４年の反日から、“突然親日”の文大統領に怒る韓国メディア

どっちがチキン（臆病者）かを競うのがチキンレース。
先にレース（ゲーム）を降りたほうが、「勇気のない人間」として屈辱を味わうことになる。
韓国の裁判所が2018年10月30日、元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じる判決を出したことで、日本の韓国が（不毛な）チキンレースがはじまった。

この問題は1965年の日韓請求権協定ですでに解決済みで、国家間の合意を一方の国が国内法でひっくり返すのは国際法違反だ！と主張する日本政府は、韓国政府にその是正を強く求めた。

それに対して文大統領は2019年１月に行われた新年の記者会見で、「日本政府がもっと謙虚な姿勢を持つべきだ」と日本の態度に不満をにじませ、判決に対して日本政府は「やむを得ないという姿勢を取るべきだ。（中略）未来志向の関係を損ねるのは望ましくない」と述べた。

日本は判決の受け入れを拒否し、韓国政府に国際法違反の状態を正すよう求める。
韓国はそれを拒否して、日本に判決を受け入れるよう求める。
両者の主張は真っ向から対立しているから、日韓はぶつかり合うしかない。

判決の翌年に、日本政府が対韓輸出の厳格化を発表すると、韓国政府はこれを「経済侵略」だと強く非難し、文大統領は「（日本には）二度と負けない！」と国民をあおる。
これで反日感情に火がつけられた国民は激しい日本製品不買運動を展開し、日本製品をゴミ箱に捨てるといったパフォーマンスを行った。
その映像を見せられた日本人のあいだでは「嫌韓感情」が高まり、両国関係は戦後最悪といわれるほどに悪化する。

日本製品のボイコットを呼びかける旗
ソウル市内で知人のアメリカ人が見かけたもの

双方が一歩もゆずらないうちに時間だけが過ぎていき、状況はますます悪化。
とうとう原告側が韓国内にある日本企業の資産を現金化する、その一歩手前まできてしまった。
もしこれが現実になったら、日本は韓国に相応の制裁を加えるのは必然。対して韓国はそれに報復するのも必然だから、日韓はジ・エンドに近い状態になってしまう。

そんななかで迎えた2021年の新年の記者会見で、文大統領が現金化について「望ましいと思わない」と発言し注目を集める。
いままで「政府が司法に介入することはできない」と言いつづけてきて、実質的に事態を“放置”していたのに、ここにきて否定的な見方をしめす。
さらに、内容に不満を持っていて実質的に破棄した慰安婦合意については、「両国政府間の公式合意だったという事実を認める」と国民の前で明言した。
文大統領が上のような認識をしめしたのは今回が初めて。

この君子豹変っぷりは、日本にとっては望ましいものだけど、ことばだけでは信用できない。このあと韓国側が具体的な行動を見せるかどうか、いま日本はそれを見極めている最中だ。

「チキンレース」でいえば日本の“勝ち”に見えるが、約束を破られて国際法まで否定された日本は、まさに踏んだり蹴ったりの状態だから勝者の気分にはとてもなれないはず。

そして韓国内では、文大統領の変化に怒る人がいる。
それまで文政権は国民に反日姿勢をアピールして、これを政治的に利用して支持を集める一方、韓日関係は悪化するだけ悪化させてきた。
それが突然態度を変えたのだから、韓国メディアの朝鮮日報が社説でこう怒る。（2021/01/20）

今になって裁判所の判決を無視して「外交的解決法を探そう」と言っている。2015年の韓日慰安婦合意を破棄した張本人である文大統領が「（あの合意が）両国政府間の公式合意だったという事実を認める」と言った。過去4年間、韓国政府が繰り広げてきたことは全く何だったのか。結局、何の方策もなしに国内政治用として利用したにすぎなかった。

「日本企業資産の現金化は駄目」と急変…4年間の反日追い込みはなぜやったのか

政権側はいままで韓日の政治問題について、国内の誰かが外交的解決法を語ると「親日派（＝裏切り者）」「土着倭寇（わこう）」とレッテルを張ってその口を封じてきた。
なのにいまでは、自分が「親日派」の立場に立っている。

日韓合意を破棄し、日本には二度と負けないと言って国民を「反日の先兵」に駆り立てたことをふくめ、この４年間で政権がしてきた反日追い込みは一体なんだったのか？
結局はただの政治利用でしかなかった。