肉体労働にジーンズ:歴史と由来、「ブルー」は毒蛇よけ説

 

5月20日はジーンズの誕生日。
このアイテムはいまや世界中でファッションの定番となっていて、パキスタン人からは「アメリカが心底キライなパキスタン人でもジーンズは履く」と聞いたことがある。

1873年のこの日、アメリカでリーヴァイ・ストラウスらが、下のような銅のリベットでポケットの両端を補強したワークパンツの特許を取得した。
この「リベット補強済みパンツ」がいまのジーンズの原型となる。
ジーンズの定義というと、個人的には「デニム生地のパンツ」という気がするけど、もともとは違った。

 

 

経験上、こういう欧米のものは日本語のサイトよりも、英語版ウィキペデアのほうが信用できるんで、この記事では「Jeans」をケチャップに、いやソースにして書いていこう。

まず現代のジーンズで使われる生地の「デニム」なんだが、これはフランスの都市ニームに由来する。
「ニームの、ニーム産」を意味するフランス語の「de Nîmes」が、やがて英語の「denim(デニム)」になった。
そして「ジーンズ」は、イタリアの都市ジェノバを表すフランス語の「Gêne」が英語の「jean」になったという説が有力だ。
ニームの生地(デニム)は高品質でよく上着に使用されていた一方、ジェノバの生地(おそらくデニム)はそこそこの品質でリーズナブルな値段だったから、一般的な作業着に使われた(used for work clothes in general)。
ジェノバ海軍では水兵にジーンズが支給されていた。
ジーンズは、17世紀には北イタリアの労働者階級の人たちに重宝されるようになり、ジェノバのジーンズは世界的に有名になっていく。

 

ジェノバ産の「ジーンズ」 (19世紀)
画像:Sailko

 

時と場所は移って、話は1873年5月20日のアメリカだ。
リーヴァイ・ストラウスらがこの日、テントや船の帆などに使われる丈夫なキャンパス生地のパンツに、銅のリベットでポケットの両端を補強したワークパンツの特許を取得した。
このころジーンズを愛用していたのは、工場や鉱山で働く人や農民といった肉体労働者。
特許を取得した後、彼らは作業パンツに最適な素材をいろいろ探して試した結果、キャンパスよりデニム生地のほうがいいと分かり、これが現代のジーンズになる。

 

ジーンズを履いて働くアメリカの労働者(1933年ころ)

 

ジーンズというと、「青」が定番のカラーになっている。
あの色はファッションのためじゃなくて、もともとは「ガラガラヘビにかまれないため」とNHKの番組でチコちゃんが言ってた。
丈夫なジーンズは肉体労働者の作業着だったことはさっき書いたとおりで、19世紀のアメリカでは、鉱山で働く人たちの間でこのズボンの人気が高し。
このとき彼らを震え上がらせたのがガラガラヘビ。
天然のインディゴにはヘビや虫が嫌う成分があり、それで染められたジーンズはガラガラヘビよけになると宣伝され、鉱山労働者によく売れたという。
つまり、ジーンズの青はもともとは毒蛇対策だったのだ。
いまのジーンズは天然ではなくて、合成インディゴが使われているからこんな効果は期待できない。

*英語版ウィキペデアの「Jeans」に上の記述はないけど、ジーンズの歴史を紹介する日本語サイトにはよく載っている。チコちゃんもそう言っていたから、間違いではないと思う。

ちなみに江戸時代の日本人がよく身につけていた藍染めの服にも、虫よけ・ヘビよけの効果があると言われた。

いまでは白Tシャツに映えるブルージーンズも、むかしの鉱山労働者にとっては、毒ヘビにかまれないようするためという実用的で切実な目的があった。
モノを売るには、こんな付加価値をつけることが有効になる。
インドに進出した韓国メーカーは、マラリアやデング熱などで現地の人が苦しんでいると知って、超音波で蚊を追い払うエアコンを売り出したところ、これが大ヒット。
いつの時代のどんな場所でもこういう発想は大事だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。