【人類のために働いてみせます】ナチスの虐殺・アンネの思い

 

アンネ・フランクという、人類が忘れてはいけない少女がいる。
それはもちろん知ってたけど、そのアンネが日記を書き始めたのたは1942(昭和17)年の6月12日で、その日が「アンネの日記の日」という記念日になっていることはきのう初めて知った。

なので今回は人類史に残る最大級の不幸と、それを象徴する少女について書いていこう。

 

ユダヤ人というひとつの民族を国家が意図的・計画的に抹殺しようとしたのが、ナチス=ドイツによるホロコースト。
このときナチスによって虐殺された600万人のユダヤ人の中に、アンネ・フランクという少女がいる。

 

 

人種差別主義者だったヒトラーらナチスは「劣等」なユダヤ人をどうするか考え、結局、絶滅するにした。
それが「ユダヤ人問題の最終的解決」で、ヒトラー(総統)の側近だったゲッベルスは日記にこう書く。

総統は、ユダヤ人が新たな世界大戦を引き起こすのであるなら、彼ら自身を破滅させることを警告した。これは意味の無い言葉でなく、世界大戦は起こっている。ユダヤ人の破滅は結果として必然だ。我々はそれに対して感情的になってはいけない。ユダヤ人に対して思いやりを持ってはいけない。

ユダヤ人問題の最終的解決

 

その”必然の結果”のために、ナチスはこんな収容所をつくる。

 

このアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所では150万人以上のユダヤ人が殺害されたという。

 

収容所に着くとこれからシャワーを浴びると言われ、ユダヤ人が部屋に入ると毒ガスが噴射されて、数十秒で大量の人間が一度に殺害された。

 

 

その後、死体は焼却される。

上の画像は「NHK 映像の世紀 第5集」から。

 

国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が政権をにぎると、アンネの一家は迫害から逃れるため、ドイツからオランダのアムステルダムへ亡命する。
そこで1942年6月12日、13歳になったアンネに父親が誕生日祝いとしてサイン帳をプレゼント。
「世界で最も有名な日記」はここから始まった。
その後、オランダがドイツ軍に占領されると「ユダヤ人狩り」が始まり、1942年7月6日に一家は下の建物の隠れ家で息を殺しながら生活することとなる。

左が普通の住居で、右の建物に「隠れ家」があった。

 

画像は「Alexisrael

 

この本棚で隠れ家への入口を隠していた。

画像は「Bungle

 

潜伏生活をしていた中学生のアンネは、無事を願って日記にこう書く。(1944年4月11日)

自分が何をもとめているかも知っていますし、目標も、自分なりの意見も、信仰も、愛も持っています。わたしがわたしとして生きることを許してほしい。そうすれば満足して生きられます。わたしには自分がひとりの女性だとわかっています。

しんの強さとあふれるほどの勇気とを持った、一個のおとなの女性だと。もしも、神様の思し召しで生きることが許されるなら、わたしはおかあさんよりりっぱな生きかたをしてみせます。つまらない人間で一生を終わりはしません。きっと世のなかのため、人類のために働いてみせます

「アンネの日記 完全版 (文春文庫)」

 

このあとアメリカ・イギリス軍ら連合軍がやって来てナチスと交戦を始めたと知り、よろこびを隠せないアンネ。

「《隠れ家》はいまや興奮のるつぼです。いよいよ待ちに待った解放が実現するのでしょうか?」
「うまくゆけばわたしも、九月か十月にはまた学校へ行けるようになるかもしれません」

しかしそれより先に、悪魔に見つかってしまう。
1944年8月4日、建物の前に車が停まり、そこから降りてきたナチス親衛隊のジルバーバウアーによってアンネの家族はみな捕まった。
これは後に本人が証言した、そのときの様子。

それからその家具が一方に押し開けられるとその奥に家の最上階へ続くもう一つの階段が出現しました。私はピストルを抜き、オランダ人警官たちとともに階段を上りました。

カール・ヨーゼフ・ジルバーバウアー 

誰が密告したのかは分かっていない。

 

このあとベルゲン・ベルゼン収容所へ送られたアンネはまだ生きる希望を捨てず、そこで再開した知り合いにこう語る。

「私にはまだ学ばなくちゃいけないことがたくさんある」

でもその望みがかなうことはなく、食べ物が少なくて、目が浮き上がっているように見えたというアンネはチフスにかかって収容所の中で16歳で亡くなった。
これがナチスによる「ユダヤ人問題の最終的解決」の中身。
ただ、「きっと世のなかのため、人類のために働いてみせます」という誓いは、父親からもらった日記がかなえてくれた。

 

アンネ・フランク像(アムステルダム)

 

 

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1 個のコメント

  • しょっちゅう、日本のことを「現代のナチスだ!」と非難する国がありますが、この記事に出ている「アウシュビッツ収容所」を実際に訪問して、そこに残された数々の蛮行の跡などを目にした者がどれほどいるのですかね? また、「アンネの日記」を読んだことのある者が、どれほどいるのですかね?
    おそらく、両方ともに日本人の方がはるかに多いと思いますよ。

    ま、自国民に分かりやすく敵の存在を示すことにより、国民を団結させ、支持率を高めること、そんな方法こそがナチスの得意な手法なのですが。そのために「宣伝大臣」まで設置したのは、ナチス・ドイツが世界史上で唯一なのでは?
    そう言えば、海外に民間団体の形で「宣伝会社」を設立して、日本を貶める広告活動をしているVANKとかいう団体がありましたね。民間団体とか言いながら、政府の補助金が出ていたと思いましたが・・・。
    ナチス顔負けですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。