批判して反日感情をあおりまくる。
こうなると韓国も国として一歩も引けなくなる。
そんな隣国との交渉の様子は防衛省ホームページ「火器管制レーダーの照射について」にくわしく書いてある。

たとえば防衛省が韓国側に「脅威的な低空飛行」の根拠を提示するよう求めたけれど、

同機が「低空で脅威飛行した」との韓国側の主張を裏付ける客観的根拠は何ら示されていません。

という状態。

 

このときの韓国側の主張はヒドイの一言。

韓国側からは、そのようなものは示されず、逆に「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」などの全く客観性に欠ける回答を繰り返しています。

 

客観的な根拠はなくても、こちらが脅威を感じたら自衛隊機は危険な低空飛行したことになる。だから日本は韓国に謝罪しなければならない。
韓国側はずっとこんな態度だったから、日本は話し合いを打ち切った。

これ以上実務者協議を継続しても、真実の究明に至らないと考えられることから、本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難であると判断いたします。

「最低ライン」の謝罪は当然、受けられず。

ちなみに、客観的な根拠を提示しないで、「こちらがそう感じたらそれは事実だ」と言って、日本に反省や謝罪を求めるのは慰安婦問題でも元徴用工問題でも同じこと。

 

日本が今回の防衛白書で韓国を「冷遇」したのも、ことの経緯を振り返ればナットクナットク。
これで一体どうやって、「幅広い分野での協力」が可能だというのか。

でもこう書くと、「韓国にそんな態度をとらせた日本が悪い。ネトウヨめ」というコメントをいただくのですね。
ええ、わかってます。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。