「日本がマネした!」と強調する韓国メディアの背景

 

世界に影響をあたえた日本の発明には、カラオケ、自撮り棒、絵文字のほかにインスタントラーメンがある。
1958年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」の生産をはじめた日清について、韓国メディアがこんな報道をした。

朝鮮日報の記事(2023/04/12)

かつて韓国がまねた日清食品、三養食品のヒット商品をまねた即席麺発売 

中央日報の記事(2023.04.12)

ハングルで「ポックンミョン」を堂々と···プルダックポックンミョンをパクった「日本ラーメンの元祖」

 

このほど日清が新商品の「韓国風焼きそば」を販売したところ、韓国メーカーの三養(サムヤン)食品が数年前に出した商品と似ているを超えて、「マネした!」という声が韓国でわき上がったという。
韓国人の視点からすると、パッケージに日本語の「焼きそば」ではなくて、「ポックンミョン」というハングル文字を使っているとか、色や雰囲気が似ているから日清が「パクった」となる。
でもこれは、「そう見える」という主観的な意見だから、根拠としては弱い。弱すぎる。

もし、商品のマネをされたとしたら、この件の”被害者”は三養食品になる。
その三養食品の関係者は日清の商品と似ている部分はあっても、客観的に「まねた」とは言えないから、「法的に対応するのは難しい」と話していて、訴訟を起こすといった具体的な動きはない。
一方の日清食品は、関係法令を遵守して製品の開発をおこなっていると淡々と話す。
もし、これが本当に”パクり”なら、真っ先に日清へ抗議するはずの三養食品がそんなことをしないで、静観しているのは別の商品と認識しているからだろう。
そもそも先に、インスタント麺の「焼きそば(ポックンミョン)」を出したのは日清のほうだ。

ネットの書き込みを根拠に「マネした、パクった!」」と全国紙が報じるから、「日本に盗まれた!」という反応が国民から出て日本のイメージが悪くなる。
朝日、読売、毎日新聞といった日本の全国紙は、ニュースバリューの無いものは報じない。

 

さて、数年前にソウルを旅行した時、知り合いの韓国人2人と合流して、韓国社会の発展を紹介する展示イベントへ足を運んだ(博物館だったかも)。
それまで冗談を言いながら、明るい雰囲気で案内してくれていた2人が急に黙って表情をくもらせる。
それはこれを見たから。

 

 

1970年代に制作されたこのロボットアニメ『テコンV』は国民を夢中にさせて、韓国を代表するアニメとなった。
韓国にとっては歴史的な作品だから、いまでもこうして展示される価値はある。
でも、日本のウィキベテアを見てみると、そこにはこんな無慈悲な記述が。

「デザインや設定などに日本の作品からの強い影響が見受けられ、剽窃作品であると考えられている」(テコンV

剽窃(ひょうせつ)というのは盗作に等しい。
このアニメについて、「日本のマジンガーZをパクった」という指摘は日本でも韓国でもあって、そのことを知っている2人はこんな話をする。

A「これは記念的なアニメですけど、ハッキリいって日本のマネですから、こうして誇らしげに展示されているのはビミョウですね。特に日本人に見られると気まずいですよ。」
B「でも、いまの価値観や基準で、あの時代を判断してはいけない。70、80年代の韓国ではまだ著作権についての意識は低かったけど、あの時代は仕方ない。それにテコンVには韓国らしい要素もある。」

確かにいまの感覚で、数十年前のものごとを見たらツッコミどころだらけだ。
日本に住んでいた知人のアメリカ人は、ひと昔前の日本のアニメやドラマを見ると、アメリカで見た作品とそっくりのキャラやシーンがいくつもあって驚いたという。
過去にやったことは消せないとしても、時間がたてばもう追及はしない「時効」の考え方もあるし、50年ほど前の”罪”を責めても意味はない。

 

話をインスタントラーメンに戻そう。
さきほどの「かつて韓国がまねた日清食品~」という朝鮮日報の記事には、こんなことが書いてある。

・アジアのソフトパワーの軸が日本から韓国に大きく移動したことを示す出来事
・韓日経済の歴史に照らしてみた時、象徴的な意味合いがある

かつては韓国が日本のいろんな物をマネていたのに、今回は日本がそれをした。
これはソフトパワーで日本を追い抜いたことを示しているから、韓国としては誇らしい。
朝鮮日報は別のコラムでもこう書いている。

・「Kラーメン」の絶え間ない革新が成し遂げた逆転劇だと言えよう。

過去の韓国が食べ物やアニメなどいろいろなもので、日本の”マネ”をしていたことは多くの韓国人が知っていて、それに悔しさやコンプレックスを感じる人もいた。
そういう気持ちから、「日本は植民地時代にヒドイことをしたのだから、このぐらいで文句を言うな!」と豪快に開き直った人を見たことがある。
そんな背景からすると、今回の一件は逆転劇で「克日」だ。
だから韓国メディアの記事を読んでも、韓国企業の被害を訴えるよりも、成長した韓国のスゴサをアピールしているように感じる。
読者にこれを伝えたかったから、「日清は韓国の商品をパクった」という設定が必要だったのだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。