【日韓関係】嫌悪・親しみの極端な空間と、苦しむ韓国政府

 

韓国では「大学教授」、日本のウィキペディアでは「反日活動家、反日ビジネス活動家」と紹介されている複雑な人物がソ・ギョンドク(徐 坰徳)さん。
そんな彼がカタールでサッカーW杯が開催される直前、こんなことを言い出した。

中央日報(2022.11.21)

徐ギョン徳教授「カタールW杯で日本側が旭日旗応援すれば即刻FIFAに告発」

もし今回のW杯で旭日旗が現れたら、即FIFA(国際サッカー連盟)に告発し、この旗はナチスのハーケンクロイツと同じ意味の”戦犯旗”であることを全世界に知らせるという。
そのために会場や中継で旭日旗を目撃した人がいたら、「私に直ちに情報提供をしていただければ」と協力を訴える。
この仕事は大学教授ではなくて、「反日活動家」のものだ。
では肝心のFIFAはどう思っているのか?

 

10年ほど前は韓国側も受け入れていたように、旭日旗で大騒ぎにあることはなかった。
誰かが火をつけたから、今のようになる。

 

大戦時は敵だった米軍は、いまでは旭日旗を日米友好のシンボルと見ている。

 

W杯では選手の政治的主張を厳禁している。
今回のカタール大会ではイングランド、フランス、ドイツといったヨーロッパの国のキャプテンが、あらゆる差別に反対する意味で『OneLove』という腕章をつけるつもりでいた。
でも、FIFAがそれを政治的行為とみなして処分を示唆すると、選手たちはこの腕章の着用をあきらめた。

そんな超敏感肌なFIFAでも、旭日旗を問題視したことはない。
2018年のW杯では公式インスタグラムでこれを使ってしまい、ソ・ギョンドクさんや韓国のネットユーザーから猛抗議を受けて削除したことならある。

Record Chinaの記事(2018年5月21日)

FIFA公式アカウントの旭日旗、韓国の抗議受け「韓国国旗」に変更

FIFAが公式インスタグラムでナチスのハーケンクロイツを載せることは、アカウントの乗っ取り被害にでもあわない限りあり得ない。
旭日旗と同一視するのは不可能だ。

 

ネット空間には時差も国境も無いから、韓国でこうした”反日ニュース”が報じられると即刻日本へ伝わる。
すると日本ではそれに刺激されて、差別語や侮辱語がネットに書き込まれる激しい嫌韓反応を引き起こす。
こんな負の連鎖は日常茶飯事。
ただ日韓にはそんなダークサイドと同時に、真逆の空間もある。

先日サッカーW杯で優勝候補のドイツに日本が勝つと、ネットの日韓交流グループには韓国人によるこんなメールが乱舞した。

・일본 2 : 1 독일
축하합니다~~!!
한국이 이긴것만큼 기쁩니다^^
日本2 : 1ドイツ
おめでとう~~!!
韓国が勝ったのと同じくらいうれしい^^

・일본이 독일을 이겼습니다. 일본 대단합니다. 진심으로 축하합니다.
日本がドイツに勝ちました。 日本はすごいです。 心からお祝い申し上げます。

・축하합니다!일본!
결승전에서 만나요^!^
おめでとうございます!
決勝で会いましょう^! ^

目には目を、花には花を。
こんなメッセージには日本人から好意的な言葉が返ってきて、「おめでとう・ありがとう」の好循環が生まれる。
でも誰かが、「旭日旗はナチスのハーケンクロイツと同じ戦犯旗だ!」といった投稿をすると、この快適空間はすぐに崩壊する。
実際、この交流グループに歴問題を持ち込んで混乱とヘイトを招き、結局は強制退会させられた人が何人かいた。

 

政治と無関係のところでは、日本人と韓国人はけっこううまくいっている。
ドイツ戦の後のインタビューで、韓国代表に友人のいる南野選手が「明日は韓国に勝ってほしい」とエールを送った。
イ・ガンイン選手と一緒にプレーをしたことのある久保選手は、試合前に彼から幸運を祈るメールがあったことを明かし、自分も同じように韓国の幸運を祈るメールをイ・ガンイン選手へ送ると言う。

 

日韓関係はいま戦後最悪で険悪なところも多々あるけれど、交流を楽しんでいる人もたくさんいる。
本当に両極端。
それぞれ別の世界にいて、歴史問題を持ち出さなければ摩擦は発生しないが、日韓を全体的に近づけようとするとこういう反発が発生する。

中央日報(2022.11.07)

旭日旗に挙手敬礼した韓国海軍…徐ギョン徳教授「恥辱的なことが起きた」

泥沼化した関係の改善を目的として、韓国政府は今月はじめ日本が主催した観艦式に参加することをきめて、当日、旭日旗のある海上自衛隊の艦船に韓国軍が敬礼をした。
これは国際慣例にしたがった行為でアメリカやイギリスなどもしたし、韓国の観艦式に参加すれば日本も同じことをする。
しなければとんでもない非礼で、かえって韓国軍の名誉を傷つけることなのに、この活動家に言わせるとそれが”恥辱”になる。

日韓関係について韓国政府には「住み分け」なんてできないし、日本との連携を重視するいまのユン政権にとっては、それをジャマする国内の「反日勢力」が悩ましい。
それで国防相が国会で「自衛艦旗と旭日旗は違う」と説明したが、この解釈はいくら何でも苦しすぎる。
*韓国政府が「ツートラック」という住み分けを試みる場合もあるが、日本は基本それを受け入れない。

民間では、「嫌悪/親しみ」のまったく別の空間にいて、おたがい接点を持たない。
でも、日韓関係の改善を求める韓国政府にはそれができず、2つの世界の間で板ばさみになって苦悩する人が出てくる。
元徴用工問題の解決案を探っている人が、まさにそんな苦しい状況にいる。
「反日ビジネス活動家」の今後益々のご活躍が無くなることを願うしかないが、いまのところその気配はない。
だから日韓関係は、しばらくはこんな状態で続いていきそう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。