「ミーン、ミンミン」「シャンシャン」とセミがいっせいに鳴き始め、まるで時雨(しぐれ)が降ってきたように、大音量で聞こえる状態を「セミ時雨」という。
俳句でこれは夏の季語。
浜松市に住んでいるロシア人の留学生(20代・女性)と会って、「日本の夏」について話を聞くと、このセミ時雨に悩まされているという。
日本とロシアの夏の最大の違いは、何といっても圧倒的な暑さと湿度にある。
彼女の出身地サンクトペテルブルク(以下、ペテルブルク)で最も暑い月は7月で平均気温は18℃、平均最高気温は23°Cで、最低気温は12°Cしかなくてさらに湿度も低い。
気温なら東京でいうと、秋本番の10月ごろとだいたい同じだ。
ちなみにモスクワの観測史上、最高気温は38度超(2010年7月)
「なんでこんなにたくさん汗がでてくるの?理解できないよYO!」とフィリピン人で音を上げるほど、日本の夏は暑苦しいのだから、ロシア人には苦界でしかない。
そんな彼女がこんなことを話していた。
ロシアの自宅にエアコンなんてなかったけど、自分にとってそれは日本の夏を生き抜くための最低限の武器で、それが無くなればと軽く死ねる。
だから、外出するためにエアコンを消すときは憂鬱になるし、アパートのドアを開けると、熱と湿気のツープラトン攻撃をくらって本当に嫌な気分になる。
冷涼なペテルブルクにはセミがいないから、当然、セミ時雨(大音響)なんて知らない。
夏になると声を出す虫はいるけど、それは夕方から鳴きだすから特に問題はない。
日本のセミはマジメで、朝の5~6時ごろにドでかい声でいっせいに鳴きだしやがるから、深夜までネットフリックスを見てそのまま眠りに落ちて、次の日の早朝にたたき起こされるとかなりツライしホントに腹が立つ。
アパートのすぐ近くに静かで雰囲気の良い神社があったから、「ラッキー」と思っていたのに、夏にこうなるとは思わなかった。
*ペテルブルグにセミはいなくても、サハリンのあたりには「エゾチッチゼミ」がいるから、ロシアにセミがいないわけではない。
日本では北海道にだけこのセミがいる。
免許も車も持っていなくて、日本では自転車に乗っているから夏は特にシンドイ。
ペテルブルクでは一年を通じて雪の降る期間が長くて、自転車で移動するのは危ないから、ロシアでは自転車に乗ったことがなかった。
社会は冬の寒さを前提に動いている。
だから、公共交通機関がすごく発達していて、地下鉄の本数は多いし、距離に関係なく運賃は一律約100円で、さらに乗り換えもできる。
一般的なバスや市内をグルグル巡回するバスもあるから、市内の移動で自転車は必要ない。
そんな国から来たから今では毎日、家~大学を往復するのは、まあ朝と夕方ならギリ耐えられる。でも、致命的に重要な理由でもない限り、昼間は外へ出ることはない。
となるとエアコンはガンガンつけるし、ウーバーイーツのお世話になる機会も増えるから、夏にばく大なお金が蒸発してしまうから困る。
ということでこのロシア人さんは、夏の蒸し暑さを天敵のように嫌っている。
でも、日本の夏はわりと好きで、祭に行けばたくさんの浴衣を着た女性を見ることができるし、花火もとてもキレイで迫力がある。
ロシアでは食べたことのなかったかき氷もうれしい。
といっても、トータルで考えるとやっぱり日本の夏はキライらしい。
日本人のおもてなし“失敗例”。外国の文化や価値観を無視するな。
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