韓国国民が近ごろ、慰安婦問題や反日への関心を失ったワケ

 

慰安婦問題といえば韓国国民にとって、アイデンティティに関わる最も重要な社会問題で、日本に対して心を熱くするもの。
だったはずなのに、最近は様子がおかしく少し元気がないらしい。

週刊新潮の記事(2020年12月3日号掲載)

元朝日「植村隆」敗訴に韓国が沈黙する理由 国民の慰安婦問題への関心が薄れて

自分の書いた記事が「ねつ造」などとと言われたことで、元朝日新聞記者の植村隆氏がジャーナリストの櫻井よしこ氏らを名誉毀損で訴えていた裁判で、このほど最高裁が植村氏の上告の棄却を決定。
よって植村氏の敗訴が確定した。

植村氏は慰安婦問題について書いた記事で韓国の女子挺身隊と慰安婦を結びつけ、日本が若い韓国人女性を強制連行したといった内容で報じる。
この背景を調べた櫻井氏は「植村氏の「誤報」は単なる誤報ではなく、意図的な虚偽報道と言われても仕方がないだろう」と非難し、植村氏は「名誉毀損に当たる」と訴えたものの最高裁は櫻井氏の主張を認めた。

「ねつ造記事を書いた」という訴えを、最高裁が“真実相当性”があると認めたというのはちょっとすごい。逆に植村氏の記事は本当にムゴかったことになる。

記事によると、一審も二審も櫻井氏側に“真実相当性”を認め、植村氏の請求を退ける判決を出していたというから、韓国人女性を強制連行したという記事は誤報ではなく、氏による「でっち上げ」と断定していいだろう。
これによって、韓国世論は日本への憎悪を深めたというから本当に罪深い。

毎日新聞のソウル特派員だった重村智計氏は「植村君の取材が甘かった、というのがこの問題の本質なのです」と話す。

 

韓国寄りの日本人の慰安婦問題についての訴え退けられたというのに、韓国国民が「沈黙する理由」は国民の慰安婦問題への関心が薄れたからという。

記事の中で韓国人記者がいまの社会の空気をこう説明する。

「一番大きいのは、今年の5月に判明した慰安婦支援団体・正義記憶連帯における支援金の不正流用疑惑の影響です。現在、ドイツの慰安婦像が話題になっていますが、これに対しても“どうして外国まで行ってこんなものを作るのか”“今度はドイツで流用か”と批判的な論調が目立つようになった」

 

市民団体の正義連は慰安婦おばあさんを支援するとアピールしておきながら、当の元慰安婦からことしの春ごろ、カネ集めために何十年も利用されつづけ、自分たちのためにお金は使われなかったと暴露され、国中が大騒ぎとなった。
元理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏が国民からの募金を自分の口座に振り込ませていたのが発覚して、韓国国民の怒りは倍増、激増。
正義を名乗って不正を行っていたことに、当時の野党議員はこう迫った。

「普通の人は一生で家1戸も現金で買うのが難しいのに、尹氏の家族は5戸を全て現金で購入した。個人口座で募金した現金がどこに流れたのかを検察の捜査で必ず解明すべきだ」

 

ドイツの慰安婦像について言えば、設置されているベルリン・ミッテ区議会が、少女像を永久保存するといった内容の決議案を通過させたから、撤去を求める日本の主張は退けられて韓国側の理想に近い展開となった。
でもその割には、韓国で大きな声で「勝利宣言」が出ていないから違和感を持っていたのだけど、「どうして外国まで行ってこんなものを作るのか」といった批判的な論調が韓国で目立つようになったと知って納得。

国民が慰安婦問題への関心や反日への熱を失ったきっかけは、文在寅大統領の“変節”にもあると記事は指摘する。
これまで反日一辺倒だった文政権が最近になって、関係改善を求めて日本への攻撃的な言動を引っ込め、菅首相に笑顔を見せるようになった。
でもこれは、もうすぐアメリカの新大統領となるバイデン氏へのアピールらしい。

韓国の政治家は、15年の日韓最終合意にあたり、歴史観で韓国寄りの立場を取ることの多かった民主党のオバマ政権から強い圧力をかけられたことに衝撃を受けた。バイデン新政権下で同じ轍を踏むまいと、慌てて反日を封印し、ボールが日本側にあることを演出しているんです

 

トップの手のこんなひら返しを見ればバカバカしくなって、熱が冷めて夢から覚めるのも必然。
それに韓国では近ごろコロナウイルスが爆発的に広がっていて、ソウルは市内の飲食店に午後9時以降の店内での飲食禁止を要請して、副市長は「絶体絶命の危機を迎えている」と言う。
日本と同じで、国民の関心はコロナに集中しているはずだ。

それでもまだまだ韓国社会には反日感情が根強くあるし、上の過程についてツッコミどころは多々あるけれど、慰安婦問題で以前ほど反日のボルテージが上がらなくなったのはいいことだ。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

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暴かれる韓国の「慰安婦ビジネス」、正義連の“正義”に批判集中

【慰安婦問題のいま】真実を知り、冷たくなった韓国人の目

 

3 件のコメント

  • > 毎日新聞のソウル特派員だった重村智計氏は「植村君の取材が甘かった、というのがこの問題の本質なのです」と話す。

    いやはや、この無責任なコメントこそが、現代日本ジャーナリズムの歪みを表しているとしか。
    取材が甘かった? そんなことが問題の本質じゃありません。
    取材が甘いだけではなく、予め先入観に基づいて取材活動を行い、自分の好みに合った素材だけを取り上げて、自分の好みに沿った方向の目的記事を書く、それこそがこの問題の本質だと私は思いますが。

  • だって日本国内では吉田の話が出回った時に秦教授が済州島含めて現地に実地調査に入って本人から捏造だったと白状させている。

  • > 慰安婦問題といえば韓国国民にとって、アイデンティティに関わる最も重要な社会問題で

    日本人でも戦時慰安婦は大勢いました。私は個人的にも知っていますけど。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。