来年5月で大統領の任期が切れる韓国の文大統領。日本統治から解放された8月15日の記念演説は今回で最後になるが、「戦後最悪」といわれる現在の日韓関係については、そこで”有終の美”を飾ることはできかった。
文大統領は関係悪化の最大原因となっている過去の問題について、
「正さなければならない歴史問題に対しては、国際社会の普遍的な価値と基準に沿った行動で解決していく」
と強調し、日本には「韓国政府は対話の扉を常に開いている」と述べた。
対話によって問題を解決し、関係を改善させたい気持ちは日本も同じだ。しかし、それには必要不可欠な条件がある。
日韓関係がここまで最悪となった決定的な原因は、2018年に韓国最高裁が日韓請求権協定をひっくり返し、国際法違反の状態を生み出したこと、そして韓国政府がその状態を放置してきたことにある。
日本政府に反省や謝罪を要求するだけならまだよかったが、日本企業に実害を与えるとなるとこれは一線を越えている。裁判所が日本企業に賠償を命じ、その資産を(日本から見れば)不当に奪う判決を出し、おまけに政府が黙認するとなると、日本政府も「遺憾を表明する」だけでは済まない。
文大統領はこの合意違反について言い訳をするだけで、まったく是正しようとしなかった。2年前、読売新聞がその無責任な態度を社説で批判した。(2019/01/11)
徴用工問題 文氏は判決を言い訳にするな
読売新聞は文大統領に対し、
「国家間の取り決めに基づく義務を逃れることは許されない」
「対日外交を安定化させる責任を放棄しているのではないか」
正論を突きつける。
そして、自分たちが解決しないといけない問題を「日韓が知恵を集めて解決すべきだ」と日本にも責任を負わせ、具体的な解決策を出さない文大統領を「人ごとのような態度は納得できない」と断罪した。
これは日本国民の声でもある。
しかし、文大統領にこうした声は「カエルの面に水」でまったく効いていない。それどころか、徴用工問題について「韓国政府が作り出したものではない」と開き直り、日本に「過去の不幸な歴史」に対する「謙虚な姿勢」を求めた。だから、読売新聞に「判決を言い訳にするな」と叱られた。
最高裁が国際法に違反する判決を出したこと、そして韓国政府がその状態を放置してきたことが「戦後最悪」の始まりなのに、文大統領はこれを”真の謝罪”をしない日本のせいにしてきた。
もちろん、そんなことはない。例えば2015年の慰安婦合意で、当時の安倍首相が心からのお詫びの気持ちを表明して10億円の支援金を渡し、それを受け取った韓国側は「最終的な解決」に合意した。
約束を破った側が、守った側に反省を要求する。日本政府はそんな斜め上の認識を持つ文政権に呆れ果て、「戦略的な無視」をするようになり、韓国側が解決案を提示するまでトップ同士の話し合いを拒否してきた。文大統領はそんな日本に「謙虚な姿勢」を逆要求してきたから、話し合いにならない。
しかし、ここにきて、文大統領は韓日関係の改善をわりと本気で考えるようになってきた。
それで、日本を直接非難するようなことは言わなくなったが、無責任は相変わらない。
ことし3月の「3・1独立運動」で行った演説でも、「韓国政府はいつでも日本政府と向き合い、対話する準備ができている」と強調するだけで、自分たちが解決案を出す意思はまるで見えない。
今回の8月15日の記念演説でも、関係改善への意欲を示すだけで具体的な中身は無かった。ハンギョレ新聞の分析によると、文大統領は未来志向の韓日関係をもうあきらめようだ。(2021-08-17)
これは、8日に閉幕した東京五輪を、韓日はもちろん南北の関係を改善する重要な機会にしようとした試みが見送られた中で、任期内に状況を好転させるきっかけを作るのが事実上難しくなったと判断したためとみられる。
北朝鮮には共存、日本には対話…新たな提案なき文大統領の光復節演説
「韓国政府が作り出したものではない」と開き直り、日本に「謙虚な姿勢」を求めるようなことはさすがに言わなかったが、問題を解決する意思もない。
日韓関係を戦後最悪にした文大統領は、「韓日が知恵を集めて解決すべきだ」という無責任な態度のまま任期を終え、次の大統領に課題をそのまま引き渡す気配が濃厚。
あと8カ月、文政権は無責任なまま、日本の無視と対峙したままで終わってしまうのか。
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コメント
コメント一覧 (4件)
おそらくそうして8ヶ月は流れるでしょう。
現韓国政権は事態を解決する意志も能力もないからです。
日本の戦略的無視政策は、韓国政府を窮地に追い込み、現政府がそれを解決するには、彼らが掲げた問題が多すぎます。日本を隣国に、そしてパートナーと考えている政府は、この問題を解決できるのです。
どうせ、来年には刑務所に行くんだ。
竹島の民間機飛行もやってくれて益々嫌韓・憎韓が増えるのは良い事でしょう。
残念ながら、少し日本語としてちょっと不完全で、意味が通りづらい点がありますね。おそらく、次のような意味では?
日本の戦略的無視政策は、韓国政府を窮地に追い込み、現(韓国)政府がそれ(=現状の窮地)を解決するには、彼ら(=韓国側)が掲げた問題が多すぎます。日本を隣国に、そしてパートナーと考えている政府(=新たな考え方の韓国政府、それがもしできれば)は、この問題を解決できるのです。
もう少し、英語を学んでその論旨を翻訳するよう心掛けた方が明快な日本語になると思いますよ。
ただし、指示関係・修飾関係を英語のように明確にすると、日本語として不自然となってしまいがちではあるのですが。