「日本に圧倒的に勝った」はずの韓国、静かに関税を撤廃

 

「韓国は日本製の産業用バルブに不当な関税をかけている!すぐ撤廃するべきだ」

日本がそう主張し、韓国を世界貿易機関(WTO)に訴えた判決がきょねんの9月に下された。

でも残念ながらこの日韓戦は日本の負けで、WTOは韓国の措置を正当と認めた。

韓国の全国紙・ハンギョレの記事で、あちら側はこんな勝利宣言をおこなっている。(2019-09-11)

韓国産業部の関係者は「一般的に判定の勝敗は最終判定をすべて履行した時に、既に取られた措置(関税追加賦課)が維持されるか否かにより分かれ、今回の場合は韓国が圧倒的に勝った判定」と説明した。

「日本製空気圧バルブ関税」WTO紛争で韓国が“判定勝ち”

 

中央日報も韓国勝訴を高らかに宣言。(2019.09.11)

韓国、日本と空気圧バルブWTO紛争の大部分で勝訴

 

でも同じ日の日本メディアを見ると、不思議の世界に迷い込む。
例えば朝日新聞は韓国メディアの逆で、日本勝訴と報道している。(2019年9月11日)

韓国による日本製の産業用バルブへの反ダンピング課税について、WTO協定違反とする判断を下した。2018年の第一審判決に続いて日本の主張を認め、日本の勝訴が確定した。

韓国の反ダンピング課税はWTO違反 日本の勝訴が確定

 

WTOは韓国による関税の引き上げを違反行為と認めたため、日本の勝利が確定したという。

日本経済新聞も同じだ。(2019/9/11)

日本製バルブ関税、韓国に勝訴 WTO最終判決

 

日本と韓国は互いに鏡の国だから、同じものが左右反転して映ることがよくある。
その代表例が伊藤博文を暗殺した安重根で、韓国で安は英雄だけど、日本ではテロリストと認識されている。
でも歴史認識ではなく、WTOの判断について「韓国が圧倒的に勝った判定」と「日本の勝訴が確定した」と見方がまるで違っているのは異例。

 

結局、勝ったのは日本か韓国か?
その真のファイナルアンサーがきょう判明した。

産経新聞の記事(2020/08/19)

韓国、WTOで日本に“敗訴”した産業用バルブ課税を撤廃

「韓国は日本製の産業用バルブに不当な関税をかけている」という日本の主張はWTOに認められ、「関税を撤廃するべき」という要求についに韓国政府が応じた。
もはや完勝。
その証拠に、これについて韓国政府は公式コメントを出していない。
日本の要求を黙って受け入れたことになる。
恥ずかしがり屋の韓国に代わって、日本の経産省がきょう課税措置撤廃を確認して発表した。

 

韓国がこの関税を撤廃しなかったばあい、勝訴した日本は韓国に対して、追加関税を課すなどの対抗措置を取ることが可能だった。
きのう8月18日がそのギリギリの期限で、韓国が撤廃したことで、日本の報復は何とかまぬがれることができたわけだ。
韓国の粘り強さをホメるべきか、往生際の悪さにあきれるべきか。
ただ関税を撤廃しても、韓国はたぶんWTO敗訴を認めない。

 

でもきょうのこの事態は、日本メディアの報道を見ていればほぼ確定された未来だった。

共同通信の記事(2019/9/30)

WTOで日本勝訴が確定 バルブ課税、韓国は認めず

客観的には日本の勝ちでも、韓国はどうしてもそれを認めることができない。

「今回の場合は韓国が圧倒的に勝った判定」と韓国産業部の関係者が豪語してから約1年後、韓国は静かに関税を撤廃した。

韓国政府がこうすることは、ほとんどの人には見えていたはずだ。
日本に対抗措置をとられたら韓国側はダメージを受けるけど、これはWTOに認められた正当な措置だから、韓国は世界に向けて日本の不当性を訴えることもできない。

韓国はもう詰んでいたけど、最後の最後まであがいていただけ。
*本当の是正期限は5月30日だったけど、韓国政府はこれを無視してきのうまで関税をつづけていた。

 

日本に対して負けを認めるということは、韓国政府にとっては究極の不可能といっていいほどむずかしいことだから。
中央日報もハンギョレもこの件については沈黙したままで、今のところ何も報じていない。
だから韓国メディアしか見ていない人は、いまだに「韓国は日本に対して圧倒的に勝利した!」という夢からさめていない。

 

現実には負けたけど、その事実を認めるのは辛すぎるから、強引な理解をして自分が勝ったと思いこむ。
そんな心理状態を韓国では「精神勝利(法)」と言う。

文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済政策「Jノミクス」は失敗だったにもかかわらず、文政権はそれを認めずに、うまくいっていると国民にアピールする。

中央日報がコラムでそんな韓国政府をこう皮肉った。(2018.08.21)

戦いで負けたのに「私が勝った」と思い込む自己慰安を「精神勝利法」という。(中略)Jノミクスを主導する青瓦台(チョンワデ、大統領府)はまだ希望を持っている。ひたすら「自分の考えが正しい」という一種の確証偏向で精神勝利法に陥っているためだ。

【噴水台】Jノミクスの精神勝利法=韓国

 

独善的で視野の狭い人間は自分の願望を優先して、すべての事がらをそれに合わせて解釈してしまう。
最初に結論を決めておき、それに応じた材料を取捨選択して予定通りのゴールにたどり着く。
現実や事実は後回し。
韓国のそんな精神勝利法は、慰安婦問題や元徴用工問題などいろんな分野で見ることができる。
韓国について正しく知りたいときは、韓国メディアが報道しないことを知るのが有効だ。

 

 

現実では自分は敗者だけど、心の中では勝者と思い込んでプライドを保とうとする「精神勝利」の発想は、中国人作家の魯迅(ろじん)の作品「阿Q正伝」に出てくる。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。