アフガンの”ベトナム化”を否定する米政府と、冷たい世界の目

こういうのを「吃驚仰天（きっきょうぎょうてん、びっくりぎょうてん）」とか、
「廃忘怪顛（はいもうけでん）」というのだろうか。

反政府組織でイスラム主義のタリバーンが首都カブールを制圧し、アフガニスタン全土の支配者となった。
その一方で、これまでアメリカがサポートしてきた大統領（もう前大統領？）は海外へ逃亡。
その際、車４台にぎっしり金を詰めて、それと一緒にヘリコプターで出たという話もある。

いま世界ではこの事態を「アメリカの失態」とする見方が多い。
アメリカが大混乱のアフガニスタンから撤退する様子を見て、70年代のベトナム戦争で敗北し、南ベトナムの首都サイゴンから撤退するアメリカを重ねる人も世界中にいる。が、アメリカ政府は全身全霊でこの見方を否定する。
だから米CNNテレビのインタビューに出演したブリンケン米国務長官は、「This is not Saigon（これはサイゴンとは違う）」と強く反論した。

日本経済新聞の記事（2021年8月16日）

米国務長官「サイゴン陥落と異なる」　アフガン巡り反論

あのときベトナムでアメリカは、共産主義の拡大阻止という目標が果たせなかった。
でも今回のアフガニスタンでは、2001年の米同時テロを起こした首謀者、ウサマ・ビンラディンらを殺害し、アメリカ本土をターゲットにしたテロを再び起こさせないようにするという目標を達成したと強調する。
だから同じ撤退でも、本質はまったく違うとアメリカ政府は言う。
でも果たして、その主張がどこまで世界に通じるか。

とりあえず日本のネット民は懐疑的。

・もうアメリカの覇権も終わりだろ
・お、おぅ違うねだってあれより酷いもんね(´・ω・`)
・現地でアメリカを支えてきた親米派をあっさり見捨てて撤退とかそっくりやん。
・映画「キリングフィールド」でもプノンペン陥落で、
アメリカ大使館に押しかけた現地人が逃げ込もうとして追い返されるシーンが印象的だったなぁ
・敗北の二文字ですね
・サイゴンの時と違って完全な人災と言うかオウンゴールだしな

世界各国の首脳はこの事態に衝撃を受け、頭を抱えている。

首都に入ったタリバーンは高らかに「勝利宣言」をすると、フランスのマクロン大統領はテレビ演説で「アフガンをかつてのようなテロの聖地に戻してはならない」と危機感をあらわにする。
ドイツのメルケル首相は「苦々しく恐ろしい展開」、「欧米諸国の支援を受けて民主主義や教育、女性の権利のために努力してきた何百万人ものアフガニスタン人には最悪の事態」と表現し、これまで欧米の軍事作戦は「計画通りに成功しなかった」と失敗を認めた。

米の支援を受けて中国と対峙する台湾が受けた衝撃の大きさと言ったら…。

中央日報日本語版の記事（2021.08.17）

アフガン米軍撤退の後遺症…台湾で「米国信じられるのか」激論

で、最大の当事者であるバイデン大統領は、“身勝手に”逃亡したアフガニスタンの大統領や政府指導部、タリバーンと積極的に戦わなかったアフガン軍を非難して米軍の撤退を徹底擁護する。
そしてこの失態をトランプ前大統領のせいにしようとするけれど、反トランプでバイデン寄りの米CNNでさえその見方を一蹴。（2021.08.15）

アフガニスタンの崩壊、責めを負うべきはバイデン氏

英BBCによると、アフガンでの「アメリカで最も長い戦争」を終わらせるというバイデン大統領の決断には批判も多い。（2021年8月16日）

20年間の苦労と犠牲を無駄にしたと、批判の声が出ている。人道危機をもたらし、アメリカの信頼を損なったと。（中略）今ではアメリカ市民となったジャゴリ氏は、米軍の撤収に激怒している。バイデン氏は「アフガニスタンの人たちをタリバンの手に放り出した」とBBCペルシャ語に話した。

バイデン米政権のアフガン政策に批判高まる　米世論は変わるのか

タリバーンが支配するアフガニスタンもそうなんだが、威信やメンツを失って、世界から冷ややかな視線を送られているアメリカはこれからどうなるのか。