「WWIII」
ロシア軍がウクライナへ攻め込んだ2月24日、フランスのツイッターでは、第三次世界大戦を意味するこんな単語が最も多く使われたという。
それから1か月ほど経ったあと、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアとの交渉の失敗は、第三次世界大戦を意味する」と世界に警告した。
「ただちに危険がない」とはいっても、いまのウクライナの状況を見て三度目の世界大戦の可能性を感じる人は世界中にいる。
人類の歴史上、その瞬間に最も近づいて、世界中が緊張で包まれたのが1962年のキューバ危機(Cuban Missile Crisis)だ。
この年、旧ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが判明。
それが完成したら、ソ連の核ミサイルが配備されてアメリカの都市をいつでも攻撃できる状態になり、合衆国国民はその恐怖のなかで生活しないといけなくなる。
この国家存亡の危機にケネディ大統領は、キューバにソ連のミサイルを運ばせないよう海上封鎖を行う。
これにソ連が怒って米ソのテンション一気に上がり一触即発、核戦争・第三次世界大戦という悪魔が地上に現れる寸前まできたところで、フルシチョフ第一書記がキューバの基地建設を撤回した。
これで人類は救われる。
(最初から基地をつくるなって話)
でも、核戦争を希望した人もいたらしい。
カストロは、核ミサイルをアメリカに打ち込むべきだとソ連に伝えていた。
カストロは、フルシチョフがミサイルの撤去を決めたことをラジオで知って激怒し、鏡をたたき割って八つ当たりをした
「核時計零時1分前 (NHK出版)」
くわしいことはこの記事で。
アメリカの軍用機とソ連の貨物船
合成写真を疑ってしまうようなこの近さが、このとき人類が迎えた第三次世界大戦の可能性の高さを表している。
自分の決断しだいで下手したら、核保有国による第三次世界大戦という大惨事を招いてしまうところだった。
そんなオソロシイ経験をしたアメリカとソ連は、このあと仲良しになる。
冷戦は続いていたけど、それでもキューバ危機以降、米ソの政治対話が行われるようになり、そんな対立からの緊張緩和への動きを「デタント(米ソデタント)」という。
そして1972年に米ソが初めて核管理体制を築く。
この年の5月、ニクソン大統領とブレジネフ書記長が両国の核戦力を同じぐらいにすることで核戦争を回避しようと考え、長距離核ミサイルの保有数に制限をかける条約に合意。
キューバ危機が起きたき、10年後に米ソのトップが笑顔でお酒を飲む姿を想像した人は1人もいなかったはず。
政治・外交面だけでなく、経済にもデタント(緊張緩和)は進む。
ペプシコ社が米国内でモスクワ生まれのウオッカ「ストリチナヤ」を独占販売し、同時にソ連に工場をつくってペプシコーラを販売する契約を結んだ。
このあと「ウオッカ&コーラ」のカクテルが人気になって、米ソの友好を象徴するような飲み物となる。
でも、プーチン大統領がウクライナ侵攻を始めるとすべてが暗転する。
ペプシコ社はロシアでのペプシコーラの販売を停止して、アメリカはウオッカの輸入を禁止した。
反プーチン政権の立場で、ロシアからアメリカへ亡命したストリ・グループの創業者は名称の変更をきめる。
CNNニュース(2022.03.07)
ウォッカ「ストリチナヤ」改め「ストリ」に、ロシア軍事侵攻に抗議
アメリカ国内では、ウォッカなどロシアのアルコール飲料に対する不買運動も起きている。
対してロシアでは、欧米がロシアを攻撃すれば第三次世界大戦が始まって、破滅的な核戦争になると外相が警告する。
困ったことに、これは脅しだけじゃない。
1962年のキューバ危機を乗り越えてデタントが始まって、その10年後には米ソ友好を示す「ウオッカ&コーラ」が人気になったのに、プーチン大統領が判断を誤ったせいでいったん全てが終了して、第三次世界大戦の危機が近づいてしまった。
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