ドイツ人は日本軍の自爆攻撃「カミカゼ」をどう思う?

 

3月29日。
この日は第二次世界大戦末期の1945年、ドイツ軍によるイギリス本土への「V1飛行爆弾」の攻撃が終わった日だ。
ドイツ空軍が開発したこのミサイルにはジェットエンジンが搭載されているから、ヨーロッパ大陸から「ヒューン」と海を越えてイギリスを爆撃することができる。
ドイツ軍がドカドカ撃ちこむV1飛行爆弾を、イギリス側は地上の対空兵器や戦闘機で迎え撃つも結局は約2万5千人の死者・重傷者がでる。
独特の大きな飛来音が空にこだまして、ロンドン市民を恐怖させることには成功したけど、ヒトラーがねらった戦意喪失までにはいたらず。
この悪魔のような攻撃は1945年3月29日にやっと終了した。

 

 

 

当時の技術力ではV1飛行爆弾を“打ちっ放し”にした感じで、現代の巡航ミサイルのようにねらいを定めてピンポイントで目標物にぶつけることは不可能。
でも有人なら、パイロットが視認しながら操作することで、かなり正確にターゲットを撃破して敵にダメージを与えることができる。
ただしその代償は操縦士の命だ。
太平洋戦争末期に日本軍が行った神風特攻隊による自爆攻撃は、発想としてはまさにそんな感じで、パイロットの犠牲と引き換えに米軍に大きな恐怖と損害を与えた。

キリスト教の考え方では自分の命や身体は神から与えられたもので、それを自分の意思で損壊する自殺は禁止されている。
聖書に「自殺禁止」とは書いてないけど、キリスト教の考え方としてこの行為はタブー。
そんな価値観もあって、米軍側では神風特攻隊の攻撃を目のあたりにして、

「いかに勇敢なアメリカ軍兵士と言えども、少なくとも生き残るチャンスがない任務を決して引き受けはしない」
「切腹の文化があるというものの、誠に効果的なこの様な部隊を編成するために十分な隊員を集め得るとは、我々には信じられなかった」

と顔を青ざめた。
心理的にも大きなダメージを与え、精神疾患を発症した兵士も多かった。

特攻機が狙った目標を目ざして、冷静かつ事前に立てた計画に従って急降下する光景は、アメリカ軍水兵に大きな衝撃を与え、太平洋戦域の連合軍兵士にパニックを引き起こした。

神風特別攻撃隊

空母「エセックス」に突っ込む神風特別攻撃隊

 

特攻により爆沈した護衛空母「セント・ロー」

 

さて最近、日本語勉強中のドイツ人さんと話をする機会があったんで、彼に神風特攻隊について聞いてみた。
「カミカゼ」の存在を初めて知ったのは第二次世界大戦を取り上げたテレビ番組で、自爆攻撃という発想はあり得ないものだったから、そのときの彼の印象は「日本人マジか!」だった。
大きな爆弾を抱えた戦闘機がそのまま体当たりし、米軍の艦船が爆発炎上するシーンを見て大きなショックを受けたし、いくら戦争でも自軍の兵士にあんなカタチで死を命じることや、その命令に従うパイロットは彼には理解不能で「あの兵士たちは軍に洗脳されているに違いない」と考えた。
このドイツ人の感覚だと、あんな攻撃はまともな人間が発案・実行するものではなくて、する方もさせる方も含めて日本軍が狂気の集団に見えた。
いまドイツで「カミカゼ」は有名で、クレージーで恐ろしいというイメージがある。
でもそれは第二次世界大戦の話で、現在の日本には、おもしろいアニメや美味しくてヘルシーな寿司とかの良いイメージが強い。

カミカゼの自爆攻撃を知って言葉を失った彼なんだが、このあと第二次世界大戦でドイツ軍が使った「ネガー」という兵器を知ってショックを受けたという。
ドイツ語で「黒人」を意味するこの兵器の名前は、開発者のリチャルト・モーアのモーアに由来する。
ネガーは魚雷の下にもうひとつ魚雷をくっ付けたような兵器で、兵士が操縦してターゲットの敵艦に近づくと、下の魚雷を切り離してそれをぶつけて自分は戻ってくる。
よく「人間魚雷」と言われるネガーは動画を見てもらうと分かるように、海中に潜ることはなくその表面をすべるように進んでいく。

 

 

日本軍でいえば有人の爆弾兵器「桜花」や、これこそ人間魚雷の「回天」をくっつけたような兵器がドイツ軍のネガー。

【人間魚雷】米軍には理解不能だった日本軍の兵器・回転

【特攻なんて潰してくれ】米軍を恐怖させた日本軍の“桜花”

 

ただこの新兵器ネガーには、ハイリスクという致命的な弱点があった。
魚雷の切り離しに失敗すれば、魚雷に引っ張られて自分も敵艦に突っ込んで「カミカゼ攻撃」になってしまう。
それにネガーは外側からしかハッチを開けられない。
だから、搭乗員は一度乗り込んだら戻ってくるか、自軍(か敵)に見つけて拾ってもらわないと外には出られない。
一回の出撃で最高80%の搭乗員が死亡したということもあり、あまりにも危険性が高いことからネガーは使用中止となる。
“致死率”でいえばカミカゼの方が圧倒的に上だけど、知人のドイツ人からすると、操縦士の命を粗末に扱うネガーも「自爆攻撃」と同じようなもの。
彼が神風特攻隊やネガーから得るべき教訓は結局のところ、戦争はすべての人間を狂気に走らせるということだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。