イギリス人が植民地時代に、ビルマ人を激怒させたこと

 

ことし5月にロンドンのウェストミンスター寺院で、チャールズ国王の戴冠式が行われる。
それを記念していまだけ特別に、そのときチャールズ国王が立つ「コスマテスク装飾の床」を一般人でも歩くことができる。
700年以上前に作られたこの床は、イギリス有数の中世芸術の一つとして知られるという。
ただその上を歩くには、15ポンド(約2400円)のガイド付きツアーに申し込まないといけない。
それと土足厳禁で、見学者は靴を脱いで靴下だけになる必要がある。

 

 

イギリスで最高レベルの格式を誇るウェストミンスター寺院でなら、人々は敬意を払ったり床を保護したりするために靴を脱ぐ。
でも100年以上前の大英帝国の時代、植民地支配していたビルマ(ミャンマー)で、イギリス人はエラそうな態度でそれを拒否したから、現地の人に激しく恨まれた。

 

シュエダゴン・パゴダ

 

ミャンマーの最大都市ヤンゴンに、国内の仏教徒にとって最高の聖地とされるシュエダゴン・パゴダがある。
日本人がミャンマー旅行に行けばまず間違いなく訪れる場所で、ボクもガイドと一緒に行ってみた。
ミャンマーのお寺ではブッダに敬意を示すために、靴と靴下を脱いで、裸足になって入らないといけない。
ミャンマーで靴を脱ぐ習慣は一般的にあって、家は当然として職場でも入口で靴を脱ぐことがある。
土足厳禁は日本のお寺も同じだから、それはまったく問題ないと思ったら、南国の太陽の熱をたっぷり吸ったタイルの床は想像以上に熱い。というか痛い。
だからゆっくり歩くことは不可能で、建物の影から影へサササッとゴキ…、いやアニメで誰かを尾行するように移動した。

現地の人にとっても床はとても熱いが、土足厳禁のルールは絶対に守らないといけない。
ガイドの話によると、この習慣はイギリス植民地支配の名残でもある。
というのはその時代、イギリス人が仏教寺院などの宗教施設に入る時、彼らは靴を脱ぐことを拒否して、土足で踏み入ることがあった。
このごう慢な態度がビルマの人たちを激怒させたけど、支配者であるイギリス人には強く言えない。
そんな怒りの反動で、独立したいまでは靴を脱ぐことが義務になったという。

 

シュエダゴン・パゴダの入口で靴を脱ぐ、これはいいイギリス兵。
左側の看板には、ビルマ語、英語、タミル語、ウルドゥー語で「靴の着用は厳禁」と書かれている。

 

そのきまりを破るとどうなるか?
2017年に靴を脱ぐよう何度言われても拒否して、ミャンマー人を激怒させたロシア人観光客が警察に捕まった。
ルールを破ったのならそれは仕方ないとしても、6ヶ月以上の懲役と重労働というのはやりすぎでは?

In August 2017, a Russian tourist was arrested and sentenced to one month and then a further six months of jail time and hard labor for repeatedly refusing to remove her shoes upon entering pagoda grounds throughout Bagan, as she had violated local customs

Tradition of removing shoes in the home and houses of worship

 

日本人ならこんなエラそうなことはしないで、ちゃんと靴を脱いでお寺に入るはず。
この厳しさは、イギリス植民地支配にビルマの人たちが感じた屈辱の裏返しだ。
要請を無視して、ミャンマー人が「コスマテスク装飾の床」を土足で踏みにじれば、イギリス人もその気持ちがわかるかも。

 

 

ミャンマー 「目次」

【2つの地雷】アホ日本人がミャンマー人を激怒させた背景

ロヒンギャ問題。日本人「イギリスの植民地支配の責任は?」

日本人だから知ってほしい。ロヒンギャ問題とは?群馬には200人。

日本でいえば風鈴?ミャンマー文化・化粧品のタナカ

アウンサンスーチーと浜名湖。ノーベル平和賞、受賞の理由とは?

東南アジアで見つけた日本の支援。誇らしく感じた7つのもの

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。